- 更新日 2023.12.12
- カテゴリー アプリ開発
MaaSアプリ開発とは?意味・定義やアプリ開発事例・必要な技術・将来の展望を解説【2024年最新版】
「最近話題に上ることの多くなった、MaaSアプリ開発に興味がある」と考える方であれば、以下のようなことを知りたいのではないでしょうか。
・そもそもMaaSとは?
・MaaSアプリ開発の進め方は?
・MaaSアプリ開発は今後どのように進化していく?
本記事では、MaaSの意味・定義やアプリ開発事例・必要な技術など、知っておきたいMaaSアプリ開発の基礎知識を解説!MaaSアプリの将来や開発の課題なども紹介していきます。
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アプリ開発に役立つ記事もご覧ください MaaSアプリ開発におすすめ!アプリ開発かんたんマニュアル
MaaSアプリ開発とは
MaaS(Mobility as a Service)とは、IT担当者の方であればおなじみのSaaS / PaaS / IaaSにならって命名された「サービスとしてのモビリティ」のこと。公共交通機関やレンタカー / カーシェアリングなど、さまざまなモビリティ(移動手段)の検索・予約・決済をひとつのサービスに統合し、利便性の高い移動体験を利用者に提供する概念です。
つまり、MaaS(マース)を利用者に提供するアプリを開発することが「MaaSアプリ開発」です。それでは、MaaSアプリとはどんなアプリのことなのか。具体的にイメージできるよう、MaaSアプリの開発事例をいくつか紹介しておきましょう。
開発事例1:EMot(エモット)
「EMot(エモット)」は、小田急電鉄が開発・提供するiOS / Android向けMaaSアプリです。出発地から目的地まで、さまざまなモビリティを組み合わせた最短ルートを検索できる「複合経路検索」をメインに、ロマンスカーの特急券購入、観光地の周遊券、提携交通機関のチケット購入や現地での利用もEMotだけで完結できます。
タクシーやシェアサイクルの組み合わせにも対応し、チケットをまとめて購入して同行者のEMotに配布する「チケット譲渡機能」なども利用可能。リアルタイム運行情報、混雑予測などの新機能追加も予定されています。
開発事例2:移動生活ナビアプリWESTER
「移動生活ナビアプリWESTER」は、JR西日本が開発・提供するiOS / Android向けMaaSアプリです。公共交通機関 + 徒歩を含んだ日本全国の経路検索のほか、現在地周辺の駅情報や、登録した「マイ駅」の運行情報・列車走行位置情報などのサービスにアクセス可能です。
J-WEST IDと連携させれば、アプリ内で列車予約サービス「e5489」も利用でき、ICOCA番号と連携したポイントサービス、クーポン情報の検索・登録などの機能も用意されています。
MaaSの意味・定義
なんとなくのイメージはつかめたけど、MaaSの全体像が把握できない方も多いでしょう。MaaSの共通基盤構築を目指す世界組織「MaaS Alliance」が結成されたのは2015年であり、MaaSは誕生して間もないまだまだ新しい概念です。参考までに、MaaS Allianceによる「MaaSの意味・定義」を紹介しておきます。
MaaSは、さまざまな交通手段や交通関連サービスを、オンデマンドで利用できる単一のモビリティサービスに統合するものです。単一のアプリと単一の支払いチャネルでモビリティを利用できるという付加価値を提供することで、ユーザー・社会・環境にとってのベストプラクティスになることを目指しています。
こうしたMaaSの概念は、アライアンスの結成と同年にフィンランドで設立された、MaaS Global社のCEO、サンポ・ヒエタネン氏のアイデアが元になっています。その最初のプロダクトが世界初のMaaSアプリ「Whim(ウィム)」です。
世界初のMaaSアプリ「Whim(ウィム)」
画像引用:Whim
Whimにはいくつかの定額プランが用意されており、「Whim Unlimited」であればフィンランドの首都ヘルシンキ内の公共交通機関を利用し放題。タクシー・レンタカー・シェアサイクルなども基本無料で利用でき、モビリティを横断した経路検索・予約・利用をアプリ内で完結できます。現在ではヘルシンキ以外にもベルギー、スイス、オーストリア、イギリス、東京でも利用可能です。
国土交通省が定義・意味するMaaS
MaaSとは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。
引用:国土交通省
MaaS Global社が短期間でWhimを開発し、世界的な成長を遂げている理由には、フィンランド政府の支援が挙げられます。当然、日本でもフィンランドに倣った取り組みが開始されており、国土交通省が主導する「日本版MaaSの推進」プロジェクトが立ち上げられました。
画像引用:国土交通省
MaaSのサービスレベルと日本の現状
MaaS Allianceと日本版MaaSの意味・定義はほぼ同じであり、個人のみならず社会・環境への貢献という目指すべき理想も同じです。もちろん、一足飛びに理想を実現できるわけではありません。スウェーデン・チャルマース大学の研究者によれば、統合の程度に応じ、MaaSは以下の4段階に分類できるとされています。
画像引用:国土交通省
世界初のMaaSアプリである「Whim」はレベル3に位置していると考えられ、欧州を中心にレベル2に達する各種MaaSアプリも登場しているといわれています。では、日本版MaaSアプリは、目指すべき理想のサービスレベルのどの辺りに位置しているのでしょうか。
目的地までの複合経路検索、チケットの予約・決済が可能なEMotのように、一部レベル3に達しているサービスも登場してはいます。しかし、予約・決済できるモビリティは限定されているのが実情。日本の現状は、いまだレベル1をクリアした段階なのだといえそうです。
オープンなMaaSデータ基盤「MaaS Japan」
このことからもわかるように、日本版MaaSアプリのサービスレベルを底上げしていくためには、MaaSアプリ開発の前提となる統合されたデータ基盤が必要です。その役割を期待されているのが、EMotのデータ基盤でもあり、開発元の小田急電鉄が運営するオープンなMaaSデータ基盤「MaaS Japan」といえるでしょう。
画像引用:MaaS Japan
小田急電鉄、遠州鉄道、秩父鉄道などの鉄道会社のほか、日本航空、日産e-シェアモビ、ジャパンタクシーなどが連携するMaaS Japanは、Whimの開発元であるMaaS Globalも参加。サードパーティが開発するMaaSアプリからの利用が前提とされているため、連携企業が増えていくにつれて、日本版MaaSアプリのサービスレベル向上に寄与できると考えられます。
MaaSアプリ開発に必要な技術
それでは、まだまだ手探りの状態だと言えるMaaSアプリ開発には、どのような技術が求められるのでしょうか。実際には、MaaSアプリだからといって開発に特別な技術が必要になるわけではありません。以下から簡単に解説していきましょう。
Webアプリ・モバイルアプリ開発の技術
MaaSアプリは「Webアプリ」であり、それをスマホ/タブレットなどのモバイルデバイスで利用するのが基本です。つまり、MaaSアプリ開発では最低限、Webアプリ開発・モバイルアプリ開発の技術が求められます。
モバイルアプリには、大きく「ネイティブアプリ」「ハイブリッドアプリ」「PWA(Progressive Web Apps)」の3種類があり、それぞれに開発手法は異なります。モバイルアプリにフロントエンドの役割を持たせる意味では、ハイブリッドアプリ / PWAも有力な候補ではありますが、現在の主流はネイティブアプリ。iOS / Androidアプリ開発の技術は必要になるでしょう。開発時は、OSアップデートへの対応が必須であったり、ストアの審査・手数料がかかることには留意しましょう。
アプリケーション開発の詳細は、下記記事をご参照ください。
関連記事:アプリケーション開発の流れ|アプリの種類・仕組み、開発に必要なものも一挙解説
プラットフォームの活用・連携
さまざまな交通機関・サービスと連携し、検索・予約・決済できるMaaSアプリを開発するには、プラットフォームとしてのデータ基盤、外部サービス・システムとの連携・活用が必要不可欠です。Web API / Rest APIといったシステム連携の技術はもちろん、サービス提供者との交渉 / 契約が欠かせません。
オープンMaaSデータ基盤である「MaaS Japan」が活用できるのは幸いなことですが、アプリの独自性を高めようとすればするほど、プラットフォーム連携が重要になります。MaaSプラットフォームでは、企業同士のデータ連携のために、前もってデータ形式をそろえる必要があります。
クラウド / モダンWebの技術
IT技術、特にWebに関する技術は日進月歩で進化しています。ユーザビリティに優れたMaaSアプリを開発するには、これをキャッチアップしたクラウドの技術、モダンWebの技術が必要です。
※モダン技術:元々サーバー側で行っていた処理動作の一部をブラウザ側に移行させてユーザーの操作性などを向上させる技術
具体的なモダンWeb技術としては、React / Vue / Angularなどのフレームワークで開発した「SPA(シングルページアプリケーション)」が挙げられます。画像の生成をフロントエンド側で処理するSPAは、通信待ちを最小化できることが特徴。Webアプリ・バックエンドのデプロイ(展開)にサーバレス環境を利用するなど、クラウドを有効活用する知識・技術も求められます。
AIによるパーソナライズ
画像引用:東京メトロ
MaaSアプリ開発にAIを活用したパーソナライズを取り入れようとする動きも見られます。例えば、東京メトロが取り組む大都市型MaaSのコンセプト「My!東京MaaS」では、エレベータールート / 雨に濡れないルート、現時点からの最短距離など、一人ひとりのユーザーにフォーカスした「パーソナライズド検索」を実装しています。
AI開発の詳細は、下記記事をご参照ください。
関連記事:AI開発とは?開発の手法・手順・プログラミング言語・フレームワークを含む基本を解説!
MaaSアプリ開発の将来と課題
誕生して間もないといえるMaaSアプリは、今後どのように進化していくのか。MaaSアプリ開発の将来と課題について触れておきましょう。
日本におけるモビリティの特殊性
本記事で紹介した「EMot」「My!東京MaaS」などのほかにも、特定の観光地や都市に特化したMaaSアプリが登場しつつあります。以下は、総合経営コンサルティング会社「株式会社リブ・コンサルティング」が公表した、マルチモーダルサービスカオスマップの2022年版です。
画像引用:LiB CONSULTING
EMotを含めた日本版MaaSアプリには観光系が多く、都市交通系に特化するMy!東京MaaSは、現時点で検索のみにとどまっているのが実情です。これは、都市部に多種多様なモビリティが集中する反面、観光地や地方ではモビリティの選択肢が少ないという日本の特殊性が関係するといえます。
多種多様なMaaSアプリが登場する?
これは、MaaS Japanというオープンデータ基盤自体は始動したものの、プラットフォームの統合が簡単ではないことを示唆しています。もちろん、プラットフォームの統合が進むことに伴い、サービスレベルの高い本来の意味でのMaaSアプリが期待できますが、その過程で多種多様なMaaSアプリも登場すると見られています。
例えば、石川県加賀市では過疎化にともなう公共交通機関の維持に向け、効率的な運行を実現するMaaSアプリ開発を実施しています。北海道上士幌町では、高齢者の利便性向上のためのMaaSプロジェクトを開始するなど、各地で実証実験が行われています。こうしたプロジェクトが実を結ぶ可能性は高いでしょう。
自動運転技術の進化がカギ
MaaSアプリ開発における喫緊の課題は「データ基盤の統合をいかに進めるか」ですが、将来的な課題に挙げられるのは「自動運転技術」だと考えられます。なぜなら、地方部のモビリティで課題になりがちな「公共交通機関の維持」を解決できる可能性があるのが自動運転技術だからです。
自動運転技術とMaaSアプリの相性が非常にいいと考えられることもポイント。自動運転技術が実用化されたときにこそ、MaaSアプリの真価が発揮されるのかもしれません。ただし、MaaSと自動運転に関する法律も整備していく必要はありそうです。
MaaSアプリ開発まとめ
MaaSアプリ開発に興味はあるが、詳しいことはよく分からないという方に向け、本記事では、MaaSの意味・定義やアプリ開発事例・必要な技術など、知っておきたいMaaSアプリ開発の基礎知識を解説しました。また、MaaSアプリの将来や開発の課題なども紹介してきました。
技術的には難しいことのないMaaSアプリ開発ではありますが、なによりも重要なのはMaaSの概念を理解すること、そしてモビリティに関する課題を解決に導くアイデアです。
※MaaSアプリの企画・開発を相談できる、優良なアプリ開発会社を紹介してほしいという方はシステム幹事にお問い合わせください。予算や目的などをヒアリングした上で、御社に最適なアプリ開発会社を選定します。相談料・紹介料はいっさいかかりません。
Q. MaaSとは何ですか?
MaaSとは、SaaS・PaaS・IaaSにならって命名された「サービスとしてのモビリティ」を指します。公共交通機関やレンタカーといった、さまざまな移動手段の検索・予約・決済をひとつのサービスに統合できるのが特徴です。
Q. MaaSアプリ開発のメリットは?
MaaSアプリ開発のメリットは「利便性の高い移動体験を利用者に提供できる」「さまざまな交通手段や交通関連サービスを、オンデマンドで利用できる」などです。詳細は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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