- 更新日 2024.03.15
- カテゴリー システム開発
Webシステム開発における仕様書の役割・重要性|書き方のポイントやツールも紹介【2024年最新版】
Webシステム開発における仕様書とは?外注するためには仕様書の作成が必要?そんな素朴な疑問を感じている企業・店舗担当者の方は少なくないはず。
・仕様書とはそもそもなに?
・なぜWebシステム開発に仕様書が必要?重要性は?
・仕様書は設計書とは違う?
・仕様書はどうやって作ればいい?
特に、これまでWebシステム開発に携わったことのない担当者の方であれば、そもそも仕様書がなんのために必要なのかがわからないかもしれません。
そこで本記事では、Webシステムにおける仕様書の役割・重要性を解説するとともに、だれにでもわかりやすい仕様書を書くためのポイントや、作成におすすめのツールも紹介!仕様書作成の参考になるテンプレートも紹介します。
※Webシステムの開発を得意とする開発会社を探している方は、システム幹事にご相談ください。専任のアドバイザーが最適なツールや開発会社をご紹介します。相談料などは一切かかりませんので、お気軽にお問い合わせください。
Webシステムの基本について念のためおさらいしたい方は下記記事をご参照ください。
関連記事:実はシンプル!Webシステムの基本!具体例・Webサイトとの違い
Webシステムにおける仕様書とは
Webシステムにおける仕様書(Specification)とは、開発の対象となるWebシステムが満たさなければならない、すべての要求事項(仕様)をまとめた文書・ドキュメントのことです。
仕様書と設計書の違い
仕様書と混同してしまいがちなドキュメントに「設計書」があります。仕様書が「Webシステムが満たすべき要求を網羅」しているのに対し、設計書は「システムに求められる要求を実現する方法」が記載されたものです。
言い換えれば、Webシステムが最終成果物としてどうあるべきかという「ゴールを示すものが仕様書」、成果物を作るための「開発過程を示すものが設計書」だといえるでしょう。
ただし、Webシステムに限らず、開発現場では仕様書・設計書が混同される場合もしばしば。個別の開発会社や現場に応じて、定義が曖昧になりがちなのも仕様書の特徴です。
Webシステムにおける仕様書の役割・重要性
Webシステムにおける仕様書の役割・重要性は、開発に携わるすべてのステークホルダー・スタッフに「最終的なゴールを明確に提示して共有すること」です。
Webシステムの開発過程では、成果物の完成までに実にさまざまなドキュメントが制作されます。そのなかでも、プロジェクトが目指すべき指標を明確にする「仕様書」は非常に重要。仕様書を全員で共有することにより、共同作業で生じがちな「認識のズレ」も排除できます。
※システム開発のドキュメントについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:システム開発の成果物・ドキュメント|知っておきたい開発工程ごとの成果物を一覧で紹介!
開発の上流工程で作られるさまざまな仕様書
ただし、Webシステムにおける仕様書はひとつだけではありません。多くのスタッフが複数の工程に携わるWebシステム開発では、工程ごとの目的に合わせてさまざまな仕様書が作成されることも特徴です。
日本で主流のウォーターフォール型システム開発を例に挙げれば、「要求定義」「要件定義」「基本設計」「詳細設計」といった上流の開発工程ごとに、目的・対象者の異なる仕様書と、要件定義以降はそれに対応したテスト仕様書もセットで作成されることが一般的です。それぞれ簡単に解説していきましょう。
※ウォーターフォール型システム開発についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:ウォーターフォール型システム開発とは?開発工程・メリット・アジャイル型との違いを解説!
要求定義:要求仕様書
要求定義とは、機能・非機能(機能以外の要素)要件を含め、開発するWebシステムに求められる要求事項を定義していく開発フェーズのこと。
その結果として作成される仕様書が「要求仕様書」です。次工程である、要件定義のインプット(材料)として活用されるドキュメントでもあります。
関連記事:システム開発における要求定義の重要性|要件定義との違いや要求定義の実態・改善ポイントを解説!
要件定義:要求仕様書(要件定義書)、テスト仕様書
要件定義とは、要求仕様書に記載されたWebシステムに求める要求を、技術的にどのように実現させていくかを加味したうえで、必要とされる要件を定義していくフェーズのこと。その結果として作成される仕様書が「要件定義書」です。
そして、依頼側と開発側が協議を重ねて合意にいたった要件定義書は、開発対象となるWebシステムの最終的な「要求仕様書」として関係者全員で共有されます(引き続き『要件定義書』と呼ぶこともあります)。
要件定義でアウトプットされた最終的な要求仕様書は、さらに次工程である基本設計のインプットとしても活用。また、このフェーズで総合テスト・受け入れテストに求められる要求事項をまとめたテスト仕様書も作成されます。
※システム開発の要件定義についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:システム開発の要件定義とは?受託開発における重要性や進め方を解説!
基本設計:外部仕様書(基本設計書)、テスト仕様書
基本設計とは、要求仕様書(要件定義書)をもとに、開発するWebシステムに要求される機能・システム構造を具体化していくフェーズのこと。基本設計で具体化する機能・システム構造は、ユーザーが外から見て把握できるものであるため、この工程を外部設計と呼ぶ場合もあります。
このフェーズでは画面レイアウトを含むユーザーインターフェース、入出力データの種類やデータベース、帳票など、機能面に関する要求がまとめられ、アウトプットされたドキュメントは外部仕様書(基本設計書)、あるいは機能仕様書と呼ばれます。
また、基本設計フェーズでもテスト仕様書が作成されますが、対象となるテストは「結合テスト」であることが要件定義フェーズとの違いです。
※システム開発の基本設計についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:システム開発の基本設計とは?その位置付け・重要性・発注者としての関わり方を解説!
詳細設計:内部仕様書(詳細設計書)、テスト仕様書
詳細設計とは、外部仕様書をもとに、開発されるWebシステムの機能をどのようにプログラム(開発)していくのを具体化していくフェーズのこと。外部設計に対し、Webシステムの内部を明らかにするものでもあるため、この工程を内部設計と呼ぶ場合もあります。
このフェーズではプログラムの動作・処理・データ受け渡しなど、Webシステムの機能を実現するために必要な要求がまとめられ、アウトプットされたドキュメントは内部仕様書(詳細設計書)、あるいは技術仕様書と呼ばれます。
個別に開発されるプログラムをチェックする「単体テスト」を対象にしたテスト仕様書のほか、プログラマーへの指示書となる「プログラム設計書」が作成されるのもこのフェーズ。それぞれのフェーズで異なるテスト仕様書が作成される理由は、V字モデルに従った工程を辿ることによって開発するWebシステムの品質を担保するためです。
関連記事:システム開発の詳細設計とは?プロジェクトの位置付け・役割をわかりやすく解説!
Webシステムの仕様書はだれが作る?
仕様書 |
作成者 |
要求仕様書 |
クライアント |
要求仕様書(要件定義書)*確定したもの |
開発会社。クライアントと合意の上、確定 |
外部仕様書 |
開発会社 |
内部仕様書 |
開発会社 |
ここまでの解説でおわかりのように、Webシステム開発では上流工程でさまざまな仕様書が作成されます。では、それぞれの仕様書はだれの責任において作成されるのでしょうか?主な仕様書である「要求仕様書」「外部仕様書」「内部仕様書」に絞り、簡単に解説していきましょう。
要求仕様書
開発するWebシステムになにを求めるのか、どのような要求を満たせばゴールを達成したといえるのかを決定するのは、依頼側であるクライアントです。つまり、要求定義フェーズで作成される要求仕様書は、依頼側であるクライアントの責任において作成することが基本。
一方、クライアントの作成した要求仕様書を踏まえた、要件定義の成果としての要求仕様書(要件定義書)は、プロジェクトマネージャー(PM)、システムエンジニア(SE)を中心とする受託側開発会社の責任において作成され、内容を依頼側・開発側で詰めながら修正・合意にいたったものが最終的な要求仕様書として確定します。
外部仕様書
開発するWebシステムに求められる機能要求が記載された外部仕様書は、SEを中心とする受託側開発会社の責任において作成されます。
ただし、Webシステムを外側から見た機能の仕様をまとめる外部仕様書の作成は、依頼側であるクライアントの以降を反映できる最後のチャンス。開発会社に任せきりにするのではなく、クライアントとして積極的に外部仕様書作成に関わることが重要です。
内部仕様書
開発するWebシステムの機能実現に必要な要求が記載された内部仕様書は、SEを中心とする受託側開発会社の責任において作成されます。ただし、内部仕様書が依頼側であるクライアントに開示されることはほとんどありません。これは内部仕様書の対象となるのが、受託側開発会社のプログラマーだからです。
要求仕様書にはなにが記載される?
Webシステム開発の最上流工程である要求定義フェーズでは、クライアント自ら求められる機能・非機能を定義し、プロジェクトのたたき台となる要求仕様書を作成しなければなりません。しかし、システム開発の経験に乏しい企業担当者の方であれば、なにをどうすればいいのか困惑してしまうかもしれません。
要求仕様書にどのような項目を記載するのかは、技術標準化機関IEEEによって国際標準化されています。まずは参考までに「IEEE 830-1998」の内容を紹介しておきましょう。
画像引用:IEEE Std 830-1998
仕様書テンプレートを確認してもおわかりのように、システム開発会社との認識のズレをなくすため用語の定義・解説を加えるほか、参考資料なども添付することが一般的。しかし、それほど難しく考えることはありません。基本的には以下のようなシステム要求を仕様書としてまとめることだと考えれば間違いありません。
要求仕様書の項目 |
概要 |
システムの対象領域 |
システム化する対象の業務領域 |
システムの概要 |
システム化する業務の全体像 |
システム構成 |
ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなど |
業務フロー |
システムを活用した業務の流れ |
業務設計 |
個別業務の一覧、それぞれの作業手順 |
機能要件 |
システムに求められる機能 |
入出力要件 |
入力・出力情報、外部連携など |
データ要件 |
データの種類・項目、データベース要求など |
非機能要件 |
機能以外でシステムに求める要件 (性能・セキュリティ・可用性など) |
※システム開発外注時に欠かせないRFPについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:RFPとは?システム開発の質を高める提案依頼書の作り方を解説!【サンプルあり】
だれでもわかるWebシステム要求仕様書を作成するポイント
Webシステムにおける仕様書、特にクライアントの責任において作成される要求仕様書は、すべてプロジェクト関係者に「最終的なゴールを明確に提示して共有するための重要な指標」です。ただ単に必要な項目が網羅されているだけではなく、共有するだれもが理解できる、わかりやすい内容でなければなりません。
ではどうすればいいのか?そんな企業担当者の方の参考になるよう、だれでもわかるWebシステム要求仕様書を作成するためのポイントを紹介していきます。
イメージしやすい画像・図を活用する
画像引用:モンスターラボ
開発するWebシステムの最終的なゴールを共有するためには、具体的にイメージしやすい画像・図を活用しながら仕様書を作成していくことが重要です。多数のステークホルダー・スタッフが参加するWebシステム開発では、共同作業ならではの「認識のズレ」が生じがち。こうしたミスコミュニケーションを解決するには、画像・図の活用がもっとも効果的だからです。
画像・図はどのように作成すればいいのか、困惑してしまう担当者の方が多いかもしれませんが、PowerPointやExcelなどを活用するだけでもずいぶん違います。近年では簡単に画面レイアウトを作成できるツールが多数存在するため、活用してみるのもおすすめです。
画面遷移がわかるように工夫する
Webシステム・アプリケーションで必須の画面遷移がわかるよう、工夫して仕様書を作成することもポイントのひとつです。画面遷移とは、ボタンクリックなどの特定アクションを起こしたときに、変化する画面レイアウトの順番を示すこと。
普段、私たちがなにげなく使っているWebシステム・アプリケーションですが、操作に迷うことのない「活用されるWebシステム」を開発するには、ユーザーが自然に扱える画面遷移を設計することが重要です。
画像引用:モンスターラボ
細部まで詳しく記載する
仕様書に記載する「Webシステムに求められる要求」は、細部まで詳しく、かつ具体的な文章で書くようにしましょう。曖昧な表現を避け、「5W1H」を念頭に、Webシステム開発の目的(なぜ)・ゴール(どのように)や、だれが、なにを、いつ、どこで実行するのかを明確にすることがポイント。
仕様書に要求事項が詳しく・具体的に記載されていれば、関係者間の認識のズレを最小限に抑えられます。仕様書の作成者に不明点を確認することも減らせるため、コミュニケーションコストの削減にもつながるでしょう。
おすすめの仕様書作成ツール
要求仕様書を作り慣れていない企業担当者の方が直面しがちな課題を解説する、画像や図を簡単に作成できるおすすめのツールも紹介しておきます。
moqups
画像引用:moqups
「moqups」は、ワイヤーフレーム・モックアップ・ダイアグラム・グラフをだれでも簡単にドラッグ&ドロップで作成できる、オールインワン・オンライン・デザインツールです。
豊富に用意されたテンプレートを活用しながらイメージ通りの仕様書を作成できます。
1名のみで使える月額$13からの「Solo」プランのほか、3名によるオンラインコラボレーションに対応する月額$19からの「Team」プランも用意。最終的な要求仕様書を作成する際に、開発会社とオンラインでやり取りする、などの使い方も可能です。
cacoo
画像引用:cacoo
「cacoo」は、moqupsと並んでおすすめのオンライン・デザインツール。
ワイヤーフレーム・モックアップなどはもちろん、フローチャート・ネットワーク図・データベース設計図・ガントチャートなどのテンプレートが用意され、はじめての方でも簡単にWebシステムの仕様書を作成可能。Slackなどのコラボレーションツール、Dropboxなどのオンラインストレージとの共有も簡単です。
用意されているプランは、1アカウントあたり月額660円からの「チーム」、個人で使いたい方向けの「プロ」、自社サーバで活用できる「エンタープライズ」の3つ。
それぞれに機能差は設けられていないため、使い方・ニーズにあわせて選択するだけという、シンプルな価格体系になっています。
【参考】仕様書を作るのが難しいときは?
作成を支援する便利なツールがあるとはいえ、技術的・時間的な問題によって自社で要求仕様書を作成することは難しい、そう感じる担当者の方は少なくないはずです。
しかし、こうしたケースでも、開発するWebシステムの目的・ゴール設定はもちろん、業務課題の洗い出しを含めた業務設計までは自力で実行するべきです。この3つが明確になってさえいれば、優秀なシステム開発会社が仕様書への落とし込みに全面的に協力してくれます。
依頼先を選定する材料とするためにも、なんとか自社で要求仕様書を作りたい、といったニーズのある企業であれば、業務設計を含む要求定義や、要求定義書・RFP(提案依頼書)作成のみ支援してくれる会社を探すのも方法です。
まとめ:パートナーとなるシステム開発会社の選定が重要
システム開発の経験が乏しい企業・店舗担当者の方に向け、本記事では、Webシステムにおける仕様書の役割・重要性を解説するとともに、だれにでもわかりやすい仕様書を書くためのポイントや、作成におすすめのツールを紹介してきました。
開発するWebシステムの最終的なゴールを明確に提示して共有するための指標となる仕様書は、システム開発プロジェクトに欠かせない重要なドキュメント。しかし、プロジェクトの進行に慣れていない担当者の方であれば、適切な仕様書を作成できるのか?不安の方が大きいのかもしれません。
そんなときには、Webシステムの開発に豊富な実績を持つ、優良なシステム開発会社に相談してみることがおすすめ。コンサルティングという形で、仕様書・RFPの作成のみをサポートしてもらうことも可能です。
※もしWebシステムの開発を得意とする開発会社を探している方はシステム幹事にご相談ください。予算や目的から最適な開発会社を選定させていただきます。相談料などは一切かかりません。
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Q. Webシステムにおける仕様書とは
Webシステムにおける仕様書とは、開発の対象となるWebシステムが満たさなければならない、すべての要求事項をまとめた文書・ドキュメントを指します。詳しい内容は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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