- 更新日 2024.01.26
- カテゴリー システム開発
受託開発「やめとけ」「つらい」は本当?会社選びの参考になるポイントも解説!
スキルを活かせる会社で働きたいと考えているエンジニアの方なら、受託開発「やめとけ」「つらい」などのウワサが気になっているはず。
そんな方に向け、受託開発の特徴や「やめとけ」「つらい」といわれる理由 / 実態を解説するとともに、会社選びの参考となるポイントも紹介していきます。
なお、システム開発会社の探し方・選び方がわからない!という方はシステム幹事にお気軽にご相談ください。貴社の目的・予算にあった最適な会社を厳選してご紹介します。相談料・会社紹介料などは無料です。
受託開発の概要と特徴
受託開発とは、開発案件を受注し、クライアントの希望するアプリケーション / システムをオーダーメイドで開発すること。受託開発を請け負う会社を「受託開発会社」または「SIer(エスアイアー)」と呼びます。
OS / ミドルウェアなどを除き、ソフトウェアの「スクラッチ開発」を基本とする受託開発ですが、対応範囲や組織規模は会社によって大きく異なります。以下から、受託開発 / 受託開発会社の一般的な特徴をいくつか紹介していきましょう。
スクラッチ開発については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:スクラッチ開発とは?メリット・デメリット、パッケージ開発との違い
請負契約が基本
「クライアントの要望に応じたオーダーメイド開発」であることからもわかるように、受託開発の契約形態は「請負契約」が基本です。請負契約とは、納入する成果物を完成させることによって、報酬を請求する権利が発生する契約形態のこと。システム / ソフトウェア開発などのほか、建築工事などで採用される契約形態です。
つまり、請負契約を基本とする受託開発では、なにをもって成果物(ソフトウェア)が完成したとみなすのか、契約書で明確にしておくことが重要。納入期限(納期)、納品方法、検収方法、前金を含めた支払い方法、特記事項なども契約書に明記します。
システム開発の契約については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ソフトウェア(システム)開発委託契約とは?トラブルを防止する委託契約の基本を解説
規模の大きなプロジェクト案件が多い
オーダーメイドのスクラッチ開発が基本の受託開発は、必然的にプロジェクト案件の規模が大きくなる傾向にあります。なぜなら、パッケージを含む既存のソフトウェアでは、クライアントの要求を満たせないことが「オーダーメイド開発を委託する」理由だからです。
たとえば、独自の業務プロセスをシステム化する、これまでに前例のないWebサービスを構築するなどが当てはまるでしょう。官公庁のシステム開発案件、金融機関の勘定系システム開発案件など、大規模プロジェクトを手掛ける受託開発会社も少なくありません。
ウォーターフォール型開発モデルがメイン
受託開発で採用される開発モデルのメインはウォーターフォール型です。ウォーターフォール型とは、要件定義 > 設計 > 開発 > テストといった開発プロセスを、水が上流から下流に流れるように順序立てて実行する開発モデルのこと。最初から完成形を見据えて開発を進めるウォーターフォール型は、成果物の完成を前提とする請負契約と相性がいいからです。
ユーザーの声を成長に反映させるWebアプリなどでは、小さな開発を繰り返して完成を目指すアジャイル型開発モデルを採用する場合もあります。ただし、完成の定義が困難なアジャイル型は予算を立てにくいことも事実。請負契約との相性もよくないため、受託開発でアジャイル型開発モデルを採用することは多くありません。
ウォーターフォール型システム開発については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ウォーターフォール開発とは?開発工程・メリット・向いているプロジェクトも解説
多重下請け構造
受託開発では、実務面を多重下請け構造に頼っているという特徴 / 実態があります。多重下請け構造とは、クライアント > 元請け > 2次請け > 3次請けなどのように、自社では対応しきれない業務を下請け企業に任せる構図が多重化していること。元請けが開発・テストを2次請けに、2次請けがテストを3次請けに任せるなどが当てはまります。
受託開発で多重下請け構造が一般化しているのは、主に以下のような理由によるものだと考えられます。
- オーダーメイド開発のため案件によってプロジェクト規模が異なる
- 大規模プロジェクトにあわせて常時人員確保できない受託開発会社の事情
- 納期がタイトな場合はエンジニアを増員して対応しなければならない
自社開発にシフトする企業が増えている
日本では、多くの企業がシステム開発を受託開発会社に頼っている現状がありました。しかし近年では、受託開発から自社開発へのシフトを進める会社が増えています。その理由として挙げられるのは、DX時代へ適合するためのキーワードが「システムの内製化」だから。これは受託開発会社の事情というよりは、IT業界全体の流れです。
パブリッククラウドの普及によって、インフラ環境の構築が容易になったこと。ノーコードツールの進化で、ITスキルに乏しくてもアプリ開発が容易になったことも、自社開発へのシフトを促している要因です。
システム開発の内製化については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:システム開発の内製化は正解なのか?メリット・課題・考慮すべきポイントを解説
自社開発 / SESと受託開発の違い
受託開発の概要 / 特徴を把握できたところで、比較されることの多い自社開発 / SESとなにが違うのか?簡単に整理しておきましょう。
受託開発 |
自社開発 |
SES |
|
概要 |
クライアントの 希望に沿った ソフトウェアを オーダーメイド開発 |
自社システム / プロダクトの開発・ 販売・運用・保守 |
クライアントの 求めに応じて 技術サービスを提供 |
業務範囲 |
企画 / 設計 / 開発 / テスト / 運用保守のすべて、 または一部 |
企画 / 設計 / 開発 / テスト / 運用保守のすべて、 または一部 |
プログラミング / テストなど、 開発業務の一部 |
開発モデル |
ウォーターフォールが メイン |
アジャイル / ウォーターフォール |
クライアントの状況次第 |
契約形態 |
請負契約 (成果物の 完成責任を負う) |
雇用契約 |
準委任契約 (成果物の 完成責任を負わない) |
クライアントからの受注が基本となる受託開発に対し、自社開発の対象は自社システム / プロダクト。システム開発がメイン業務となる受託開発と違い、自社開発では開発したシステムの改善を含めた継続的な関与を求められます。
一方、成果物の完成責任を負う請負契約が基本となる受託開発に対し、SESは成果物の完成責任を負わない準委任契約(労働力の提供)を基本とします。さまざまな開発プロセスに携われるチャンスのある受託開発と違い、SESでは特定の技術サービス提供に特化しがち。客先常駐がメインであることもSESの特徴です。
受託開発「やめとけ」「つらい」といわれる理由
それでは、なぜ受託開発は「やめとけ」「つらい」といわれるのでしょうか?考えられる理由をいくつか簡単に紹介していきましょう。
発注元の都合による仕様変更
受託開発では、発注元の都合による仕様変更によって、現場に混乱が生じてしまうのはよくあることです。特に、最初から完成形を想定して開発を進めるウォーターフォール型の場合、中途での仕様変更は開発ステップの手戻りを意味します。スケジュールの組み替えや人員配置のやり直しなど、プロジェクトへの影響は避けられません。
開発側のスタッフにとって、こうした状況は「クライアントに振り回されている」ことと同じ。受託開発は「やめとけ」「つらい」といわれる要因の1つです。
納期がタイトになりやすい
納期がタイトになりやすい受託開発は、対応策としてスタッフへ残業や休日出勤などを強いる傾向にあります。オーダーメイド開発であるため「計画通りに進まない場合が多い」ことに加え、クライアントから「仕様変更を求められる」場合もあるからです。疲弊したスタッフが受託開発「やめとけ」「つらい」というグチをこぼしてしまうのも無理ありません。
下請け受託開発会社は業務内容 / 報酬が異なる
多重下請け構造が一般化している受託開発では、下層の下請け受託開発会社になるほど「やめとけ」「つらい」という不満が生じやすい現実があります。その要因として挙げられるのは以下の2つ。
- 2次下請け、3次下請けと下層になるほど業務内容が「作業」になりがち
- マージンを抜かれるため下層になるほど報酬が低くなりがち
受託開発会社で働いているにもかかわらず、業務内容が限られる、報酬が低いのでは、やりがいを感じられない、つらいと感じてしまうのも当然です。
案件によっては客先常駐が必要
自社内での業務を基本とする受託開発ですが、受注した案件によっては客先常駐での作業を求められる場合もあります。たとえば、外部への情報漏洩リスクを避けたい開発プロジェクトなどが該当するでしょう。
しかし、客先常駐したくないため、SESを避けて受託開発会社を選んだエンジニアにとって、こうした状況は本末転倒。こんなはずではなかったという想いが、受託開発「やめとけ」「つらい」につながっている可能性も考えられます。
将来性に対する不安
受託開発の特徴でも触れたように、近年では自社開発へシフトする会社が増えています。これは受託開発業界のパイ縮小を意味するため、将来性を不安視する一部スタッフから「やめとけ」という声が上がっている可能性もあるでしょう。「受託開発オワコン」というウワサの根拠も、自社開発へのシフトが加速する状況を反映していると考えられます。
すべての受託開発会社が「やめとけ」「つらい」のではない
ここまでで、受託開発は「やめとけ」「つらい」といわれる理由を紹介してきました。たしかに、すべての理由が当てはまる受託開発会社もあるでしょう。しかし、すべての受託開発会社が「やめとけ」「つらい」状況なのではありません。
たとえば、「やめとけ」「つらい」理由の多くは、下請け構造が下層の受託開発会社ほど深刻化します。逆に、元請けに近い受託開発会社であれば、つらい理由の多くは解消可能です。
そもそも、じっくり腰を据えて1つのプロジェクトに携わりたいなら、受託開発会社よりも自社開発会社を選ぶべき。つまり、エンジニアとしてやりたいことはなにか、それぞれの会社の特徴や業務内容を考慮しながら、希望に沿った会社を選定することがベストです。
受託開発会社で働くことにもメリットがある
それでは、受託開発会社ならではの特徴、働くことによって得られるメリットとはなんでしょう?会社ごとに状況は多少異なりますが、受託開発会社に共通するメリットを以下から簡単に紹介していきます。
多種多様な開発プロジェクトに携われる
オーダーメイドのスクラッチ開発案件をメインとする受託開発会社は、多種多様なプロジェクトに携われるメリットがあります。さまざまなプロジェクトに携わることで知見を深めたいと考える方にとって、受託開発会社は非常に魅力的かつ、やりがいを感じられる職場です。
幅広いスキルを習得しやすい
多種多様なプロジェクトを手がける受託開発会社は、幅広いITスキルを身につけられるメリットもあります。なぜなら、システムに求めるニーズが異なれば、開発に利用するプログラミング言語やフレームワークも異なるから。つまり、新規プロジェクトへの参加は、新たなスキルを獲得する絶好のチャンスになり得ます。
キャリアパスを描きやすい
オーダーメイドのスクラッチ開発案件をメインとする受託開発会社は、上流工程である要件定義 / 設計から、下流工程である開発 / テストまで、すべての工程への対応が基本。つまり、テスターからプログラマー(PG)へ、システムエンジニア(SE)からプロジェクトマネージャー(PM)というキャリアパスを描きやすいこともメリット。
他部署への人事異動という可能性のある自社開発、特定の業務に集中する傾向のあるSESでは、こうはいきません。エンジニアとしての順調なキャリアを築きたい方には、受託開発会社はいい選択肢となり得ます。
まだまだ受託開発会社は必要とされている
自社開発に取り組む会社が増えることによって、将来性を不安視する方も少なくないでしょう。しかし、2021年にDELLが実施した調査結果によれば、まだまだ受託開発会社を必要としている法人は多いようです。
画像出典:ITmedia
この傾向が10年後に維持される保証はありませんが、DXへの取り組みを本格化したい企業の多いここ数年に限れば、将来はそれほど暗くありません。
受託開発会社選びのポイント
すべての受託開発会社が「やめとけ」「つらい」状況ではないという事実は、逆に「すべての受託開発会社がメリットを得られるわけではない」ということ。それでは、適切な受託開発会社を選ぶには、どのようなポイントに注意しておけばいいのか?簡単に解説していきます。
企画・設計から開発運用まで一貫して受託
エンジニアとしてのキャリアパスを描けるように、企画・設計から開発運用まで一貫して対応できる受託開発会社を選定することが1つ目のポイント。なぜなら、受託開発会社を名乗りながら、上流工程を担当するのはまれ、という場合もあるからです。これでは、キャリアパスを描きようがありません。
また、開発工程すべてに対応する受託開発会社なら、プロジェクトの全体像を把握しやすいメリットも得られます。エンジニアとしての知見を得られるほか、やりがいを感じられることにもつながるでしょう。
元請けとしての受注がメイン
そのためには、元請けとしての受注がメインの受託開発会社を選定する必要があります。元請けであれば、報酬も保証されやすくなることもポイント。納期がタイトになりやすいという受託廃発会社の特徴も、元請けに近いほど緩和されます。
人材育成に積極的
3つ目のポイントは、人材育成に積極的な受託開発会社を選ぶことです。具体的には、資格取得のサポートがあるか、キャリアアップを支援する制度が整備されているか、などが挙げられるでしょう。体制の整っている受託開発会社なら、将来的なビジネスの成長を促すためにも、人材育成に力を入れているはずです。
変化を恐れないマインド
変化を恐れない、チャレンジングなマインドを持っている受託開発会社を選定することも重要なポイント。なぜなら、まだまだ必要とされているとはいえ、システム開発内製化の流れを止めることはできないからです。
メインの受託開発とは別に、新たな可能性に向けて積極的に新規事業を展開する企業であれば、近い将来に訪れるかもしれない変化へのリスクヘッジが可能です。
【まとめ】受託開発「やめとけ」「つらい」の実態を紹介しました
スキルを活かせる会社で働きたいと考えているエンジニアの方なら、受託開発「やめとけ」「つらい」などのウワサが気になっているはず。そんな方に向け、受託開発の特徴や「やめとけ」「つらい」といわれる理由 / 実態を解説するとともに、会社選びの参考となるポイントも紹介してきました。
受託開発会社に限らず、どのような業界でも「会社によって事情はさまざま」です。重要なことは、自身のやりたいことを明確化し、業界全体ではなく「会社個々の特徴」を見極めること。ウワサに耳を傾けることはあっても、振り回されるべきではありません。
なお、システム開発会社の探し方・選び方がわからない!という方はシステム幹事にお気軽にご相談ください。貴社の目的・予算にあった最適な会社を厳選してご紹介します。相談料・会社紹介料などは無料です。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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