- 更新日 2024.01.11
- カテゴリー 業務システム
基幹システムのクラウド移行が加速する?メリット・デメリット、クラウドの活用法を解説【2024年最新版】
・これからは基幹システムをクラウドで運用すべき?
・基幹システムをクラウドで運用するにはどんな方法がある?
・既存の基幹システムをクラウドに移行する方法はある?
グループウェア・オンラインストレージなど、社内外のコミュニケーション・ファイル共有などにクラウドサービスを活用することは当たり前になりました。しかし、それでも基幹システムのクラウド化・クラウド移行には踏み切れない、そんな企業経営者の方であれば、上述したような悩み・疑問を感じていることでしょう。
そこで本記事では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を控えた今、基幹システムのクラウド化は加速していくのか?現在の状況やクラウド化のメリット・デメリットを紹介するとともに、基幹システムを構築・導入する際に知っておきたいクラウドの活用法も解説していきます。
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そもそも基幹システムとは?
そもそも基幹システムとは、企業経営に必要不可欠な基幹業務を担うシステムのこと。「人事」「財務会計」「販売」など、その業務が停止すると「経営活動がストップしてしまうほどの業務を管理するシステム」が基幹システムです。
一般的な企業における基幹システムは、以下のようなものが挙げられます。
・人事給与システム
・財務会計システム
・販売管理システム
・在庫管理システム
・生産管理システム
ただし、業種や企業個々のビジネスモデルによって、基幹システムに該当するシステムは異なります。
たとえば、商品を生産しない企業にとっては、生産管理システムは基幹システムとなり得ません。
基幹システムの詳細については、下記記事をご参照ください。
※関連記事:基幹システムとは?業務システムやERPとの違い・解決できる課題・導入ポイントを解説!
基幹システムのクラウド化の状況
クラウドファーストになっている
企業経営の根幹となる基幹システムは、これまでオンプレミス型(用意した自社サーバにパッケージソフトウェアをインストールして利用する形態)で運用されることが当たり前でした。機密情報漏えいなどのセキュリティ面、通信速度・処理能力などの運用面がその理由でしたが、現代ではいずれの課題も解消されています。
実際、政府情報システムに関するガイドラインでも、クラウド活用を優先する「クラウド・バイ・デフォルト原則」が明記されており、DXに向けたクラウドファーストの流れは基幹システムにも確実に及んでいるといえるでしょう。これから基幹システムを導入する企業はもちろん、基幹システムの更新を控えた企業もクラウド活用が第一の選択肢となるはずです。
※参考:政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針
クラウドサービスの利用状況
それでは、実際に基幹システムをクラウドで運用している企業はどの程度存在しているのでしょうか?2020年に実施された総務省の調査によると、なんらかの形でクラウドサービスを利用している企業は全体の約7割。過去5年間でクラウドサービスを利用する企業が約25%増加していることになります。
しかし、クラウドサービスの利用状況を見ると、情報系システムの割合が高い一方、基幹システムは全体的に低め。「人事給与」「財務会計」こそ40%近い利用率ですが、「プロジェクト管理」「生産・物流・店舗管理」などは10%前後にとどまっています。
逆にいえば、それだけ基幹システムのクラウド化・クラウド移行の余地があるということ。情報系システムでクラウドの有用性が浸透していけば、おのずと基幹システムのクラウド利用率も高くなっていくと考えられます。
基幹システムをクラウド化するメリット
徐々にではあるものの、基幹システムのクラウド化・クラウド移行が進んでいるのは、クラウドの活用にメリットを見出している企業が多いからにほかなりません。
ハードウェアの導入・メンテナンスが不要
国内外のデータセンターを活用するクラウドは、オンプレミス型基幹システムのようにサーバ・ストレージ・スイッチ・ネットワークなどのハードウェア導入を必要としません。そのため、メンテナンスやハードウェアのリプレイスも不要というメリットがあります。
つまり、基幹システムのクラウド化によって、初期費用の削減、保守リソースの削減が期待でき、ハードウェアの保管場所も必要なくなります。クラウドの活用は、基幹システムの導入ハードルを下げる、移行による保守負担の軽減という効果が得られるのです。
柔軟なシステム運用・BCP対策ができる
AWS / GCP / Azureなどのパブリッククラウドを活用することで、基幹システムの柔軟な運用が可能になるほか、万一の場合のBCP対策も同時に実現できます。
※BCP対策:自然災害などの緊急事態に直面しても企業が事業を継続または復旧するための対策
オンプレミス型の場合、自社で構築したサーバ・ネットワーク環境の変更は簡単ではありません。しかし、パブリッククラウドであれば、CPUリソースやストレージのキャパシティを比較的自在に変更可能。時間帯に応じてネットワークトラフィックを調整するなどの設定も簡単です。
また、自社内に設置するオンプレミス型は、災害時に被害が集中してしまうリスクがありますが、世界各国のデータセンターが利用できるクラウドならBCP対策にも有効。複数のデータセンターでバックアップしておけば、万一の場合もビジネスの継続が可能です。
セキュリティを担保できる
クラウドに懐疑的な方であれば、セキュリティ面に不安を感じているかもしれません。しかしある意味、クラウドを活用することによってセキュリティを担保できるメリットが得られます。
なぜなら、物理的なネットワーク・サーバのセキュリティ対策や、システムのアップデートなどの運用・保守を、クラウドのベンダーが責任を持ってくれるからです。VPN(Virtual Private Network)オプションでセキュリティを強化することも可能であり、SaaSならアプリケーション層のセキュリティもベンダーが担当してくれます。
※VPN:インターネットでデータをやり取りする際に情報漏えいなどのリスクから守るための技術
対するオンプレミス型は、外部ネットワークから遮断できるというセキュリティ上のメリットがあるものの、クラウドと同等のセキュリティ対策を施すにはコスト・人材などのリソースを投じて運用・保守体制を自社内で整える必要があります。
関連記事:【簡単】VPNとは?仕組みや種類を初心者向けにわかりやすく解説!
クラウド化にデメリットはある?
セキュリティ・運用など、従来のクラウドで挙げられることの多かった課題が解決した現在、オンプレミス型に比べて柔軟性・可用性に優れるクラウドにはデメリットが見当たらないといっても過言ではありません。
強いて挙げるのであれば、初期費用にばかり気を配るのではなく、運用も含めたトータルコストでクラウドの活用を判断する必要があるということでしょう。
たとえば、パブリッククラウドは「利用した分だけの課金」で運用コストを最適化できることが魅力ではあります。しかし、ニーズに応じてオプションを追加していけば、月々の利用料金が膨らんでしまいます。定期的にシステムのリプレイスが必要になるオンプレミス型の特徴も踏まえ、トータルコストでどちらが有利になるのかを見極めていくことが重要です。
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クラウドサービスの基本・種類・特徴
ここまでで、基幹システムを取り巻くクラウド環境の現状、クラウド化・クラウド移行のメリット・デメリットなどを解説してきました。しかし、クラウドには大きく「SaaS」「PaaS」「IaaS」という種類があり、それぞれで特徴も活用方法も異なります。
基幹システムのクラウド化を検討する際は、これらクラウドの基本を理解しておくことが重要。以下から簡単に解説していきます。
SaaS(Software as a Service)
SaaS(Software as a Service)とは、ベンダーがクラウド環境に構築したソフトウェア(アプリケーション)をサービスとして提供し、ユーザーがインターネット経由で利用する形態のクラウドソリューションです。
すでに完成しているソフトウェアを利用する形態のため、最短即日で利用開始できる、リーズナブルな初期費用・月額費用で利用できるなどの特徴があります。
ただし、カスタマイズに対応できるサービスが少ないため、ニーズによっては機能が不足する、逆に使わない機能があるなどが生じる可能性もあります。
PaaS(Platform as a Service)
PaaS(Platoform as a Service)とは、システムを構成する要素のうち、「ネットワーク・サーバなどのハードウェア」およびアプリケーションを構築するための「サーバOS」「ミドルウェア」をデータセンターで提供するクラウドソリューションです。
※ミドルウェア:アプリケーションとオペレーティングシステム(OS)の中間に入るソフトウェア
PaaSは、アプリケーションをインストール・構築するためのプラットフォームを提供するという意味であり、パッケージ製品などをインストールしてクラウドで活用するために最適のサービスです。
IaaS(Infrastructure as a Service)
IaaS(Infrastructure as a Service)とは、システムを構築するための土台となる「ネットワーク・サーバなどのハードウェア」をデータセンターで提供するクラウドソリューションです。
システムを構築するためのインフラストラクチャーを提供するという意味であり、SaaS製品もIaaSをベースに構築されています。
基幹システムをクラウド化する方法
基幹システムのクラウド化を実現するには、上述した「SaaS」「PaaS」「IaaS」いずれかのソリューションを、ニーズに応じて使い分ける必要があります。それでは、それぞれのソリューションはどのように使い分けていけばいいのか?考えられるいくつかのパターンを紹介しておきましょう。
SaaS型基幹システムを導入する
もっとも手軽かつ簡単にクラウド化を実現する方法は、ニーズに応じたSaaS型基幹システムを導入することです。
たとえば、在庫管理システムの「ZAICO」「ロジクラ」、販売管理システムの「Aladdin Cloud Solution」、人事システムの「POSITIVE on CLOUDiS」「SmartHR」などが、SaaS型基幹システムの代表例です。
ただし、上述したようにSaaS型は自社ニーズに応じたカスタマイズが困難。自社ニーズにもっとも適合するサービスを選定し、サービスに合わせて業務の標準化を推進するという方向性になるでしょう。
起業したばかりで自社業務の手順が固まっていない、属人的な業務手順を標準化したいといった企業におすすめです。
PaaSに基幹システムパッケージを構築
システム構築のコストを最適化しながら自社業務に合わせたクラウド基幹システムを導入したいという企業であれば、カスタマイズ対応の基幹システムパッケージをPaaS環境に構築するという方法があります。
販売管理・在庫管理システムの「Aladdin Office(アラジンオフィス)」、人事システムの「COMPANY」など、さまざまな企業規模に対応できる基幹システムパッケージを選べることも、PaaSを活用するメリットです。
IaaSに既存の基幹システムを移行
オンプレミス環境で稼働する既存基幹システムをクラウドに移行したい企業であれば、IaaS環境に既存基幹システムをそのまま移行する方法があります。IaaS環境への移行であれば、カスタマイズを施した基幹システムであっても問題なく移行可能です。
IaaSを活用することで、CPUリソースやストレージを柔軟に変更できる、ハードウェア保守の負担から解放されるメリットが得られます。ただし、近年ではオンプレミスと併用するハイブリッド型の活用が広がる傾向も。
両者のメリットを組み合わせることで、効果を最大化する方法も考えられるでしょう。
IaaSを活用して基幹システムを開発
自社業務に最適化された基幹システムを開発したいという企業であれば、IaaSを活用して基幹システムをクラウド化するという方法があります。ハードウェア・インフラへの投資を最小限にとどめられるため、オンプレミス基幹システムと比較した場合、トータルでの開発コスト削減も期待できます。
おすすめのマネージドサービスを紹介
サービスの選定に集中すればいいSaaSと異なり、PaaS / IaaSの活用には注意が必要。自社基幹システムに最適なプラットフォーム・インフラを整えるため、一定以上のITスキル・知識が必要とされるからです。特にシェアの大きいAWS(Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービス)は、組み合わせ可能なサービスが100種類以上存在するため、インフラ構築の経験がなければ活用が難しいかもしれません。
そんなときに頼りになるのが、パブリッククラウドの導入・運用・マイグレーションをサポートしてくれる「マネージドサービス」です。以下からマネージドサービスを提供する、おすすめの企業を紹介します。
※マネージドサービス:サーバーやネットワーク運用の管理代行するアウトソーシングサービス
NTTコムウェア株式会社:クラウドマイグレーションサービス
※画像引用:NTTコムウェア株式会社
「NTTコムウェア株式会社」は、東京都港区に本社を構え法人向けのITサービス・インフラサービスを提供するICT企業です。NTTグループの一員として通信インフラを支えてきた実績を持ち、IoT / RPA / AIソリューションなども提供。同社のクラウドソリューション「SmartCloud.Duo」を中心に、AWSやAzureなどのパブリッククラウドのマネージドサービスを展開しています。
同社の「クラウドマイグレーションサービス」は、基幹システムの効率的・機能的な更新に必要なソリューションをトータルに提供。アプリケーション評価・分析をもとにした的確なアセスメント、移行ツールを活用した迅速・確実な移行作業で、クラウドネイティブな環境構築をサポートしています。
SCSK株式会社:USiZE
※画像引用:SCSK株式会社
「USiZE」は、東京都江東区に本社を構えるITソリューション企業、SCSK株式会社が提供するマネージドサービスです。同社が提供するプライベートクラウドサービス「USiZEシェアードモデル」、AWS / Azureなどのパブリッククラウドソリューションを提供する「USiZEパブリックモデル」を軸にした幅広いラインナップを取り揃え、法人企業のクラウド活用をサポートしています。
たとえば「USiZEパブリックモデル(AWS)」では、基幹システムの構築支援から請求代行、運用までのトータルサポートを提供可能。アセスメントを含む移行サービス、異なるデータベースへの移行などのオプションサービスも豊富に用意されています。
株式会社スカイアーチネットワークス
※画像引用:株式会社スカイアーチネットワークス
「株式会社スカイアーチネットワークス」は、東京都港区・大阪市北区に拠点を構えるマネージドサービスプロバイダ(MSP)です。サーバの設計・構築・監視・管理から、バックアップ・セキュリティ管理、運用改善提案までの幅広いサービスを提供しており、AWS / Azure / Alibaba Cloudなどのクラウド運用代行も依頼可能です。
対応するパブリッククラウドへの移行サービスをフルマネージドで提供するのはもちろん、請求代行・運用・監視・保守も含めたマネージドサービスも依頼可能。AWSに関しては導入支援、環境構築を含めたフルサポートも可能です。
クラウドERPという選択肢もある
初期費用・運用コストを抑えながら、柔軟なシステム運用・BCP対策を実現できるクラウドは、基幹システムの移行先として大きなメリットがあることを理解できたのではないでしょうか。
一方、企業経営になくてはならない基幹システムは、人事給与システムや販売管理システムなどそれぞれが密接に連携してこそ効果を最大化できるのも事実です。そのためには、クラウド化を機に基幹システムを「クラウドERP」に切り替えるという選択肢も検討する価値があるでしょう。
※ERP:基幹システムとそれ以外の業務システムを統合した「唯一のデータベース」で情報を一元管理するシステム
たとえば、「Microsoft Dynamics 365」「ZAC」などがSaaSで手軽に導入できます。必要に応じて機能を拡張していきたい企業には「SAP Business One」「ORACLE NetSuite」「GRANDIT」などを活用する方法もあります。
クラウドERPについてはおすすめを比較している記事がありますので、下記をご参照ください。
※関連記事:基幹業務システムおすすめ11選比較|導入メリット・ERP選定のポイントも解説!
基幹システムクラウドまとめ
基幹システムのクラウド化を検討しているが、なかなか踏み切れないという方に向け、本記事では、基幹システムのクラウドの現況や将来的な展望、クラウド化のメリット・デメリットを紹介。また、基幹システムを構築・導入する際に知っておきたいクラウドの活用法も解説してきました。
クラウドとひとことにいっても種類や特徴はさまざま。当然、クラウド基幹システムを導入するのか、既存の基幹システムをクラウドに移行するのか、自社の目的・ニーズに応じて適切なクラウドサービスを活用していかなければなりません。
コンサルタントのご紹介
岩田
専任のコンサルタントが、
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初心者の方でも安心してご相談いただけます。
※基幹システムの開発を得意とする開発会社を探している方、パッケージやサービスの選び方がわからないという方は、システム幹事にご相談ください。
専任のアドバイザーが最適なツールや開発会社をご紹介します。相談料などは一切かかりませんので、お気軽にお問い合わせください。
Q. 基盤システムとは何ですか?
企業経営に必要不可欠な基幹業務を担うシステムのことです。「財務会計」「販売」など、その業務が停止すると「経営活動がストップしてしまうほどの業務を管理するシステム」を指しています。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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