- 更新日 2024.10.17
- カテゴリー システム開発
クラウドシステム構築のメリット|種類・利用形態やシステム構築の手順を解説!
クラウドシステムを構築する、あるいは既存システムをクラウドに移行する企業が増えているらしい。それはなぜか?どんなメリットがあるのか?そんな企業担当者に向け、種類・利用形態を含むクラウドの基本を解説するとともに、クラウドシステム構築のメリット、構築 / マイグレーションの手順を紹介していきます。
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クラウドシステム構築とは
クラウドシステム構築とは、クラウドコンピューティングを活用した仮想サーバに、基幹システムや業務システムを開発してデプロイ(配置)すること。または、オンプレミスで運用している既存システムをクラウドサーバにマイグレーション(環境移行)することです。
サーバやネットワーク機器など、物理的なインフラ基盤を必要としないため、近年ではクラウドを積極的に活用する法人が増えています。いまや、クラウドはシステムの開発基盤として欠かせない存在だといえるでしょう。
クラウド(クラウドコンピューティング)の基本
そもそもクラウドとは、アプリケーション、プラットフォーム、インフラなどのコンピューティングリソースをインターネット経由で提供するサービスのこと。クラウドコンピューティングとも呼ばれ、近年ではAI / ディープラーニングのリソースを提供するサービスも増えています。
画像出典:クラウドエース株式会社
クラウドの特徴は「所有するものだったコンピューティングリソース」を「外部コンピューティングリソースの利用」へと転換できること。Webブラウザの動作する端末、およびインターネット環境さえあれば利用でき、高価なハードウェアを調達する必要もありません。
クラウドのタイプ / 種類
利用するコンピューティングリソースに応じて、クラウドは大きく「SaaS」「PaaS」「IaaS」という3つのタイプ / 種類に分類できます。それぞれの概要は以下の通り。
クラウドのタイプ / 種類 |
概要 |
SaaS(Software as a Service) |
Webブラウザで動作するアプリケーションを提供するサービス |
PaaS(Platform as a Service) |
OS / ミドルウェアなどのアプリケーション 開発基盤を提供するサービス |
IaaS(Infrastructure as a Service) |
サーバ / ネットワークなどのインフラ基盤を提供するサービス |
一般的に、クラウドといえば、Gmail、オンラインストレージ、クラウド業務システムなどに代表される「SaaS」を思い浮かべる方が多いでしょう。ただし、クラウドシステム構築で利用されるサービスは「PaaS」もしくは「IaaS」がほとんどです。
また、近年はアプリケーションの仮想実行環境である「コンテナ」を提供する「CaaS(Containers as a Service)」などのクラウドサービスも登場。大企業からの注目度も高いため、今後、クラウドシステム構築のベース環境としてシェアを伸ばしてくるかもしれません。
クラウドの利用形態
クラウドの利用形態は、大きく「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」の2つ。それぞれを組み合わせた利用形態「ハイブリッドクラウド」「マルチクラウド」を採用する企業も少なくありません。
クラウドの利用形態 |
概要 |
パブリッククラウド |
契約すればだれでも利用できるクラウドサービス |
プライベートクラウド |
特定の企業のみが利用できるクラウドサービス |
ハイブリッドクラウド |
パブリッククラウドとプライベートクラウドを併用する利用形態 |
マルチクラウド |
用途に応じて複数のパブリッククラウドを使い分ける利用形態 |
AWS、GCP、Azureなどがパブリッククラウドの代表例。一方、AWS EC2 Dedicated Hostに代表される「ベアメタル」という物理サーバを専用線 / VPNなどで利用する形態をプライベートクラウドと呼びます。
クラウドコンピューティングの詳細については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:クラウドサービスとは?知っておきたいクラウドの基礎知識を解説!
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クラウドシステム構築のメリット
新規のシステム開発プロジェクトを含め、なぜ多くの企業がクラウドシステム構築を採用するのか?その理由は、クラウドシステム構築に数々のメリットがあるからにほかなりません。
クラウドシステム構築のメリット |
概要 |
オンデマンド |
端末とインターネット環境があれば、いつでもどこでも利用可能 |
初期費用を抑えた迅速な導入 |
ハードウェアの調達が不要。 Webブラウザからの設定のみでリソースを利用できる |
運用負荷 / コスト軽減 |
ハードウェア運用 / メンテナンスはベンダーの責任 |
固定費を変動費へ |
利用するコンピューティングリソースは全額経費として計上可能 |
BCP対策に有効 |
複数のデータセンターで管理されるため災害に強い |
システム構築に適したIaaSのメリット
上述したメリットに加え、インフラ環境を提供するIaaSには、クラウドシステム構築に適した以下のようなメリットもあります。
- OS / ミドルウェアの選定を含め、自由度の高いシステムを開発できる
- 必要に応じてインスタンスをスケーリングできる
特にインスタンスのスケーリングは、IaaSならではのメリット。ハードウェアの追加 / 交換を必要とするオンプレミスと異なり、IaaSならCPU / メモリ / ストレージ / ネットワーク帯域などを状況に応じて増減できます。
クラウドのメリットについては以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:クラウド導入のメリット|タイプごとのメリット・導入のポイントを解説!
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クラウドシステムの構築手順:新規システム開発
クラウドの基本、クラウドシステム構築のメリットを把握できたところで、新規システムを開発する場合の構築手順を簡単に紹介していきましょう。システムの動作するクラウドサーバは「本番環境」となるため、まずはソフトウェアの開発を進めていきます。
ウォーターフォール型システム開発の流れ
システム開発の手法にはいくつかがありますが、日本で主流だといえるのはウォーターフォール型。水が上流から下流に流れるように、完成までの開発ステップを順序立てて進めていく開発モデルです。
開発ステップ |
概要 |
要求定義 |
利用者の立場で、システムに求める機能 / 非機能を定義する |
要件定義 |
開発者の立場で、システムに実装する機能 / 非機能を定義する |
基本設計 / 詳細設計 |
要件定義をもとに、ユーザーの目に触れる基本機能、 目に触れない詳細機能を設計する |
開発(プログラミング) |
設計書をもとにコーディング / プログラム作成 |
テスト |
設計通りにプログラムが動作するか段階的にテストする |
デプロイ / テスト / リリース |
本番環境であるクラウドサーバにプログラムをデプロイ(配置)し、 動作チェックで問題がなければリリース |
システム開発プロジェクトによっては、アジャイル型、プロトタイプ型などの開発モデルが採用される場合もあります。
システム開発の主な手法については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:システム開発の手法4つの特徴・メリット・デメリットを解説
クラウドシステムの構築手順:クラウド構築
開発したソフトウェアをクラウドシステムとして構築するには、事前にクラウドサーバを構築しなければなりません。ウォーターフォール型の場合、クラウドサーバを構築するタイミングは、最終的な「受入テスト」の実施前。以下から、IaaSでクラウドサーバを構築する手順を簡単に紹介していきましょう。
システム / ネットワーク設計
システム設計とは、開発するソフトウェアに必要なハードウェア構成を設計すること。ネットワーク設計とは、想定するパフォーマンスを発揮できるネットワークを物理的 / 論理的に設計することです。
設計作業の成果物としてアウトプットされるシステム構成図、ネットワーク構成図は、クラウドのインスタンスを見積もる際の必須の資料。ただし、システム開発の「基本設計」で作成済みであれば、このステップは省略可能です。
ネットワーク設計については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ネットワーク設計・構築の基礎知識|設計・構築のステップやポイントを解説!
アカウント作成 / インスタンスの見積もり
パブリッククラウドのアカウントを作成し、必要なインスタンス(リソース)を見積もります。CPUコア数、メモリ / ストレージ容量など、クラウドには多種多様なインスタンスが用意されているため、システム / ネットワーク構成図をもとに見積もりましょう。
たとえば、AWSの場合なら、クラウドとの接続にVPNを選択することも可能。ベアメタルサービス「EC2 Dedicated Host」を利用してプライベートクラウドを構築することもできます。
パブリッククラウドは従量料金が基本
パブリッククラウドを利用する際に注意しておきたいポイントは、利用した分だけ課金される「従量料金制」が基本だということ。ムダな料金が発生しないように、システムの稼働時間、トラフィックの集中する時間帯を把握し、インスタンスの利用を最適化させる必要があります。
たとえば、システムの稼働時間外はインスタンスを自動停止する、IaaSのスケーリング機能でCPU負荷やトラフィックの増減に対応するなどです。AWSの料金見積もりツールなど、各クラウドサービスのツールを利用して、想定される料金も見積もりしておきましょう。
画像出典:AWS
AWS EC2の料金については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:AWS EC2仮想サーバーの料金体系|プラン・料金シミュレーションも紹介!
インスタンスの設定 / サーバ構築
開発したシステムの稼働に必要なインスタンスが決定したら、実際にインスタンスを設定してクラウドサーバを構築します。AWSであれば、Webブラウザからマネジメントコンソールにログインし、必要なインスタンスにチェックを入れて設定するだけです。
数分から十数分でクラウド構築は完了するため、ログインしてサーバの稼働状況を確認しておきます。
開発したシステムをクラウドへデプロイ
クラウドに構築されたサーバに、開発したシステムをデプロイします。デプロイの方法はさまざまですが、エンジニアがコマンド操作してデプロイするパターンが一般的。「DeployBot」などのツールを使い、GUIを操作してデプロイする場合もあります。
DeployBot
画像出典:DeployBot
構築したクラウドシステムをテストし、問題がなければリリースします。
クラウドシステムの構築手順:マイグレーション
クラウドに構築したサーバに、既存システムをマイグレーション(移行)する場合の手順も簡単に紹介しておきましょう。とはいえ、手順が大きく変わるわけではありません。
既存システムの評価と移行計画
まずは、既存システムの現状を評価し、クラウドへの移行計画を立案します。具体的には、既存システムの稼働に必要なリソースを再評価し、クラウド構築に必要なインスタンスを見積もります。既存システムの稼働状況を加味し、一括移行するのか、部分移行するのか、その際のスケジュールなども計画します。
クラウド構築 / 移行に関する推奨事項を提供する「AWSMigration Evaluator」など、各サービスが提供するツールを利用するのもおすすめです。
クラウド構築
移行計画にしたがってクラウドサーバを構築します。クラウド構築の手順は、新規システムをデプロイする場合と変わりありません。
マイグレーション / テスト
移行計画にしたがって既存システムをクラウドサーバにマイグレーションします。動作テストを実施し、問題がなければリリースです。
ただし、稼働中の既存システムをクラウドにマイグレーションする作業は簡単ではありません。自社のみでの対応が難しい場合は、各クラウドサービスのパートナー企業にアウトソーシングするのもおすすめです。
戦略的なクラウド活用とは
最後に、ハイブリッド / マルチクラウドに代表される、構築したクラウドシステムをより戦略的に活用するクラウド活用方法について補足解説しておきましょう。
パブリッククラウドとプライベートクラウド / オンプレミスを併用するハイブリッドクラウドは、両者のメリットを活かしながらシステム統合を図る戦略です。厳重な管理の必要なデータはプライベート / オンプレミスを利用する一方、パブリッククラウドを活用したオンデマンドのアプリ実行環境を実現できます。
複数のパブリッククラウドを併用するマルチクラウドは、サービスごとに異なるメリットのみを利用することで、費用対効果を最大化する戦略です。アプリケーションに応じてサービスを使い分けることで、ベンダーごとに異なる特徴に最適化した運用を実現。リソースを分散することによるリスクヘッジにも役立ちます。
ビジネスシーンでのクラウド活用については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:クラウド活用のメリット|クラウドのタイプ・利用形態・活用例を解説!
【まとめ】クラウドシステム構築のメリット・構築手順を紹介しました
クラウドシステムを構築する、あるいは既存システムをクラウドに移行する企業が増えているらしい。それはなぜか?どんなメリットがあるのか?そんな企業担当者に向け、種類・利用形態を含むクラウドの基本を解説するとともに、クラウドシステム構築のメリット、構築 / マイグレーションの手順を紹介してきました。
なお、クラウド構築の得意なシステム開発会社の探し方・選び方がわからない!という方はシステム幹事にお気軽にご相談ください。貴社の目的・予算にあった最適な会社を厳選してご紹介します。相談料・会社紹介料などは無料です。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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