- 更新日 2024.10.17
- カテゴリー システム開発
ウォーターフォール開発とは?開発工程・メリット・向いているプロジェクトも解説【2024年最新版】
ウォーターフォール型開発モデルは、システム開発の現場でもっとも活用される開発手法です。しかし、エンジニアの方はともかく、開発工程の流れや特徴まで把握している企業担当者の方は多くはないはず。
- ウォーターフォールの開発工程は?
- ウォーターフォールのメリット・デメリットは?
- ウォーターフォールに適したシステム開発プロジェクトは?
システム開発へのニーズが多様化する現代では、プロジェクトに応じた適切な開発モデルを採用することが肝心。最後まで読めば、自社プロジェクトにウォーターフォール型を採用すべきなのか?判断できます。
※システム開発の依頼先を探している方はシステム幹事にご相談ください。予算や目的から最適な開発会社を選定させていただきます。相談料などは一切かかりません。
ウォーターフォール型システム開発とは?
ウォーターフォール型システム開発の特徴
ウォーターフォール型システム開発とは、開発プロセス全体を複数工程に分割し、時系列に沿って各工程を順番に進めていくシステム開発手法のこと。
各工程の流れは「要件定義」>「基本設計」>「詳細設計」>「開発(プログラミング)」>「単体テスト」>「結合テスト」>「総合テスト」>「システム導入」となることが一般的。
滝・落水(Waterfall)のように、上流から下流へと開発工程を進めることから、ウォーターフォール型と名付けられたといわれています。
1968年には原型が提唱されていたウォーターフォール型は、古くから活用されているもっともポピュラーなシステム開発モデル。
ウォーターフォール型システム開発では、「要件定義」から「詳細設計」までを上流工程、「開発(プログラミング)」以降を下流工程と呼びますが、それぞれの開発工程はトップダウン形式で進められることが特徴。ひとつの開発工程を100%完了させてから次の工程に移ります。
このため、ウォーターフォール型ではより上流の開発工程への逆戻り、手戻りは想定されていないことがわかります。
ウォーターフォール以外のシステム開発の種類
アジャイル型開発
アジャイル型開発とは、仕様や設計の変更が当然起こることを想定とした開発方法のことです。
最初から厳密な仕様は決めずに、おおよその仕様だけで細かい反復開発から開始して、実装とテストを繰り返して開発を進めていきます。
作成した要件定義書を開発途中で変更する可能性がある場合に、おすすめの開発方法です。
プロトタイプ開発
プロタイプ開発とは、開発の早い段階で試作品(プロタイプ)を作成し、クライアントやユーザーからフィードバックを受けながら完成させていく開発方法です。
完成品のイメージを共有しながら進められるため、発注者と開発者との認識のズレを早期に発見でき、システム開発で発生するリスクを最小限に抑えられます。
細かい要望を開発者側とすり合わせたい場合や、システム開発を外注するのが初めての方におすすめです。
スパイラル型開発
スパイラル型開発とは、システムを機能ごとに分解し、重要な部分から開発する手法です。開発工程は以下の流れで進めていきます。
- 要件定義
- 設計
- 開発
- テスト
- レビュー
スパイラル型の開発手法は、上記の工程を反復的に実行しながら、システム自体をアップデートする独自のアプローチです。
ただし各工程を繰り返すことで、開発コストが予想を上回る可能性が高まるため、その点には注意が必要です。
ウォーターフォール型システム開発のメリット
システム開発を計画・管理しやすい
トップダウン形式で各工程を進めていくウォーターフォール型は、最上流で策定した要件定義を下流工程で詳細に詰めていくことが特徴。やり直しや修正がないように各開発工程で100%を目指すため、システム開発全体のプロセスを事前に計画しやすいです。また、SE・プログラマーの確保・進捗やリソース配分などを含めプロジェクト全体を管理しやすく、納期や予算も分かりやすいメリットがあります。システム開発工程ごとに作業内容や納期も明確になるので、途中で担当者が入れ替わることがあっても、引継ぎがしやすいともいえます。
事前の計画立案が容易、管理がしやすいウォーターフォール型は、クオリティを確保しながらスケジュール通りにシステム開発プロジェクトを進めやすいといえるでしょう。
汎用性が高い
開発工程・手順がシンプルで理解しやすくシステム開発の基本的な方法でもあるウォーターフォール型は、さまざまなプロジェクトに適用させやすい汎用性の高いシステム開発モデル。詳細な設計書をもとに開発されるため、SE・プログラマーのスキルに差が生じにくく、人材を確保しやすいのもメリットです。
もっともポピュラーなシステム開発モデルであるウォーターフォール型は、ほとんどのシステム開発会社が対応できることもメリット。確立された手法でもあるため、プロジェクトを安定的に遂行できます。
ウォーターフォール型システム開発のデメリット
トップダウンで各工程を進めていく特徴を持つウォーターフォール型は、プロジェクトにデメリット面をもたらす可能性もあります。
仕様変更・修正への対応が難しい
ひとつの工程が100%完了してから次の工程に移るウォーターフォール型は、工程の逆戻り・手戻りは想定されていません。しかし、システム開発プロジェクトでは、開発中の仕様変更・修正が発生することは珍しくないのが現実。こうしたケースでの対応が難しいことが、ウォーターフォール型のデメリットだといえるでしょう。
たとえば、プログラミング中に仕様変更が必要になれば、基本設計、場合によっては要件定義まで手戻りしなければならないケースもあります。当然、スケジュール遅延や工数増加によるコスト増につながることも考えられます。また、機能要件などの変更が難しいため、ユーザーからの意見を途中からは取り入れにくいです。
ドキュメントを大量に作成する必要がある
要件をより詳細な設計書に落とし込む特徴を持つウォーターフォール型は、アウトプットとしての成果物=ドキュメントを大量に作成する必要があります。これは下流工程作業をスムーズにするメリットがある一方、開発者に大きな負荷がかかるという意味ではデメリットだといえます。
もちろん、工程の手戻りが発生すれば、ドキュメントも修正しなければなりません。仕様変更・修正への対応が困難というウォーターフォール型の特徴は、大量のドキュメンが必要だということも要因のひとつなのです。
ウォーターフォール型システム開発の工程
それでは、ウォーターフォール型における9つの開発工程を詳しく見ていきましょう。
- 要件定義
- 基本設計
- 詳細設計
- 開発(プログラミング)
- 単体テスト
- 結合テスト
- 総合・受入れテスト
- 導入(リリース)
- 運用・保守
実際のシステム開発では、最初に「企画」「業務設計」がプロセスに含まれますが、本記事ではシステム開発会社が携わる「要件定義」以降の工程を取り上げています。
1. 要件定義
要件定義とは、「発注者の希望を叶えるために必要な機能などを明確にする作業」です。「なぜ(Why)システム開発するのか?」という発注側の目的・ゴール・ニーズを実現するため、「なに(What)で解決するのか?」システムに求められる機能・技術・ハードウェアなどの必要な条件を明確にします。
具体的には、発注側の業務要件(解決すべき業務課題)をもとに、システムに求める以下の条件を定義(明確に決める)し、要件定義書へと落とし込んでいきます。
システム要件 |
システム化すること、しないことを決める |
---|---|
機能要件 |
システムに必要な機能を決める |
非機能要件 |
パフォーマンス・拡張性など機能以外に必要な要素を決める |
技術要件 |
開発に使用するプログラミング言語やミドルウェアなどを決める |
また、どんな人が使うか、どんな流れでシステムが使われるか、どんな価値・情報を提供するかという根本的なシステムの概要も決めていきます。
要件定義はウォーターフォール型システム開発でもっとも重要な工程。ここで発注側・開発側の認識がズレていると、下流工程にいくに従ってズレが拡大してしまいます。クライアントとして積極的に関わっていくべき工程だといえるでしょう。要件定義から後述の詳細設計までは、基本的にシステムエンジニア(SE)が担当することとなります。
要件定義の詳細は下記記事をご参照ください。
関連記事:システム開発の要件定義とは?受託開発における重要性や進め方を解説!
2. 基本設計
基本設計とは、要件定義書に記載される「なにで(What)解決するのか?」を、より具体的な設計書レベルまで落とし込んでいく作業工程のこと。実際にユーザーが触れるシステム操作画面のイメージを明確にしていきます。具体的な作業内容は以下の通りです。
・要件を満たすソフトウェア(ミドルウェア)・ハードウェアを明確にする
・システムに必要なすべての機能を洗い出し、それぞれの役割を明確にする
・機能間の関連性、データの種類・流れ、全体的な業務の処理方法を明確にする
・取り扱う情報をどのように管理するか?データベースの形式・項目を決定する
・既存システムとの連携が必要な場合、データやり取りの方法・連携画面などを決定する
また、下記のような画面遷移図を作ります。
画面遷移図を作ることで、画面のイメージや画面操作で表示される画面の流れをイメージしやすくなるのです。
基本設計では「基本設計書」が作成され、発注側であるクライアントのフィードバック、および修正を経てから次の工程へと移ります。多くのクライアントにとっては、基本設計フェーズがシステム開発に携わる最後のチャンスとなるため、自社の要件が反映されているか?しっかりチェックしておきたい工程です。
関連記事:システム開発の基本設計とは?その位置付け・重要性・発注者としての関わり方
3. 詳細設計
詳細設計とは、基本設計書でより具体化された「なにで(What)解決するのか?」を、システムエンジニア・プログラマーが「どのように(How)作るのか?」がわかるよう、設計書に落とし込んでいく作業工程のこと。例えば、プログラムで取り扱うデータ、データ処理の流れを決めていきます。基本設計は「どのようにつくるか?」概要をまとめるのに対して、詳細設計では「どうやって実現するか」という開発者側の具体的な設計を行うのです。
詳細設計では、プログラマーへの指示書ともいえる詳細設計書を機能ごとに作成。詳細設計書をもとに、多数のプログラマーが作業にあたるため、クラス設計書、コード設計書、コーディング規約、単体テスト仕様書なども作成されます。
詳細設計はプログラムの設計書になるので、発注側にSEや情シスなどレビューできる担当者がいれば確認することがあります。確認できる人がいなければノータッチのケースも多いです。
詳細設計の厳密なチェックが必要なケースは、詳細設計以降の開発をさらに別の業者に外注する場合です。
関連記事:システム開発の詳細設計とは?プロジェクトの位置付け・役割をわかりやすく解説!
4. 開発(プログラミング)
完成した詳細設計書をもとに、実際のシステムを開発(プログラミング)する工程に移ります。プログラミング言語を含め、作業に必要な設計書・情報はすべて揃っている状態であるため、それぞれの機能ごとにひたすら作業(プログラミング)を進めていきます。開発作業からテストまでは、プログラマーが作業することになります。
下記記事ではPythonでのアプリ開発の手順を説明していますのでご参照ください。
関連記事:Pythonでのアプリ開発方法解説!開発できるアプリ例や必要なフレームワークも紹介!
5. 単体テスト
単体テスト |
画面や機能ごとに、動作の検証をする |
---|---|
結合テスト |
他の機能やシステムと連携させて、動作の検証をする |
総合テスト |
本運用を想定して、システム全体の動作を検証する |
受入れテスト |
納品前に仕様書の通り完成しているか確認する |
単体テストとは、開発の完了した機能ごとに実施されるテストのこと。ウォーターフォール型システム開発では、ひとつの工程が100%完了するまで次の工程に移らないことが基本ですが、単体テストだけは例外。これは、機能ごとに開発期間が変動する場合があるからです。例えば、ユーザーの情報入力必須項目があるか、必須項目を空欄にした状態でユーザーが会員登録や資料請求などアクションをした場合に、登録せずユーザーにエラーメッセージを表示できるかなどをチェックしていくのです。
テストで不具合が見つかれば、不具合がなくなるまで修正して再テストを繰り返しますが、基準になるのは詳細設計で作成した単体テスト仕様書。単体テストと詳細設計が紐付けられているのはこのためだといえるでしょう。
ちなみに、システム開発においてテスト工程は「V字モデル」で進めるのが無難。
V字モデルは、プロジェクトの成果物であるプログラムの品質を担保し、システム開発を成功に導く重要なマネジメント手法のひとつ。また、システム開発における開発の工程と、そのテストの相関をVの字で表したものです。V字の左側に開発工程を上から順番に並べ、V字の右側に、開発工程に対応したテストを下から上に並べます。V字モデルを用いることで、どの作業に対してどんなテストをするのかが分かりやすく、品質や進捗が管理しやすくなります。
- 要件定義の内容を総合テストで確認
- 基本設計の内容を結合テストで確認
- 詳細設計の内容を単体テストで確認
V字モデルの詳細は下記記事をご参照ください。
関連記事:システム開発のV字モデルとは?発注者が知っておきたい基本を解説!
6. 結合テスト
結合テストとは、テストの完了した機能同士を結合し、画面遷移やデータの受け渡しがキチンと行われているかどうか、システム間の連携を確認するテストのこと。
例えば、上記の画面遷移図でいう「商品ページ」内の購入ボタンをクリックした後、購入ページに遷移するようにしています。実際に購入完了後は、「ご購入ありがとうございました。後ほど担当者からメールにてご連絡します」などのサンキューページが表示される流れになるように設定している場合は、それら一連のページ遷移、画面表示がきちんとなされるかをチェックします。
具体的には、基本設計で確定した業務フロー図をもとに、実際の業務と同じようにプログラムを走らせ、想定通りのアウトプットが得られるかどうかを確認していきます。結合テストと基本設計が紐付けられているのはこのため。もちろん、この時点で不具合が見つかれば、不具合がなくなるまで修正して再テストを繰り返します。
7. 総合・受入れテスト
総合テストとは、結合テストをパスしたシステムを発注側と同じ環境において実施するテストのこと。機能要件を満たしているかどうか?という観点のほかに、パフォーマンス・障害時の処理・外部システム連携など、非機能要件を満たしているかどうかもチェックされます。
総合テストをパスしたシステムは、実際に発注企業に使用してもらい、要件を満たしているか?使用感に問題はないか?などをチェックしてもらいます。これをユーザーテスト、あるいは受入テストと呼びますが、テストの基準になるのは要件定義書。総合・ユーザーテストが要件定義と紐付けられているのはこのためです。
関連記事:システム開発のテスト工程を徹底解説!システムテストと受け入れテストの違い
8. 導入(リリース)
すべてのプロセスに問題がなければ、いよいよリリースです。新規のシステム開発・導入であれば特に問題はありませんが、旧システムからのリプレース案件であれば、データ移行をはじめとした移行作業が必要になります。
一気にリプレースを実施する一斉移行、徐々に新システムに移行する順次移行という2つの方法が考えられますが、いずれの場合も、要件定義フェーズの非機能要件策定時に移行方法を明らかにしておく必要があるでしょう。
9. 運用・保守
ウォーターフォール型に限らず、完成したシステムを問題なく稼働させていくためには、システム運用・保守が必須です。「運用」とは、システムを問題なく稼働させること、「保守」とは、システムを改修・修理・調整することですが、必ずしも開発を担当した会社に依頼しなければならないわけではありません。
とくにシステムリリース直後は、想定外のシステムエラーや使い方に関するユーザーからの問い合わせが殺到する可能性もあります。運用ではそれらの対応に追われることになるでしょう。要件定義フェーズから開発会社と協議を重ねていくためにも、運用・保守は非機能要件として必ず取り上げておきたい項目です。
システム運用の詳細は下記記事をご参照ください。
関連記事:システム運用とは?開発との関係・保守との違い・重要性・作業内容を解説!
各工程ごとの成果物
システム開発の成果物は、プログラムとしてのシステム本体。しかし、システムが完成するまでの開発工程では「発注側・開発側の認識のズレを修正するため」「開発チームで情報共有するため」、各種ドキュメントを含むさまざまな成果物が制作されます。プロジェクトを適切に管理して開発をスムーズに進めるためにも、各工程でどのような成果物・ドキュメントが作られるのか、把握しておくことが重要です。
システム開発における成果物とは、各工程で作成される書類やドキュメントなどを指します。システム開発は細かい工程に分かれており、最終的な納品物以外にも様々な成果物を作成します。
◎システム開発における成果物の一覧(ウォーターフォール型の場合)
システム開発の工程 |
成果物 |
作成担当者 |
企画・要求定義 |
RFP(提案依頼書) |
発注者 |
要件定義 |
要件定義書 |
開発会社 |
基本設計 |
基本設計書 |
開発会社 |
詳細設計 |
詳細設計書 |
開発会社 |
単体テスト |
単体テスト実施報告書 |
開発会社 |
結合テスト |
結合テスト実施報告書 |
開発会社 |
総合テスト |
総合テスト実施報告書 |
開発会社 |
受け入れテスト |
検収書 |
開発会社 |
開発・実装フェーズでは、機能・モジュール(部品)ごとに開発された「プログラム」が成果物となりますが、それ以外の工程では成果物としてなんらかのドキュメントが作成されると考えていいでしょう。
各工程で作られる成果物の役割は、上流工程の作業結果としてアウトプットされた成果物を、ひとつ下流の工程のインプットとして役立てること。この際、アウトプットされた成果物が不完全だと、以降の工程すべてに悪影響がおよんでしまいます。こうした事態を避けるには、各工程のアウトプットが次のインプットとして妥当なものなのかをチェックして判断するためにも、クライアントを含めた関係者間で成果物を共有する必要が出てきます。これこそが、成果物が果たすもうひとつの役割だといえるでしょう。
システム開発の成果物の詳細は下記記事をご参照ください。
関連記事:システム開発の成果物・ドキュメント|知っておきたい開発工程ごとの成果物を一覧で紹介!
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ウォーターフォール型に向いているプロジェクト
それでは、ウォーターフォール型システム開発には、どのようなプロジェクトが向いているのか?メリット・デメリットを踏まえたうえで考えてみましょう。
機能要件や仕様が明確、大規模なプロジェクト
例えば、業務要件のハッキリしている銀行や公的機関の業務アプリケーション、専用のコンピューターを活用する汎用系のシステム開発などが該当します。機能要件や仕様が最初からハッキリしていれば、工程が進むにつれて手戻りが難しくなるというウォーターフォール型のデメリットを回避できます。計画・管理しやすく、各フェーズで検証を繰り返してシステムの完成度を高められるウォーターフォール型は、クオリティを重視したい大規模システム開発にも向いているといえるでしょう。
一方、ユーザーの反応を見ながら機能を最適化したいBtoCサービス、環境がどのように変化するのか予測が難しいビジネスなど、完成形がイメージしにくいプロジェクトにウォーターフォール型は向いていません。完成形が見えていなければ、そもそも計画を立てることが難しいからです。
システム開発を成功させるための条件
完成形を明確にする
システムの完成形を可能な限り明確にすると、開発は成功しやすくなります。
例えば「あのシステムを開発したい」のように完成形の定義が抽象的だと、どのような機能を搭載すれば良いのかがわからず、最適な開発方法を見いだせない場合が多いです。
一方で完成形のイメージが明確だと、システム開発で搭載する機能や開発方法が具体的になり、請け負う業者もスムーズに開発へと取り掛かれます。
ちなみに、完成させたいシステムを具体化するには「要件定義書」が必要です。要件定義書には下記のように各要件が明確に記されており、理想のシステムを具体化する手助けになります。
- 概要:開発のきっかけ、目的など
- 業務の要件:システム化したい業務の流れの具体化、業務フロー
- 機能の要件:実装したい機能について
- 非機能の要件:システム性能やセキュリティ、保守運用について
開発成功への道筋を立てるためにも、詳しい要件定義書を作成しましょう。
仕様変更を控える
システム開発中の仕様変更は、開発会社にとって大きな負担となります。
仕様変更とは、クライアント側の新たな要望やシステム会社側の業務上のミスなど、さまざまな原因から仕様が変更されることです。
仕様変更により、生じてしまう主な影響は次の通りです。
- 工数の増加
- 開発スケジュールの遅延
- 追加コストの発生
他にも優先順位が曖昧になったり、進行中の作業が無駄になったりすることも少なくありません。
何度も変更してしまうと予期せぬエラーが発生し、システム開発自体が失敗する原因にもなり得るので、開発途中の仕様変更は控えたほうが良いです。
アジャイル型システム開発とは?ウォーターフォールとの違い
システム開発の手法にはいくつかの種類があり、近年ではプロジェクトに応じて適切な開発モデルを使い分けるケースが増えています。なかでも、ウォーターフォール型と比較されることの多い開発モデルが「アジャイル型」です。
「俊敏な・機敏な(ajile)」という意味を持つアジャイル型システム開発は、文字通りシステムを素早く開発できる、仕様変更・修正に対応しやすいという特徴を持ち、ある意味ではウォーターフォール型の対極に位置付けられる開発モデルだといえます。
アジャイル型の開発工程は大きく2つ。ウォーターフォールの要件定義に相当する「リリース計画・分割」では、おおまかなシステム要件・仕様を策定し、1〜4週間程度で実装できる単位に機能を分割します。
分割された機能は、優先度の高い順に「計画」>「設計」>「実装」>「テスト」>「リリース」を1つのサイクルとした「イテレーション(反復)」を繰り返し、システムの完成を目指します。
ウォーターフォール型のデメリットを払拭できるともいえるアジャイル型ですが、逆にプロジェクトの計画・管理が難しい、クライアントの声を反映させやすい分だけプロジェクトの方向性がブレやすいというデメリットも。アジャイル型は、ウォーターフォール型と相反するメリット・デメリットを持つともいえるでしょう。
アジャイル型システム開発の特徴・向いているプロジェクト
それでは、アジャイル型システム開発には、どのようなプロジェクトが向いているのか?メリット・デメリットを踏まえたうえで考えてみましょう。
・市場の反応を見ながら成長させたい新規事業・サービス開発プロジェクト
・実装する機能の優先度が変更される可能性のあるプロジェクト
具体的には、ECサイトやSNSなどのWebサービス・アプリケーション、モバイルアプリ・ゲームなど、市場動向が予測しにくく、ライフサイクルが早いプロダクトがアジャイル型に向いているといえるでしょう。
一方、方向性のブレやすいアジャイル型は大規模なシステム開発には向いていません。発注側担当者がプロジェクトにコミットできなければ、アジャイル型を採用する意味も薄れてしまいます。
ウォーターフォール、アジャイル以外にもシステム開発モデルにはいくつかが存在しますが、どの手法も独自の特徴・メリット・デメリットがあります。どの手法が優れているのか?ではなく、自社プロジェクトにどの手法が向いているのか?という観点で、開発モデルを選定することが肝心です。
近年はアジャイル開発がトレンド
従来、システム開発で採用されていたのは「ウォーターフォール開発」でした。最初の段階で全体の計画を立てて、開発・実装を後戻りすることなく進める手法です。そのため途中で計画変更ができず、要求ミスや漏れがあると追加費用や納期延長のリスクがありました。ウォーターフォール開発に代わり、最近注目されてトレンドになっている開発手法が「アジャイル開発」です。「プロジェクトに変化はつきもの」という前提で開発が進められ、最初の段階で綿密に仕様を決める必要がありません。仕様変更や機能追加に強く、柔軟に対応できる開発手法です。
アジャイル開発の詳細は下記記事をご参照ください。
関連記事:アジャイル開発とは?メリット・デメリット、発注側の注意点を解説
関連記事:アジャイル開発のおすすめシステム開発会社11選【2022年最新版】
システム開発には他にもプロトタイプ型、スパイラル型の開発手法があります。詳しい違いは下記の記事を参考にしてください。
関連記事:システム開発の手法4つの特徴・メリット・デメリットを解説!
システム開発のトレンド
IT業界は日々進化し続けており、システム開発におけるトレンドの変化も目まぐるしいものがあります。今まで当たり前だったことも古い情報へと変わっているため、ここでも2022年12月時点の最新トレンドを紹介します。
手法のトレンド:開発チームと運用チームが協力する「DevOps」
アジャイル開発が主流になる近年、新たに注目されているのが「DevOps(デブオプス)」です。DevOpsはDevelopment(開発)とOperations(運用)を組み合わせた造語で、「開発チームと運用チームが連携・協力しながらスピーディーに開発を行う」という概念。DevOpsを導入することで、バグの減少や市場投入までの時間を短縮できます。
システム開発において、開発チームはより良い新システムを導入しようとし、運用チームは仕様を維持して安定的なシステムを求めようとします。そのため、両者のチームの意見が対立することも少なくありません。
DevOpsではツールを用いて開発・運用のプロセスを自動化し、フィードバックしやすい環境により効率化、円滑化を図ります。そのため、DevOpsのメリットには、ツールによる作業の自動化によりヒューマンエラーを防止できること。また、ツールにより開発・運用チーム間の連携が自動化されスムーズになることなどが挙げられます。
システム開発方法のトレンド:ノンプログラミング
金銭的コストがかかるなどの理由から、自社でアプリ開発ができないか検討している方もいるでしょう。小規模なアプリケーションや単一機能のシンプルなアプリケーションであれば、ノンプログラミングツールを用いて自社で開発する方法もあります。
ノンプログラミングは、ツールを使って「プログラミングを行わずにソフトウェアを開発する」ことです。コードを書く必要がなく、ツールを使えばプログラムが自動作成されるので、エンジニアでなくてもアプリケーションが作成可能です。
例えば、Yappliは開発から運用、分析までオールインワンで提供するアプリ開発プラットフォームであり、スマホアプリ開発代行サービスでもあります。
画像引用:Yappli
40種類以上の機能と様々な外部サービスと連携可能で、ブログの更新感覚でデザインも設定できつつアプリ開発ができます。リリース前にプレビュー表示で画面確認もできます。管理画面が使いやすくドラッグアンドドロップの操作で更新できるのです。アプリのインストール数などの統計もとれる豊富な分析ツールが備わっていて、PDCAも回せます。
その他システム開発のトレンドの詳細は下記記事をご参照ください。
関連記事:【システム開発の最新トレンド】開発の手法と方法について解説
システム開発の現場で使われる知っておきたい用語
この記事でも難しい専門用語が出てきましたが、開発モデルの違いを問わず、システム開発でもっとも重要なのは「綿密なコミュニケーション」で「発注側と開発側の認識のズレ」をなくすこと。
そのためには、スムーズにコミュニケーションできるよう、システム開発の現場で使われる用語を知っておくこともポイントです。略語で使われることが多いので、参考までに、代表的な用語を紹介しておきましょう。
用語 |
略語 |
---|---|
企画 |
SP(System Planning) |
要件定義 |
RD(Requirments Difinition) |
基本設計 |
BD(Basic Design)、OD(Outline Design) |
機能設計 |
FD(Function Design) |
構造設計 |
SS(System Structure Design) |
ユーザーインターフェース |
UI(User Interface) |
詳細設計 |
DD(Detail Design) |
プログラミング |
PG(Programing) |
コーディング |
CD(Cording) |
プログラム設計 |
PD(Program Structure Design) |
単体テスト |
UT(Unit Test) |
結合テスト |
IT(Integration Test) |
総合テスト |
PT(Product Test) |
運用テスト |
OT(Operation Test) |
ウォーターフォール型のシステム開発まとめ
本記事では、意外と知らないウォーターフォール型システム開発の基本を、開発工程・メリット・デメリット・向いているプロジェクトなどを含めて解説してきました。
システム開発モデルとして、ウォーターフォール型がもっともポピュラーであることは間違いありませんが、どのようなプロジェクトにもフィットするわけではないもの事実です。
市場のニーズ、ビジネスモデルの多様化が著しい現代では、システム開発プロジェクトに求められる要素も多様化する傾向にあります。タイムリーにシステムを活用するためにも、プロジェクトの性格に合わせた適切な開発モデルを選定することが重要です。
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Q. ウォーターフォール開発とは何ですか?
ウォーターフォール開発とは、開発プロセス全体を複数工程に分割し、時系列に沿って各工程を順番に進めていくシステム開発手法のことです。「システム開発を計画・管理しやすい」「汎用性が高い」等の特徴があります。
Q. ウォーターフォール開発のメリットは?
ウォーターフォール開発のメリットは「開発の計画・管理がしやすい」「プロジェクトの汎用性が高い」などです。詳細は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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