- 更新日 2024.10.21
- カテゴリー システム開発
システム開発で炎上しないために発注者が注意すべきポイント【2024年最新版】
システム開発を依頼するなら、炎上は避けたいですよね。日経クロステックによると「システム開発は約半数が失敗に終わる」という調査結果もあり、失敗を防ぐには対策が必要です。システム幹事でも、「炎上しないためのシステム会社選び」についてご相談を多くいただきます。
- 何が原因で炎上が起きてしまうのか?
- 炎上プロジェクトを生まないためにはどうすればいいのか?
- 炎上が起きた時どう対処すればいいのか?
これらを発注側が事前に把握しておくことで、炎上するリスクを減らすことができます。さらに、適切な開発会社を選ぶことでリスクはより低くなります。
本記事では、実際にSIer企業にて炎上プロジェクトを経験した著者がシステム開発で炎上しないために注意すべきポイントを徹底解説。
実際の炎上事例から、炎上が起きる原因、万が一炎上してしまったときの対処法、システム開発会社の選び方まで解説します。
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システム開発の炎上・トラブルとは?
システム開発の「炎上」は、トラブルによりニュースやSNSで取り上げられたり、裁判沙汰になったりするほど、プロジェクトが崩壊することを指します。
プロジェクトマネジメントでは、「QCD」という考え方があります。QCDは、品質(Quality)・費用(Cost)・納期(Delivery)の3つの頭文字を取った言葉です。炎上が起こるのは、これらのどれか、または複数が管理できなかったことにより発生するケースに集約されます。
まずは、QCDが管理できていなかったことで起きたトラブル事例をご紹介します。
トラブル事例①品質管理を怠った例
本番前の最終テストで不具合が多発する
→納期ギリギリに不具合対応や追加テストが必要になる
まずは、開発会社側の品質管理の不足により、不具合が多発したり、想定していた機能が動かない例です。
システムはテストによって品質が担保されますが、テストの実施やバグ密度の管理を怠ると、品質が低いシステムができてしまいます。
不具合対応と追加テストが必要になり、見込んでいなかったテスト工数がかかります。
トラブル事例②予算管理を怠った例
予算の見積もりが甘く追加費用が発生する
→利益の損失が出る
予算の見積もりが甘く、追加費用が発生する例です。
要件定義(開発するシステムに必要な機能などを明確にする作業)の段階でかかる費用の想定が甘いと、サーバなどの物品購入費用や調達費用、マージンなどが見積もりから漏れてしまいます。
結果的に、思いもよらない費用がかかり利益の損失が発生します。
関連記事:システム開発の要件定義とは?受託開発における重要性や進め方を解説!
トラブル事例③スケジュール管理を怠った例
機能実装の前後関係を見誤りスケジュールが押す
→無理のあるスケジュールになり残業や休日出勤が多発する
スケジュール管理を怠り、無理のあるスケジュールで開発が進む例です。
一般的にはWBSという構成図を用いて、「どんな機能を」、「誰が」、「いつからいつまでに」開発するかを明確化します。
多いのは、機能実装の前後関係を考慮せずにスケジュールを組んでしまうケースです。同時に開発できない機能を並行して着手するスケジュールになっていると、想定通りに開発が進みません。
さらに、余裕のないスケジュールが組まれていると取り戻すのが難しくなり、現場では残業や休日出勤でカバーすることになります。
関連記事:システム開発におけるWBSとは?プロジェクト管理の基礎を解説!
QCDが雪崩式に崩壊して炎上が起こる
ここまで品質管理・予算管理・スケジュール管理を怠ったことによる炎上事例をご紹介しましたが、実際は雪崩式に起こって炎上へとつながることがほとんどです。
たとえば、以下のような流れで炎上・トラブルは起こります。
1.見積もり外の追加作業や仕様変更で進捗が遅れる
2.納期に間に合わせるために増員する
3.教育やスケジュールの組み直しに時間がかかる
4.無理に間に合わせようとして品質が落ちる
5.不具合が多発して修正や追加テストが必要になる
最終的に、QCDすべてが崩れてしまいます。この頃には現場では残業や休日出勤が多発し、社員が鬱になることも。このようなプロジェクトはデスマーチと呼ばれるようになり、残念ながらよい結果にはならないでしょう。
受託側の原因で炎上・トラブルが起きる理由
受託側の炎上につながる原因を理解しておくことで、トラブル防止につながります。
開発会社を選ぶとき、開発を進めていくときは下記に当てはまっていないかチェックしましょう。
プロジェクトメンバーのスキル不足
プロジェクトメンバーの能力が不足していることで、不具合が多発したり、スケジュール通りに進まないことがあります。特にシステム開発に関わる比重が大きいエンジニアやプログラマーなどの開発技術は重要です。
メンバー自身に問題があり、技術力の向上や報連相を怠って問題になるケースと、初心者にも関わらず場当たり的に増員されて技術が追いつかないケースの両方があります。
プロジェクトマネージャーの能力不足
多少メンバーに問題があったとしても、プロジェクトマネージャーがマネジメントをしっかり行えば炎上を防げる可能性は高まります。
しかし、プロジェクトマネージャーの能力が不足していると、依頼側からの無理な要求をそのまま受け入れてしまったり、進捗状況が把握できておらず立て直しができなかったりして、炎上へと発展してしまいます。
余裕のないスケジュール・進捗管理
余裕のないスケジュールで開発を進めると、品質が落ちたり、追加増員が必要になりコストがかさんでしまいます。
要件定義時の見積もりが甘いと、作業範囲の分担や納期が不適切な設定になります。また、人手不足や無理のある納期設定、予算不足などもスケジュールが崩れる原因となります。
発注側とのコミュニケーション不足
発注側とのコミュニケーション不足により、スムーズに開発が進まないことも多いです。
たとえば、どのようなシステムを作りたいのか仕様のすり合わせができていないと、未確定要素が多くなり開発スケジュールに支障をきたします。また、発注側が依頼した見積もり範囲外の作業を受託側がそのまま受け入れてしまい、無理のあるスケジュールになることもあります。
発注側の原因で炎上・トラブルが起きる理由
受託側だけでなく、発注側が原因で炎上・トラブルにつながることもあります。
他にも炎上になり得る原因はありますが、下記の5点は特に気をつけましょう。
仕様が明確になっていない
どのようなシステムを作りたいのかが明確になっていないと、受託側の開発が進まない原因になります。要件定義や設計が後ろ倒しになることで、後工程にしわ寄せがきてしまうからです。
システムに求める仕様は明確にして受託側に伝えること、そして、仕様の中でも優先順位をつけておくことが大切です。
過剰な要求をする
必要以上に打ち合わせを要求したり、資料を要求することも開発を妨げる原因になります。受託側は打ち合わせや資料作成に時間を取られてしまい、開発にかけられる時間が減ってしまいます。
また、納期の変更を一切認めない、タイトすぎるスケジュールを要求するなども避けましょう。状況によっては納期の変更や打ち合わせの削減を認めることも必要です。
非現実的な低予算を飲ませてしまう
相場に比べて極端に低い予算で進めるのは危険です。受託側は少ない人員で無理に開発を進めようとするため、結果的に品質が落ちて、炎上につながる可能性があります。
また、そもそも安すぎる見積もりを出してくる会社は、技術力が低いなど安いなりの理由がある可能性もあるので注意しましょう。
仕様変更を繰り返す
一般的に多少の仕様変更は発生しますが、何度も変更を繰り返すことは避けましょう。開発側に大きな負担をかけてしまい、納期に間に合わなくなったり、品質が落ちたりする原因になります。
仕様の検討は慎重に行い、なるべく変更が発生しないように配慮しましょう。
開発をすべて丸投げする
仕様が決定したからといって、そのあとの開発をすべて丸投げするのは考えものです。順調に進んでいると思っていたら、ふたを開けてみればまったく想定通りに進んでいないこともあり得ます。
定例会議を設定して都度進捗を確認したりと、定期的にコミュニケーションを取って進捗を確認しましょう。このとき、問題があっても隠そうとする担当者もいます。少しでも疑問に思ったら積極的に質問して、不明点がないようにしましょう。
炎上しないためのシステム開発会社の選び方
プロジェクトを炎上させないためには、適切なシステム開発会社選びも大切です。
炎上しないシステム開発会社のポイントを紹介します。
自社開発の割合が高い
クオリティ重視なら、自社開発の割合が高い開発会社に依頼するのがおすすめです。
システム開発の業界は、元請け、二次請け、三次請け…と多重下請け構造になっており、多数の開発会社がこの構造内に含まれています。
多重下請けの上位の会社は、中間マージンが発生して費用が高く、対応スピードが遅い傾向にあるのでおすすめできません。
自社開発をしているか見極めるには、直接担当者に「下請けに出すことはあるか」聞くのが早いです。不安な場合は契約締結時に下請けに出すことを禁止する条項を設けるのもよいでしょう。
企業の業績が安定している
企業の業績が安定しているかも重要なポイントです。
保守や運用も含めて依頼するなら、10年程度の長い付き合いが想定されます。万が一開発会社が潰れてしまうと大きな影響を受けるため、業績が安定している会社を選ぶことをおすすめします。
企業の業績は、会社四季報やホームページのIR情報などから確認することができます。
関連記事:システム運用とは?開発との関係・保守との違い・重要性・作業内容を解説!
開発実績が豊富
開発実績や経験の豊富さも確認しましょう。
開発実績はホームページや打ち合わせ時のヒアリングから、経験の豊富さは設立年数からも予想することができます。また、10年、20年と同じ会社と取引をしているようであれば、歴史と実績があると考えられるでしょう。
加えて、依頼したい領域での実績があるかどうかも重要です。同種の開発実績が豊富な会社を選ぶのが理想です。
コミュニケーションが円滑に取れる
システム開発において、コミュニケーションが円滑に取れるかどうかは非常に重要です。
最初に問い合わせたときの窓口ではなく、開発担当者やプロジェクトマネージャーと直に打ち合わせをして見極めることをおすすめします。
質問に対して的確な回答が返ってくるか、対応のスピードが早いか、要望を正確に理解してくれるかなどを確認しましょう。
相見積もりを行い比較検討する
膨大な数のシステム開発会社から、希望に合った会社を選ぶのは至難の業です。複数社から見積もりをもらって比較検討しましょう。
システム開発会社選びに迷っている方は、システム幹事にご相談ください。専門のコンサルタントがあなたの要望を丁寧にヒアリングし、予算にあった最適な開発会社を選びます。
要件を明確にしてからご提案するため、紹介は2~4社にとどめています。そのため、厳選された会社の中から効率的に比較検討していただけます。
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炎上・トラブルが起きた場合の開発会社への対処方法
事前に注意しても、炎上が起きてしまう場合はあります。ここでは実際に炎上が起きてしまった場合の対処方法を説明します。
受託側の対応が必要なのはもちろんですが、発注側も理解して協力することが大切です。
基本的な5つのステップを紹介します。
ステップ①早期の原因究明
まずは、早期に原因究明を行うことが大切です。
何が原因でスケジュールが遅れているのか、あるいは不具合が多発しているのかなどをヒアリングしましょう。分析を見誤らないよう、技術力の高いエンジニアやプロジェクトマネージャーに確認するのがポイントです。
ただし、発注側が遅延や不具合の説明を求めすぎるのはプロジェクトを妨げる原因にもなり得ます。システム開発の進行を最優先させることを意識しましょう。
ステップ②タスクの洗い出し
課題を明確化して、立て直すためのタスクの洗い出しを行います。
・予算の見直し
・不具合対応
・追加テストの実施
など、立て直すために必要なタスクを把握しましょう。
ステップ③残作業の優先順位を決める
洗い出したタスクの中で、優先順位を決めます。
発注側は、状況によっては優先順位の低い機能は後追いでのリリースを許可するといった対応も必要です。また、ドキュメントの簡略化、定例会議を減らすなども検討して、開発の進行が優先できるように調整しましょう。
ステップ④人的リソースの確保
優先順位が決まったら、人的リソースを確保します。
既存メンバーの稼働時間を増やすことで対応しようとする会社もありますが、現実的ではありません。また、技術不足の新規メンバーを増やしても教育コストがかかるだけです。
適切なメンバーを配置してもらえているか確認しましょう。
ステップ⑤スケジュールの引き直し
最後に、スケジュールの引き直しを行います。
優先順位の高い順に具体的な対応スケジュールを立てます。このとき、無謀な計画になっていないか、発注側と受託側で認識に齟齬がないか確認することも大切です。
【まとめ】システム開発で炎上しないために適切な会社選びを
システム開発の炎上は、QCDが管理できていないことから始まり、雪崩式に問題が膨らんでいくケースがほとんどです。炎上を防ぐには、あらかじめ原因を把握して対策しておくことが大切です。対処方法を知っておけば、万が一炎上が起こったときにも慌てずに対応することができます。
不安がある場合は、会社選びをプロに任せるのも手です。
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Q. システム開発の炎上案件には何がありますか?
システム開発における炎上案件の特徴として「本番前の最終テストで不具合が多発する」「予算の見積もりが甘く追加費用が発生する」等が挙げられます。詳しい内容は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いた人
七瀬 ユウ
専門分野: Webライティング
新卒で大手Slerに入社し、基幹システムの開発・プロジェクトマネジメント業務に従事。転職後、WEB広告企業でセールスライターの経験を経て、現在はフリーランスWEBライターとして活動中。「読者目線で分かりやすい記事を届ける」をモットーに執筆します。
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