- 更新日 2024.10.18
- カテゴリー システム開発
システム開発におけるWBSとは?プロジェクト管理の基礎を解説【2024年最新版】
プロジェクト進行に慣れていない企業担当者の方であれば、以下のような疑問があるのではないでしょうか。
- WBSとは何か
- WBSがどのような目的で作成されるのか?
- どのように活用されるのか?
WBSはシステム開発プロジェクトの成否を左右する重要な要素。プロジェクトを成功に導くためにもWBSをしっかり理解し、クライアントとしてプロジェクトに積極的に関わっていくことが重要です。
そこで本記事では、システム開発におけるWBSの目的や重要性、混同されることの多いガントチャートとの違いなど、知っておきたいWBSの基本を徹底解説します。また、WBSがどのように作られるのかも紹介していきます。
※システム開発会社を探している方は、システム幹事にご相談ください。専任のコンサルタントが最適なツールや開発会社をご紹介します。相談料などは一切かかりませんので、お気軽にお問い合わせください。
WBS(Work Breakdown Structure)とは
画像引用:Vector
WBSとは、システム開発の工程をタスクごとに細分化し、表にしたもの。文字通り「作業(Work)」を「分解(Breakdown)」して「構造化(Structure)」した構成図です。上図のように、工程ごとの担当者、工数、進捗率などをExcelを使って上のように一覧表にする場合が一般的。
たとえば、初めに最後まで計画を立ててから着手するウォーターフォール型システム開発では、成果物であるシステムが出来上がるまでに以下の工程が必要です。
- 企画
- 要求定義
- 要件定義
- 基本設計
- 詳細設計
- 開発・実装
- テスト
- 導入
※ウォーターフォール型システム開発についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください
関連記事:ウォーターフォール型システム開発とは?開発工程・メリット・アジャイル型との違いを解説!
それぞれの開発工程を分解していくと、より細かな複数の工程で成り立っていることがわかります。たとえば、基本設計は以下のような工程で成り立っています。
基本設計 |
1.システム設計 |
2.画面設計 |
|
3.帳票設計 |
|
4.バッチ設計 |
|
5.データベース設計 |
|
6.ファイル設計 |
|
7.外部インターフェース設計 |
基本設計を細分化したそれぞれの工程は、さらに複数の作業に細分化でき、それぞれの作業の結果としての「成果物」が作成されます。たとえば「4-2.画面設計」で作成される成果物(ドキュメント)には以下のようなものがあります。
基本設計 |
2.画面設計 |
2-1.画面レイアウト |
2-2.画面一覧 |
||
2-3.画面遷移図 |
||
2-4.画面入出力項目 |
||
2-5.画面アクション定義 |
このように、マイルストーン(中間目標)であるドキュメントを含め、成果物と紐付けながらシステム開発プロジェクトに必要な作業を構造化するものが「WBS」です。
※基本設計についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください
関連記事:システム開発の基本設計とは?その位置付け・重要性・発注者としての関わり方を解説!
WBSの作成は主にプロジェクトマネージャー
システム開発に限らず、プロジェクト管理の基礎となるWBSは開発会社の「PM(プロジェクトマネージャー)」が作成することが一般的です。
ただし、PMがシステム開発工程・作業のすべてを詳細まで理解しているとは限らないことも事実。この場合、情報粒度がバラついてしまう、現実的ではない工数を見積もってしまうなど、WBSの精度に問題が生じる可能性があります。
それぞれの作業担当者にWBSの作成を分担させるなど、対策を講じている開発会社も少なくありません。WBSの精度を高めるためにどのような工夫をしているのか?発注側として確認しておくことも重要です。
システム開発におけるWBSの重要性
WBSはシステム開発だけに適用される特別なものではありません。たとえば、家族旅行といった個人的なイベントなど、計画と行動がともなう日常的な「プロジェクト」にもWBSの作成は有効。ただし、経験と勘でも完遂できる家族旅行で、WBSを作ることはほとんどありません。
一方、技術の高度化・複雑化が進み、プロダクトのライフサイクルも短縮する傾向にある現代では、システム開発プロジェクトの失敗リスクは高まりつつあります。品質を担保したシステムを開発してタイムリーにリリースするには、経験や勘に頼らない根拠のある「プロジェクトマネジメント」が必要。プロジェクト管理の基礎となるWBSが重要なのはこのためです。
WBSとガントチャートの違い
WBSは、あくまでも成果物の完成に必要な作業を網羅した構成図のことです。開始日・完了日など、スケジュールをグラフで視覚化した工程表などが併記されている部分は「ガントチャート」であり、厳密にはWBSではありません。
ただし、併記される場合が多いことからもわかるように、WBSとガントチャートは相性が良いため、あわせて使うケースも多くあります。プロジェクトメンバーで認識・スケジュールを共有するためにも、WBSはガントチャートを含めて作成した方がいいでしょう。
WBSの目的
WBSはほとんどのプロジェクトで作成されるシステム開発に必須の構成図です。
では、なぜシステム開発にWBSが必須なのか?WBSがどのような目的で作成されるのか?簡単に解説していきましょう。
成果物(システム)の完成に必要な作業を明確化
No |
工程(タスク) |
担当 |
開始日 |
完了日 |
工数(h) |
進捗率 |
1 |
要件定義 (ヒアリング) |
A |
2021/8/1 |
2021/8/3 |
5 |
100% |
2 |
要件定義 (共有MTG) |
A |
2 |
80% |
||
3 |
要件定義 (最終決定) |
B |
2 |
0% |
システム開発プロジェクトでは、最終的な成果物(システム)を完成させるまでに、各工程でマイルストーン(中間目標)となるさまざまな成果物を制作する必要があります。こうしたシステム開発に必要な成果物と、それを完成させるために必要な作業を洗い出して明確化することがWBSを作成する目的の1つ。WBSを作成することで以下のようなメリットも得られます。
- 作業の漏れ・重複を見つけやすくなる
- 作業分担・担当者が明確になる
- 作業の優先順位が明確になる
プロジェクトの進行スケジュール策定・共有
WBSを作成するもうひとつの目的は、システム開発プロジェクトの進行スケジュールを策定し、関係者間で共有すること。WBSがあれば、必要な作業をだれが担当すべきか、どれを優先的に進めるべきかがわかるからです。
- 工数を見積もってスケジュールに落とし込む
- プロジェクト関係者との認識共有
このように、WBSがシステム開発プロジェクトを管理する基礎としての役割を果たしています。
※システム開発全体の流れ・進め方についておさらいしたい方は、こちらもあわせて参考にしてください。
システム開発依頼前にチェック!
中小企業向けシステム開発の進め方をまとめました。
無料でダウンロードする
WBSのメリット
工数がわかるため進捗管理がしやすい
ここまで説明してきた通り、作業ごとの進捗をひと目で確認できるため全体の進捗管理がしやすいことがメリットです。
WBSを作る過程で作業を細かく分けてあるため、作業ごとの進捗の確認がしやすくなります。遅れている作業が早めにわかれば、早めにフォローをいれるなどの対策も可能です。結果として、プロジェクト全体の進捗管理もしやすくなるでしょう。
作業の分担がしやすい
WBSを作成したことによって、作業が明確に分けられています。そのため、どのタスクに誰を割り当てるかを計画しやすくなります。また、トラブルが発生した際にも誰が担当している作業かを確認しやすい点もメリットでしょう。
そのほか、誰がどのタスクを担当しているかをひと目で確認できることから責任の所在が明確になり、担当者に責任感を持って作業をさせる効果にも期待できるでしょう。
プロジェクトの全体像が見やすい
WBSを作成していることから、プロジェクトに必要な作業内容や作業にかかる工数、担当者などがひと目でわかります。そのため、プロジェクト全体の状況を全体像として把握しやすくなるでしょう。
また、WBSを確認することで各作業の担当者が「自分が担当しているタスクはプロジェクトのどの工程の一部なのか」を認識できます。そのため、タスク間の連携意識の向上にも期待できるでしょう。
トラブルや抜け漏れの予防がしやすい
WBSを作成する際に各作業を細かく分解しているため、プロジェクトに必要な作業が抜けていた場合に発見できる場合があります。
また、プロジェクトの全体像を俯瞰できることから発生しそうなトラブルを事前に見つける効果にも期待できるでしょう。タスクを分けたことによってどちらの担当者が行うべきかわからなくなってしまう作業が発生しないようにWBSを作成することが大切です。
WBSの作り方
WBSは、ゴールに向けて誰が何をいつやるべきか?認識を擦り合わせ、システム開発に携わるプロジェクトメンバーで共有するために活用されます。発注社側がWBSを作成することはほぼありませんが、開発会社と積極的にコミュニケートしていくためにも、WBSがどのように作られるのかを知っておくことも重要。以下で簡単に解説していきましょう。
システム開発の成果物を明確にする
WBS作成の最初のステップは、システム開発プロジェクトで作成されるすべての成果物を洗い出して明確化すること。システム開発の目的は成果物を作ることであり、成果物は作業の結果として完成するものだからです。
ここでいう成果物とは、マイルストーン(中間目標)として作成される成果物も含めた、最終的なプログラムを完成させるまでに必要なものすべて。たとえば、システム全体を構成する「個別のプログラム」や、要件定義書としてまとめるために必要な「要件ごとの個別ドキュメント」などが挙げられるでしょう。
成果物の作成に必要な作業を洗い出す
WBS作成の次のステップは、成果物の作成に必要な作業を洗い出すこと。
作業を洗い出す際に注意しておくべきポイントとしては、最小の作業(タスク)が数時間から数日で完了するように分解すること。1つの作業の工数があまりにも多いようなら、作業を分割して考える必要もあります。
システム開発の流れに沿って構造化する
WBS作成の最終ステップは、成果物に紐付けて洗い出した作業を、システム開発の流れに沿って構造化すること。具体的には、前後関係を考慮しながら作業・成果物を時系列にあわせて分類していきます。
押さえておきたいポイントとしては、成果物を作成するために「材料」が必要であること。たとえば、プログラマーの設計図となる詳細設計書は、基本設計書を「材料」にして作成されますが、その逆はあり得ません。
とはいえ、構造化はそれほど難しいことではありません。特に、水が上流から下流に流れるように作業が行われる「ウォーターフォール型システム開発」なら、構造化に悩むこともないでしょう。
関連記事:システム開発の詳細設計とは?プロジェクトの位置付け・役割をわかりやすく解説!
システム開発を成功に導くWBSのポイント
プロジェクト管理の基礎として欠かすことのできないWBSではありますが、うまく活用しなければ、単なる工程表としての役割しか果たせない場合もあります。しっかりとプロジェクトマネジメントをしていくためには、ポイントを押さえてWBSを作成・活用していくことが大切です。主なポイントは以下の通り。
サンプル・テンプレートを活用する
WBSは、あくまでもプロジェクトを効果的に管理・進行させるためのツールです。作り込みに没頭するあまり時間を浪費してしまうなど、作成自体が目的になってしまっては本末転倒です。
一般的に、Excelで作成されることの多いWBSですが、サンプルやテンプレートを活用して「構造化」に集中し、より使いやすいものへとアップデートしていくことが肝心。ソフトウェア販売会社の「ベクター」が公開するテンプレートなど、インターネットを活用して効率化を図りましょう。
画像引用:Vector
WBS内の情報粒度を揃える
プロジェクトメンバーで共有・活用するWBSは、情報の粒度を揃えておくことが原則。思いつくまま作業を洗い出してしまうと、ある部分は詳細でも、別の部分はおおまかすぎるというWBSが出来上がってしまいます。
これでは、作業の漏れ・重複が発生してしまう、一部の工程が混乱してしまう場合も。成果物と紐付けて作業を洗い出す基本を守れば、こうした事態は避けられるでしょう。
1つの作業に1人の担当者を充てる
WBSで明確化した個別の作業には、それぞれ1人の担当者を指名することが基本です。なぜなら、複数名の担当者を指名してしまうと責任の所在が曖昧になってしまうからです。その結果として、い、1つの工程の作業遅れが重なって全体的なスケジュールに大きく影響してしまうこともあり得ます。
作業バッファは「CCPM」を採用する
WBSをガントチャートへと落とし込む際、個別の作業ごとにバッファ(作業の余裕)を持たせるケースが見られますが、これはおすすめできません。WBSを作成する側としては、成果物の手戻りを想定して余裕を持たせたつもりでも、実際の作業側は、成果物を作成するスケジュールに余裕があると認識しがちだからです。
画像引用:BeingManagement
プロジェクト全体の思わぬ遅延を防ぐためにも、全体でバッファを確保し、問題があった場合のみにバッファを消費する「CCPM」の採用がおすすめです。(CCPM:Critical Chain Project Managementの略。各タスクにバッファを設けず最小限の期限にし、バッファはプロジェクト全体で確保する手法)
シンプルな構造にする
複雑にしすぎると見た人が理解しづらくなってしまうため、シンプルな構造で作成することがポイントです。各作業の時系列があっていないとWBSを見た際に直感的にわからなくなってしまうので、時系列をあわせるように作成しましょう。
また、責任の所在を明確にするためにも各作業に対して担当者を1人にすると良いでしょう。複数の担当者を1つの作業に割り当ててしまうと、誰がどの作業を分担するのかわかりにくくなってしまいます。
WBSに使えるツール
マインドマップ
画像引用元:mindmeister
マインドマップとは、作業内容やアイデアなどの要素を書き出して、その周辺に関連する要素を書き出してつなげていく図のことです。
それぞれの要素や作業内容がひと目でわかるだけでなく、作業間の関連性が視覚的にわかることが大きなメリットです。そのため、作業の漏れを見つける効果にも期待ができます。
思いついた順に記載しつつ順番に細分化できるので、会議をしながら作成したいケースにも向いています。
さまざまなマインドマップツールが公開されているので、自社にあうものを選んで使用すると良いでしょう。
Microsoft Excel
画像引用元:Microsoft Excel
Excelは、Microsoft社が提供する表計算ソフトです。プロジェクト管理用のテンプレートが多数用意されており、WBSの作成にも使用可能です。作業期間や作業者の割り当てなどを視覚的にわかりやすくするため、それらを棒グラフで表したガントチャートを組み込んだテンプレートもあります。
普段からExcelを利用している方が作業する場合は、新しく操作を覚えなくてもWBSを作成できる点が大きなメリットでしょう。また、Excelを使用している会社なら、新たにツールを購入する費用がかからない点も魅力です。
簡単なWBSを作成する場合や、いちどWBSを作成して運用してみてから本格的に使用するか検討したい方におすすめです。
ガントチャート
画像引用元:Microsoft Excel
ガントチャートは、作業の割り当てや作業期間などを棒グラフなどで表した表です。作業の担当者や進捗をひと目で確認できることが特徴です。WBSでは、主に進捗管理の部分で利用されます。
縦軸に作業内容や担当者、横軸に時間を配することで、作業のスケジュールや進捗を視覚的にわかりやすくしています。そのため、特定の作業が終わらないと開始できない作業がある場合でもひと目で把握できるでしょう。
ガントチャートは、作成ツールが多数公開されているほか、Excelでもガントチャート用のテンプレートが公開されています。いくつか試してみて、自社にあうツールやテンプレートを使用すると良いでしょう。
Asana
画像引用元:Asana
Asanaは、プロジェクト管理に特化した管理プラットフォームです。
ガントチャートの作成やワークフローの管理、メッセージ機能、承認申請など、プロジェクト管理に必要な機能が多数搭載されています。
WBSの作成に必要な機能が一通り揃っているため、1つのツールでまとめてWBSを作成・管理したいケースでおすすめです。
Trello
画像引用元:Trello
Trelloは、直感的に使えることが特徴のタスク管理ツールです。
タスクをカード形式で表示する仕組みで、WBSの構造を視覚的に理解しやすいように工夫されています。各タスクのカードに担当者や期限を割り当てることも可能なので、プロジェクト管理にも利用可能です。
直感的な操作で利用できるツールを求めている方におすすめです。
【まとめ】システム開発のWBSについて紹介しました
WBSとは何か?システム開発プロジェクトを推進するにあたって、目的や重要性を把握しておきたい方に向け、知っておきたいWBSの基礎知識を作り方とともに解説してきました。
単なる工程表として見てしまいがちなWBSですが、だれが・いつ・どのような成果物を作るのか?メンバーで共有してプロジェクトを管理していくための重要なツール。システム開発プロジェクトを成功させるためにも、WBSをしっかり理解し、社内や開発会社とのコミュニケーションに積極的に活用していきましょう。
もし信頼できるシステム開発会社を探している方はシステム幹事にご相談ください。予算や目的から最適な開発会社を選定させていただきます。相談料などは一切かかりません。
専門のコンサルタントがあなたの要望を丁寧にヒアリングし、予算にあった最適な開発会社を選びます。
必ず開発会社に発注する必要はありません。システム開発の相場の情報から最適な会社選びまで無料でサポートします。お気軽にご相談ください。
コンサルタントのご紹介
岩田
専任のコンサルタントが、
お客様の予算と目的を丁寧にヒアリング。
最適な会社をピックアップ・ご紹介させていただきます!
初心者の方でも安心してご相談いただけます。
Q. システム開発におけるWBSとは何ですか?
システム開発におけるWBSとは、システム開発の工程をタスクごとに細分化し、期限と進捗率を表にしたものです。「作業のモレ・重複がなくなる」「業分担・担当者が明確になる」等の特徴があります。
Q. システム開発におけるWBSのメリットは?
システム開発におけるWBSのメリットは「必要な作業を明確化できる」「作業分担・担当者が明確になる」などです。詳細は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
このライターの記事一覧