- 更新日 2024.10.22
- カテゴリー システムの費用相場
スクラッチ開発費用の相場感|開発費用が決まる仕組み・外注のポイントを解説!
独自性の高いシステムを作るにはスクラッチ開発が適していると聞いた。しかし、スクラッチ開発費用はいくらなのか?自社システム開発を検討している担当者なら知りたいはず。そんな方に向け、開発費用が決まる仕組みから、費用の変動する要因、外注のポイントまで、スクラッチ開発費用の相場感を紹介していきます。
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スクラッチ開発費用が決まる仕組み
スクラッチ開発とは、オリジナルのシステムをゼロから開発すること。一般的には、システムの開発基盤となる「フレームワーク」や「ライブラリ」を活用しますが、それも使わない開発手法を「フルスクラッチ開発」と区別する場合もあります。
既存パッケージをベースにカスタマイズを加える「パッケージ開発」と異なり、事実上の制限なしにアイデアを具現化できる、自由度の高さがスクラッチ開発のメリット。一方、自由度の高さゆえに開発費用は高額です。それでは、高額とされるスクラッチ開発費用はどのような仕組みで決まるのか?簡単に解説していきましょう。
スクラッチ開発の基本やメリットについては以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:スクラッチ開発とは?メリット・デメリット、パッケージ開発との違い
スクラッチ開発費用のほとんどは人件費
費用項目自体は多岐にわたりますが、スクラッチ開発費用のほとんどは人件費で占められています。それでは、人件費はどのように算出されているのか?その基準の1つとなるのが「人月単価」です。
人月単価とは
人月単価とは、スクラッチ開発に携わるエンジニア1名が、1か月間稼働した場合にかかる費用のこと。システム開発プロジェクトには、さまざまなスキルレベルのエンジニアが参加しますが、経験を重ねたスキルの高いエンジニアほど人月単価は高額です。スキルレベルごとの人月単価の相場は以下の通り。
エンジニアのスキルレベル |
人月単価の相場 |
プログラマー |
50万円〜100万円 |
初級エンジニア |
60万円〜100万円 |
中級エンジニア |
80万円〜120万円 |
上級エンジニア(管理職) |
120万円〜160万円 |
たとえば、要件定義からテストまで、開発工程を順序立てて進行させるウォーターフォール型の場合、工程によってアサインするエンジニアのスキルレベルは異なります。
具体的には、要件定義や設計などの上流工程には、上級エンジニアをアサイン。開発やテストなどの下流工程には初級エンジニアやプログラマーをアサインし、それぞれの工程ごとの単価を明らかにしていくイメージです。
ウォーターフォール型システム開発については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ウォーターフォール開発とは?開発工程・メリット・向いているプロジェクトも解説
人月単価には利益 / 経費も含まれる
スキルレベルごとの人月単価相場に、少なくない費用差のあることが気になっている方も多いでしょう。これは、エンジニアの給与以外に、会社の利益、オフィスの維持費、各種必要経費などが人月単価に含まれているからです。
つまり、給与やオフィス賃料の高い都市部のシステム開発会社は、相対的に地方よりも人月単価を高く設定する傾向があります。
リリースまでの開発工数 / 期間
スクラッチ開発の人件費を算出するもう1つの基準となるのが、リリースまでの開発工数 / 期間です。たとえば、基本設計工程を完了させるまでの工数を見積もり、工数をこなすのに必要な期間を割り出します。割り出した開発期間に、アサインするエンジニアの人月単価を掛ければ、基本設計工程にかかる費用を算出できるというわけです。
そのほかの工程も同様に計算し、すべての費用を合計すれば、スクラッチ開発の人件費を算出可能。2か月の納期に対し、開発期間4か月が必要ならば、アサインするエンジニア数を倍にして対応します。エンジニア数が増えても、開発期間を半分にできれば、トータルでの人件費は変わらないからです。
ハードウェア / インフラ構築費用
オンプレミス型の業務システムなどをスクラッチ開発するなら、サーバを含むハードウェア調達費用、ネットワーク / インフラ構築費用も必要です。
ただし、近年では業務システムであっても、AWSやGCPなどのパブリッククラウド利用が主流となりつつあります。この場合、ハードウェア調達 / インフラ構築の費用は不要な一方、システム構築後の利用料が継続的にかかります。
AWS EC2の料金については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:AWS EC2仮想サーバーの料金体系|プラン・料金シミュレーションも紹介!
リリース後には運用・保守費用が必要
リリース後のシステムを安定的に稼働させていくには、運用・保守費用も必要です。スクラッチ開発を依頼したシステム開発会社に運用・保守を任せるほか、専門会社であるMSPに依頼する、運用・保守を内製するなどの方法があります。
スクラッチ開発費用の相場感
1つとして同じもののないオリジナルシステムを作るため、スクラッチ開発費用の相場感を紹介することは簡単ではありません。システムごとに構成や実装する機能、規模が大幅に異なるからです。参考までに、アメリカのシステム開発会社「MLSDev」が公表しているアプリ開発費用をもとに、大まかなスクラッチ開発費用の目安を紹介しておきましょう。
画像出典:MLSDev
たとえば、ベーシックなiOS / Androidネイティブアプリのように、バックエンド機能を必要としないものなら期間1か月程度、140万円程度の費用で開発可能。
一方、SNSやECなどのバックエンドプログラムが必須のアプリ / システムになると、スクラッチ開発費用は約550万円〜2,800万円程度が相場感。開発期間も3か月から9か月が必要です。もちろん、大規模かつ複雑なシステムになれば、スクラッチ開発費用が1億円を超えることも珍しくありません。
※アメリカと日本の平均収入差(0.65)を考慮した上で、1ドル140円で計算
スクラッチ開発費用が変動する要因
スクラッチ開発費用が変動する主な要因は「アプリ / システムの規模と実装する機能」ですが、同じシステム規模 / 機能でも費用が異なる場合も少なくありません。それはなぜか?アプリ / システムの仕様以外に、費用が変動するいくつかの要因があるからです。
スクラッチ開発の手法
スクラッチ開発には「ウォーターフォール」「アジャイル」「プロトタイプ」「スパイラル」という、主に4つの開発手法があり、それぞれの手法によって費用は変動します。たとえば、システムに必要な機能を大まかに分割し、優先順位の高いものから開発するアジャイルは、ウォーターフォールよりも費用をかけずにシステムをリリースできます。
ただし、ユーザーの反応を見ながら必要な機能を追加開発していくため、ゴールの見極めが困難なこともアジャイルの特徴。そのため、継続して開発するうちに、トータルコストでウォーターフォールを上回ってしまうことも珍しくありません。
本開発する前に試作品を開発するプロトタイプは、開発側と依頼側の認識の違いというウォーターフォールの課題を解決できますが、試作品を作る分だけ開発費用は高額です。
スクラッチ開発の手法については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:システム開発の手法4つの特徴・メリット・デメリットを解説
開発工程の手戻り(ウォーターフォール型)
スクラッチ開発の主流は、上流から下流へ開発工程を順序立てて進めていくウォーターフォール型。しかし、なんらかの理由で開発工程の手戻りが生じた場合、開発期間の延長と、それにともなう追加開発費用が発生します。
なぜなら、ウォーターフォール型開発は「工程の手戻りなどのイレギュラーな対応を想定していない」から。思っていたものと違う、後から機能追加の要望があったなど、主に開発側と依頼側の意思疎通がうまくいかない場合に生じる費用変動の要因です。
リスクに備えたマージン
ウォーターフォール型にありがちな「開発工程の手戻りリスク」は、開発会社側でも認識しています。そのため、リスクに備えたマージンをスクラッチ開発費用に上乗せすることが一般的。追加の開発費用が発生しても、依頼側に請求できるとは限らないからです。
マージンをどのくらい見ておくかは開発会社によって異なりますが、プロジェクトのリスクが高ければ、それに応じてマージンも高めに見積もる可能性は高くなるでしょう。
外注先のシステム開発会社
上述したように、スクラッチ開発費用のほとんどは人件費であり、その基準となるのが人月単価です。ある程度の目安があるとはいえ、人月単価はシステム開発会社によってまちまち。つまり、どのシステム開発会社を選ぶかによってもスクラッチ開発費用は変動します。
スクラッチ開発を外注する際のポイント
スクラッチ開発費用の決まる仕組み、大まかな費用感、費用が変動する理由を把握できたところで、外注する際に気を付けておきたいポイントを紹介しておきましょう。
QCDのバランスを重視
高額になりがちなスクラッチ開発費用をできる限り抑えたい、そう考えるのは当たり前ですが、なによりも重視すべきは「QCDのバランス」です。QCDとは、Quality(品質)Cost(コスト)Delivery(納期)の略称のこと。主に製造業の開発生産業務で使われますが、スクラッチ開発にも大いに当てはまります。
コスト管理は非常に重要ではありますが、費用面ばかりに気を取られるとアプリ / システムの品質や納期を担保できません。計画通りにプロジェクトが進まないのでは、費用を抑えられても本末転倒です。
システムの企画 / 要求定義
スクラッチ開発の主流であるウォーターフォール型を選択する場合は、システムの企画 / 要求定義を徹底しておきましょう。要求定義とは、開発するシステムに要求される機能 / 非機能(機能以外の要件)を定義すること。ブレない目的と明確な要求定義があれば、その後の開発工程をスムーズに進められるからです。
要求が明確なら、開発会社とのミスコミュニケーションも起こりにくくなり、結果的に開発工程の手戻りという追加費用の発生リスクも減らせます。
要求定義工程については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:システム開発における要求定義の重要性|要件定義との違いや要求定義の実態・改善ポイントを解説
スクラッチ開発の手法に適した契約形態
スクラッチ開発費用を抑えるため「成果物の完成責任を負わない準委任契約を締結する」というアドバイスが散見されますが、それは大きな間違いです。なぜなら、開発手法 / 工程に応じて適切な契約形態は異なるからです。
たとえば、ウォーターフォール型の場合、開発工程に応じて「完成責任のある請負契約」と「準委任契約」を使い分ける多段階契約が浸透しつつあります。一方、ユーザーの反応を見ながら開発 / リリースを進めるアジャイル型は、準委任契約と相性のいいことが特徴。
そもそも、スクラッチ開発に失敗してしまう要因の1つは「契約内容をよく理解していなかった」こと。採用する開発手法をよく理解し、適切な契約を締結することが重要です。
スクラッチ開発の契約形態については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ソフトウェア(システム)開発委託契約とは?トラブルを防止する委託契約の基本を解説
適切なシステム開発会社の選定
システム開発プロジェクトを成功させるには、外注先となる適切なシステム開発会社を選定することも重要です。実績を確認しながら、開発するシステムと相性のよさそうな3社程度をピックアップし、同じ条件で相見積もりを依頼するのがおすすめ。
ただし、見積もり金額だけで比較検討するのは、QCDのバランスという意味でもおすすめできません。重視すべきは、認識の違いを埋めるためのコミュニケーション力、よりよい結果を残すための提案力。初期段階から、担当者の資質をしっかり見極めましょう。
【まとめ】スクラッチ開発費用の相場感を紹介しました
独自性の高いシステムを作るにはスクラッチ開発が適していると聞いた。しかし、スクラッチ開発費用はいくらなのか?そんな方に向け、開発費用が決まる仕組みから、費用の変動する要因、外注のポイントまで、スクラッチ開発費用の相場感を紹介してきました。
なお、スクラッチ開発の得意な開発会社の探し方・選び方がわからない!という方はシステム幹事にお気軽にご相談ください。貴社の目的・予算にあった最適な会社を厳選してご紹介します。相談料・会社紹介料などは無料です。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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