- 更新日 2024.10.17
- カテゴリー システム開発
クラウド導入のメリット|タイプごとのメリット・導入のポイントを解説!
DXに向けてクラウド導入を進める企業が多いと聞くが、どんなメリットを得られるのか?自社も検討したほうがいいのか?そんな企業担当者の方に向け、クラウド導入の現状、導入タイプごとのメリット、導入のポイントを解説していきます。
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クラウド導入が加速しているのはなぜか
SNSに代表されるように、クラウドサービスは私たちの生活に深く浸透しています。それは、法人であっても同じこと。総務省の調査によれば、2022年に「全社的」「一部事業所または部門」でクラウド導入済の企業は全体の72.2%。2018年時点の58.7%から、実に13.5ポイントも増えています。
画像出典:総務省
法人のクラウド導入が加速している理由は「所有」から「利用」へという世界的な流れに加え、パンデミックによるリモート需要が拡大したからだといわれています。一方、クラウド技術の進化によって、幅広い業務領域へクラウド活用が進んでいることも近年の特徴。これによって、クラウド導入に対する法人の意識に変化が起こっています。
クラウドサービスとは
進化するクラウド技術について補足しておきましょう。そもそも、クラウドサービスとは、ソフトウェア / ハードウェアを含むコンピューターリソースを、インターネット経由で提供するサービスのこと。主に、以下の3つの導入タイプを選べます。
SaaS(Software as a Service) |
インターネット経由でアプリケーション (ソフトウェア)を利用できるサービス |
PaaS(Platform as a Service) |
インターネット経由でソフトウェア開発基盤 (OS / ミドルウェアを含むプラットフォーム)を利用できるサービス |
IaaS(Infrastructure as a Service) |
インターネット経由でインフラ基盤 (サーバ / ネットワーク)を利用できるサービス |
これらの導入タイプに加え、近年注目されているクラウド技術が「CaaS」「FaaS」です。CaaS(Container as a Service)とは、コンテナ型仮想化技術を活用し、高速かつ軽量なアプリケーション実行環境を提供するサービスのこと。FaaS(Function as a Service)とは、サーバーレスでアプリケーション開発するための関数を提供するサービスのことです。
特に、担当者の運用負荷を軽減するのに役立つCaaSは、大規模企業のインフラソリューションとして大きな注目を集めています。
仮想サーバについては以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:仮想サーバーとは|仕組み・メリット・物理サーバーやクラウドとの違いを解説!
クラウドは利用促進から高度活用へ
それでは、クラウド導入に対する法人の意識変化とはなにか?クラウド導入の目的が、利用促進から高度活用へと変化していることです。具体的には、従来の業務をクラウドで置き換えるだけではなく、DXの実現に向け、クラウドを活用してビジネスの変革 / 効率化を目指すこと。
このため、新しいクラウドサービス / 技術の導入が積極化。目的達成に向けた課題があっても、検討に長い時間をかけるのではなく、可能なものから導入 / 活用を進める法人が増えているのです。この流れは、法人によるクラウド導入をより一層加速させる大きな要因だといえるでしょう。
クラウド導入のメリット(タイプ共通)
しかし、多種多様なタイプ / サービスの存在するクラウドは、導入さえすれば活用できるというものではありません。タイプごとに異なるクラウドのメリット / 特徴を知り、適切なサービスを選定することが重要です。まずは、各タイプに共通するクラウド導入のメリットから紹介していきます。
オンデマンド
コンピューターリソースをインターネット経由で利用するクラウドは、いつでもどこでもオンデマンドにアクセスできるメリットがあります。移動中の隙間時間を使って業務できるのはもちろん、テレワークをはじめとした多様な働き方に対応できます。
サテライトオフィスや自宅でも活用できるため、クラウド導入によって距離的な課題も解決可能。地方の優秀人材を確保するのにもクラウド導入は役立ちます。
初期費用を抑えた迅速な導入
クラウドサービスの多くは月額固定料金、もしくは利用した分だけ支払う従量料金となっているため、初期コストを抑えた導入が可能。一部のSaaSは初期費用を必要とする場合もありますが、ハードウェアを含めたシステム一式を調達するよりはるかに安価です。
また、あらかじめコンピューターリソースの用意されているクラウドは、希望する環境を迅速に導入できることもメリットの1つ。SaaSであれば、契約後、すぐにでもソフトウェアを使いはじめられます。
運用負荷 / コストの軽減
自社でソフトウェア / ハードウェアすべての管理責任を負うオンプレミスと異なり、利用するサービスの管理責任はベンダーにあることがクラウドの特徴。このため、クラウドにはシステム運用、および運用に関するコストを軽減できるメリットがあります。
ただし、導入タイプによって、自社管理が必要な領域があることに注意が必要。たとえば、インフラ環境のみの提供を受けるIaaSであれば、開発環境となるプラットフォーム、アプリケーションの運用はユーザーの責任です。
固定費から変動費へ
ソフトウェア / ハードウェアの取得価額を減価償却する必要のあるオンプレミスに対し、クラウドの利用料金は損金として計上可能。適切にクラウドを活用することによって、利用料金を最適化された変動費に変えられるメリットがあります。
BCP対策に有効
コンピューターリソースを複数のデータセンターで管理するクラウドは、災害発生時のリスク分散、BCP対策に有効なメリットもあります。構内にシステムを設置するオンプレミスではこうはいきません。
ただし、IaaS / PaaSを含む一部サービスでは、分散 / 自動バックアップはオプション扱いの場合もあるため注意が必要です。
クラウド導入のメリット(SaaS)
ここからは、クラウドの主な導入タイプ別のメリットを紹介していきましょう。まずは、ソフトウェアレベルのサービスを提供する「SaaS(Software as a Service)」です。
最新のアプリケーションを利用可能
ライセンスを購入するパッケージソフトウェア、自社開発ソフトウェアと異なり、SaaSは常に最新のアプリケーションソフトウェアを利用できるメリットがあります。ソフトウェアのアップデートはもちろん、OSのバージョンを気にする必要もありません。
たとえば、会計ソフトなどは「毎年のように実施される税制改正」の影響を受けてしまいがち。アップデータの配布が有料になる場合もあるでしょう。SaaS型であれば、こうした心配は不要です。
業務の標準化 / 効率化
SaaS型クラウドサービスの導入は、業務標準化 / 効率化に寄与するメリットがあります。ソフトウェアをサービスとして提供するSaaSの場合、自社のワークフローにあわせたカスタマイズは困難。反面、もっとも効率よく業務を遂行できるよう、設計されていることも事実です。
つまり、SaaSにあわせて自社の業務フローをアレンジすることで、業務効率の向上、生産性の向上が見込めます。システムに慣れて業務標準化が進めば、新人教育も効率化できるでしょう。
クラウド導入のメリット(PaaS)
次に、プラットフォーム(OS / ミドルウェア)レベルのサービスを提供する「PaaS(Platform as a Service)」のメリットを紹介します。
アプリケーション開発への集中
OS / ミドルウェアという開発環境を利用できるPaaSは、アプリケーション開発のみに集中できるメリットが得られます。たしかに、OS / ミドルウェアの選択肢は限られますが、汎用性の高いアプリケーション開発ならば、ベースとなるOS / ミドルウェアも汎用的なもので充分。リソースをアプリケーションのみに集中することで、コスト削減も実現できます。
インフラ基盤に加え、OS / ミドルウェアの管理をベンダーに任せられることもPaaSのメリットです。
クラウド導入のメリット(IaaS)
インフラ(サーバ / ネットワーク)レベルのサービスを提供する「IaaS(Infrastructure as a Service)」のメリットも紹介していきましょう。
自由度・柔軟性の高い開発環境
インフラ基盤のみを利用するIaaSは、自由度・柔軟性の高い開発環境を得られるメリットがあります。あらゆるサーバOSを選択できるのはもちろん、ミドルウェアを自社開発することも可能です。
また、インスタンス(仮想マシン)という概念で動作するIaaSは、必要に応じたコンピューターリソースを素早く利用できるメリットもあります。CPU / メモリ / ストレージなどを自由に選択でき、数分で仮想的サーバを起動できるのはIaaSならではの仕組みです。
状況に応じたスケーリング
仮想マシンで動作するIaaSには、状況に応じてコンピューターリソース(インスタンス)をスケーリングできるメリットもあります。
たとえば、起動中の仮想マシンに大きな負荷がかかっている場合、追加のインスタンス(仮想マシン)を起動して処理を分散させるなどが可能。処理状況に応じてインスタンスを増減させることで、コストの最適化も実現できます。
クラウド導入の注意点
ここまでの解説でお分かりのように、クラウドは従来のオンプレミス型とは異なる概念・考え方を持つサービスです。つまり「所有」ではなく「利用」するクラウド導入には、知っておきたい注意点もあります。簡単に紹介しておきましょう。
コスト管理
クラウド導入で注意しておきたい1つめのポイントは、コスト管理を意識すること。特に、従量料金制となるPaaS / IaaSでは重要です。なぜなら、インスタンスの開始から停止、もしくは削除までがPaaS / IaaSの課金対象となるから。意識的にインスタンスの利用を停止しなければ、ムダな料金が発生してしまいます。
近年では、複数ベンダーのサービスを併用する「マルチクラウド戦略」を採用する企業が増えていますが、この場合も重要なのはコスト管理です。なぜなら、マルチクラウドは「目的・用途に応じて、各ベンダーの適切なコンピューターリソースを利用する」戦略だからです。
ハイブリッド / マルチクラウド管理については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:クラウド管理とは|概要・メリット・ハイブリッド / マルチクラウド管理の仕組みを解説!
サービス終了のリスク
特定の企業が自社専用に用意する「プライベートクラウド」などの例外はありますが、AWSやAzureをはじめとしたパブリッククラウドを運営するのは民間企業です。当然、ユーザーのニーズとは関連のないところで、サービスが終了してしまうリスクがあります。
特にSaaSは、PaaS / IaaSよりもサービス終了リスクが比較的大きいといえるでしょう。ユーザー側でコントロールできることではありませんが、万が一発生するかもしれないリスクとして知っておく必要があります。
クラウド導入のポイント
最後に、高度活用に向けたクラウド導入のヒントとなるポイントを紹介しておきましょう。
クラウド導入の目的
上述したように、クラウド導入の目的は「既存業務をITで置き換える」から「DXに向けてビジネスを変革する」に変化しつつあります。つまり、データ駆動型ビジネスへの転換を目的に、最新のテクノロジーを取り入れるためのプラットフォームとしてクラウド導入が進められているのです。
クラウド導入が目的ではなく、DX / データ駆動型ビジネスの実現を目的に、どのようにクラウドを活用していくかがポイントです。
クラウド戦略 / 計画
プロジェクトを推進する際に、目的から落とし込んだ戦略 / 計画の策定は非常に重要です。ただし、DX / データ駆動型ビジネスの実現という曖昧な目的のもとでは、戦略 / 計画を立てるよりも実行してしまった方がベターな場合もあります。検討を重ねるより、できるところから実行する(クラウド導入)企業が増えているのはこのため。
これは、大枠の計画を定め、機能を分割して素早く開発し、ユーザーの意向を取り入れながら改善を繰り返す「アジャイル型開発」に近いといえるでしょう。クラウドの高度活用を目指すには、従来とは異なる視点も必要。トレンドが急速に変化する、グローバル時代の市場に適応するためにも重要なポイントです。
【まとめ】クラウド導入のメリット・ポイントを紹介しました
DXに向けてクラウド導入を進める企業が多いと聞くが、どんなメリットを得られるのか?自社も検討したほうがいいのか?そんな企業担当者の方に向け、クラウド導入の現状、導入タイプごとのメリット、導入のポイントを解説してきました。
なお、適切なクラウドベンダーの探し方・選び方がわからない!という方はシステム幹事にお気軽にご相談ください。貴社の目的・予算にあった最適な会社を厳選してご紹介します。相談料・会社紹介料などは無料です。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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