- 更新日 2023.10.25
- カテゴリー システム開発
MVPとは?システム開発に応用するメリットや実践方法を解説【2024年最新版】
スタートアップ立ち上げ、新規事業立ち上げにあたって、サービス・システム開発を検討しているなら「MVP」「リーン・スタートアップ」という言葉を耳にすることがあるはず。そんな方であれば、以下のような疑問を感じているでしょう。
・MVP(Minimum Viable Product)とはなにか?
・MVPの目的は?
・システム開発にMVPを応用するメリットは?
・MVPの具体的な実践プロセスは?
そこで本記事では、リーン・スタートアップとの関係や目的、システム開発に応用するメリット・実践プロセスなど、知っておきたいMVPの基礎知識を徹底解説!MVPを成功させるヒントとなるポイントも紹介していきます。
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MVP(Minimum Viable Product)とは
MVP(Minimum Viable Product)とは、その名の通り「実用最小限のプロダクト(製品・サービス)」のこと、あるいはMVPを使ったマーケティングアプローチ・ビジネスアプローチのこと。一般的には、顧客に価値を提供でき、利益を生み出せる最小限のプロダクトをMVPと呼びます。
MVPという言葉・概念は、SyncDev社の共同創業者 / 代表であるFrank Robinson氏が2001年に提唱したものです。「プロダクト開発と顧客開発(開拓)を同時進行で進めた結果」MVPの概念が生まれたとFrank氏は話しており、こうしたやり方を「Synchronous Development(同期開発)」と定義付けています。
参考:What is a Minimum Viable Product (MVP)? | Productboard
MVPとリーン・スタートアップの関係
MVPと同時に使われることの多い言葉に「リーン・スタートアップ」があります。リーン・スタートアップとは、事業の見通しが不透明なスタートアップが生き残るためにはどうすべきかを、できる限り少ない予算・人材でプロダクトを作り、顧客の反応を確認しながら成長していくことを提唱した「ムダを省いたビジネスモデル」のこと。リーン(Lean)には「細い」「脂肪のない」などの意味があります。
2008年に、起業家 / 学者のSteve Blank氏と、プロダクトデザインの権威Eric Ries氏によって提唱されました。リーン・スタートアップは、2011年の書籍化によって世界中に広まり、そのなかでリーン・スタートアップのコアとして紹介されたのが「MVP」です。
ビジネスモデルと方法論という違いはあるものの、ムダを省いた「リーン・スタートアップ」を実践するためには、実用最小限のプロダクトで顧客の反応を見ながら成長させていく「MVP」が欠かせないという関係性が成り立ちます。
MVPの目的は仮説検証
リーン・スタートアップは、スタートアップにありがちな経営上のリスクを軽減するビジネスモデルではあります。しかし、その根幹を成すMVPの目的は、最小限のリソース投入でプロダクトを作ることではありません。
「アイデアは市場に受け入れられるのか?」という仮説をもとにプロダクトを開発・市場に投入し、集まった反応をもとに仮説を検証することこそがMVPの真の目的です。つまり、MVPには「仮説を検証するのに充分なフィードバックを得られること」が求められます。
MVPはどんなプロダクトなのか?
それでは、どのようなプロダクトがMVPとしての役割を果たせるのでしょうか?Frank Robinson氏は、MVPについて以下のように語っています。
MVPは、あなたの会社とあなたの顧客にとって適切なサイズの製品であるべきです。採用され、満足され、販売されるために充分でありながら、肥大化し、リスクを伴うほど大きくないプロダクトだと考えればいいでしょう。技術的には、最大のROIをリスクで割ったようなものです。
MVPは、すべての顧客からの機能要求を集約するのではなく、収益と関連性の高い顧客の意見をもとに主要機能を決定するべきです。
つまり、MVPは想定するプロダクトの一部を表現するものではありません。完全ではなくても、想定するプロダクトの全体像がわかるものでなくてはなりません。仮説を検証するために必要な機能・不要な機能を見極めることが、MVPを開発する際の重要な要素となります。
画像出典:Minimum Viable Product (MVP) and Design - Balancing Risk to Gain Reward
RED Digital Cinemaの事例
画像引用:RED Digital Cinema
MVPをビジネスに応用した成功例は多数あります。本記事では「Digital Still and Motion Camera(DSMC)」をコンセプトに、ハリウッドを含む映画業界で革命を起こしたスタートアップ企業「RED Digital Cinema」の事例を紹介しておきましょう。
RED Digital Cinemaはデジタル・ビデオカメラの開発会社。設立された2005年当時、デジタル映像技術は発展途上の段階で、映画で活用できるクオリティのデジタルカメラは皆無だといってもいい状況でした。そこに登場したのが、ひとつの動画ファイルではなく「フィルムカメラのように1コマずつ連続して撮影するDSMC」というコンセプトを持ったシネマカメラ「RED One」です。
2006年には将来的な技術革新も含め、アップグレード可能なRED Oneロードマップを発表すると同時にプレオーダー(購入者がチケットを先行予約できるサービス)も開始。2007年に販売開始されるや、スティーブン・ソダーバーグ監督の長編映画に採用されるほどの人気を博したのです。
以降も、より高性能なCMOSセンサーの開発を含めたアップグレードが繰り返され、映画業界でのブランドを確立することに成功しています。
システム開発にMVPを応用するメリット
RED Digital Cinemaの事例を紹介しましたが、MVPのプロダクトには物理的な製品以外にデジタルサービスも含まれます。むしろ、デジタルサービス・システム開発へのMVP応用は、MVPの活用によって得られるすべてのメリットを享受できるといえるでしょう。
素早く仮説を検証できる
顧客に価値を提供できる最小限のプロダクトであるMVPは、短い開発期間で市場に投入して、いち早く顧客のフィードバックを得られます。そのため、本来の目的である「アイデアは市場に受け入れられるのか?」という仮説を素早く検証できるメリットがあるのです。検証の結果、軌道修正の必要があってもコンパクトなMVPなら比較的対応も容易です。
より高品質なMVPを作成するためのフレームワークであるMVPキャンバスを使うと、MVPに搭載する必要がある機能や検証で必要なデータを整理できます。すると、より説得力のある仮説が生まれやすくなります。
コスト・リソースが最適化できる
必要最小限の機能に絞られたMVPは、リリース・改善の期間を短縮できます。仮に、リリース後の検証で仮説が間違っていたため、プロジェクトを中止することになった場合でも、MVPならダメージを最小限にとどめられるでしょう。最初から完成系のプロダクトを市場に投入していたのではこうはいきません。
顧客ニーズを把握しやすい
必要最小限でいながらプロダクトの全体像が網羅されたMVPは、顧客のニーズを把握して改善に役立てやすいです。一部機能にフォーカスするよりも、完成系をイメージできるMVPなら、より有益なフィードバックが得られるからです。フィードバックを反映させた改善サイクルを繰り返すことによって、顧客ニーズへの理解を早めることもできます。
技術の発展や顧客ニーズの変化が早いファッション系・Webマーケティング系の市場には、とくにMVPのメリットが発揮されるといえます。
市場での優位性・早期の収益化が可能
ターゲットとなる市場に素早くMVPを投入することで、先駆者としての市場優位性を築けると期待できます。プロダクトが完成してから市場に投入していたのでは、似たアイデアを温めている競合他社に先を越されてしまうことも考えられます。プロダクト投入までの期間が長期化することで、アイデアそのものが陳腐化してしまう可能性もあるでしょう。
少なからず「利益を生み出せる」プロダクトであるMVPは、デジタルサービス・システム開発プロジェクトの早期収益化が期待できます。収益が確保できれば、その後のMVP改善サイクルもスムースに進められます。
※MVPのメリットまで理解できても自社で行うのが不安な方は、システム幹事にご相談ください。専任のアドバイザーが最適な開発会社をご紹介します。相談料などは一切かかりませんので、お気軽にお問い合わせください。
MVPの開発・実践5ステップ
それでは、MVPはどのように開発・実践していけばいいのか?世界的なスタートアップアクセラレーター「Founder Institute」のメンター、Mark Geene氏によるMVP開発ステップをもとに、具体的な開発・実践ステップを紹介していきましょう。
ステップ1:課題の明確化・定量化
MVPを作るための最初のステップは「解決を目指している課題」を明確にすること。また、課題の解決を求める人がどのくらいいるか「解決を目指す課題の大きさ」を定量化することです。プロダクトのアイデアには、必ず発案者の問題・課題意識があるとMark氏は語っています。課題意識を明確にすることで、システム・サービス・プロダクトを通じてアイデアの価値を容易に伝えられるようになるわけです。
課題の大きさを定量化することは、プロダクトを形にする価値のある市場規模を把握することにも役立ちます。たとえば、RED Digital Cinema社の「DSMC」を安価に提供するというコンセプトは、映画制作に携わるすべての方の課題であり、アイデア自体は存在してはいたものの「誰も実現していなかった」のです。
可能であれば、実際の想定ユーザーに近い人に、感じている課題について詳しく質問するといいでしょう。より具体的な課題が浮き彫りになります。
ステップ2:仮説を立てる
具体的には「プロダクトが課題をどのように解決するのか?」「既存製品と比べて自社プロダクトがどのような価値を与えられるのか?」を軸に、MVPを評価・検証するのに充分な仮説を用意します。仮説を立てる際は、社内の別部署の者でも理解できる内容にまで明確にしましょう。曖昧な仮説だと、仮説が立証されてもそれが合っているかいなかの判断すらできません。
ステップ3:MVPを作る
課題・市場規模・仮説をもとに実際のMVPを開発します。重要なことは、MVPが備えるべき最小限の機能をどのように選定・実装するのか?ということです。
Mark氏が推奨している方法は、プロダクトを構成するそれぞれの機能に対して、ユーザーストーリーを書くこと。ユーザーストーリーとは、ユーザーの立場から「誰が・どんな目的で・何をしたいのか」を明確にすることであり、アジャイル開発では要件定義の代わりに使われる概念です。
書き上げたユーザーストーリーを一つひとつチェックし、その機能が目的・検証に必要なのか?課題解決やユーザーにとって必須なのか?を軸に、機能を選定していきます。
MVPの初期ターゲットはアーリー・アダプター
最初に市場に投入されるMVPは、顧客に価値を提供できるものではあっても、完全なプロダクトではありません。つまり、MVPが目指すべき初期ターゲットは、想定している市場の一部を形成する「アーリー・アダプター層(Early Adopters)」です。
アーリー・アダプターとは、プロダクト・サービスを早い段階で導入してくれる顧客層のこと。流行に敏感で、自ら情報収集する特徴を持っています。「オピニオンリーダー」と呼ばれることもあるアーリー・アダプターは、「マジョリティー層(追随して購入する顧客層)」に大きな影響を与える存在です。
ターゲットは広げすぎないようにしましょう。広げすぎると機能が多くなってしまい、店舗のよい検証がしづらくなります。
ステップ4:仮説検証する
顧客からのフィードバックをもとに、ステップ2で立てた仮説を検証します。仮説を適切に検証するためにも、ユーザーへの質問事項はできる限り「定量的」に答えられるものを用意しましょう。
ステップ5:繰り返す / 変更する
仮説検証の結果を踏まえ、改善を繰り返していくか、方向性を変更するかを決定・実行します。
この仮説検証・改善・変更というプロセスで重要な役割を果たすのも「アーリー・アダプター層」です。Mark氏は「アーリー・アダプターの声は、開発者とユーザーの間のギャップを埋め、プロダクトが課題解決に役立つかどうかを教えてくれる」「アーリー・アダプターのニーズにフォーカスしましょう」と語っています。
MVPのアプローチ方法
ここまでで、実際のMVPを開発・実践する方法をステップごとに紹介してきましたが、実は、MVPを活用して市場にアプローチする方法はこれだけではありません。どのようなサービス・プロダクト・システムを市場に投入したいのかに応じて、アプローチ方法を使い分けていくといいでしょう。以下から簡単に解説していきます。
プロトタイプ
プロトタイプ(Prototype)とは、動作・機能を検証できる最小限の規模で作られる試作品、ソフトウェアのこと。実際に動作するのがプロトタイプの特徴であり、実際のMVPを開発して市場に投入する手法は、まさにプロトタイプのアプローチ方法だといえます。
一般的にMVPを作る条件として「2か月以内に開発できるものであること」が挙げられます。この範囲内で開発できるMVPであれば、プロトタイプの採用がもっとも合理的だと考えられます。
Webサイト / モックアップ
モックアップ(Mock-Up)とは、完成品をイメージできる実物大の模型のこと。プロトタイプとは異なり、実際に動作しないのがモックアップの特徴。たとえば、システム・サービスのフロントエンド(ユーザーの操作画面)をWebサイトに実装し、ユーザーに使ってもらうというMVPのアプローチ方法もあります。
実際にシステム自体は実装されていないため、裏でエンジニアが操作して操作の結果を返しており、その様子から「オズの魔法使い」と呼ばれることもあるようです。MVPを作る確証が持てない、充分な市場規模があるのかわからない、といった場合に利用できるアプローチ手法です。
ビデオ
サービス・プロダクト・システムの紹介動画・デモ動画を制作して、Webページで公開するというMVPのアプローチ方法もあります。「スモークテスト」と呼ばれることもあり、プロダクトにどのくらいの需要があるのかのみを計測するアプローチ手法だといえるでしょう。
今となっては、誰もが知るオンラインストレージサービスに成長した「Dropbox」も、サービスリリース時にビデオを活用していました。
プリオーダー
Webサイトやビデオなどと併用して、事前予約を受け付けるMVPのアプローチ手法がプリオーダー(Pre Order)です。RED Digital Cinemaの「RED One」でもプリオーダーのアプローチ手法が採用されています。どちらかというとハードウェア製品としてのプロダクトにフィットするといえるかもしれません。
MVPを成功させるポイント
最後に、MVPを活用したサービス・プロダクト・システムや、ビジネス自体を成功させるためのヒントとなるポイントを紹介しておきましょう。
フィードバックを取り入れ過ぎない
MVPの目的は「アイデアは市場に受け入れられるのか?」という仮説を検証することですが、最終的な目標は「市場で存在感を示せるプロダクトに成長させる」ことです。当然、アーリー・アダプター層をはじめとした顧客の声には慎重に耳を傾けるべきですが、改善サイクルにフィードバックを取り入れすぎないことも重要です。フィードバックを取り入れすぎると、解決すべき課題が明確だったはずの当初のアイデアがぼやけてしまい、持続的なプロダクトの成長を阻害してしまうことになりかねないからです。
Mark氏も「間違っても、声の大きい少数ユーザーの意見に影響されないでください。こうしたユーザーはプロダクトに不必要な意味のない機能を要求しているだけです」と語っています。そのため、プロダクトのコンセプトは最初の立案時にぶれないよう固めておきましょう。
MVPの継続開発にはアジャイル型がフィット
顧客に価値を提供でき、利益を生み出せる最小限のデジタルサービス・システム(MVP)を作り、フィードバックに耳を傾けながら改善・修正していくためには、アジャイル型システム開発モデルがフィットするでしょう。アジャイル型とは、システム全体を細かい機能に分割し、優先度の高い機能から構築・リリースを繰り返していくシステム開発手法のこと。機能ごとに開発・リリースを繰り返すため、厳密にはMVPの考え方とやや異なりますが、ユーザーストーリーの作成や、アジャイル(俊敏な)な開発体制など、共通している・応用できるポイントは少なくありません。
システムMVPまとめ
MVPとはなにか?システム開発に応用できるのか?知りたい方に向け、本記事では、リーン・スタートアップとの関係や目的、システム開発に応用するメリット・実践プロセスなどを含む、知っておきたいMVPの基礎知識を解説してきました。
グローバル化によって市場競争が激化し、プロダクトのライフサイクルが短縮化する傾向にある現代では、いかに素早くアイデアを具現化して、市場優位性と収益化を確保するかが、すべての企業にとっての命題。MVPは、そんな企業の命題を実現できる可能性のある考え方だといえるでしょう。
※MVP作成を相談できる優秀なシステム開発会社を探している方は、システム幹事にご相談ください。専任のアドバイザーが最適な会社をご紹介します。相談料などは一切かかりませんので、お気軽にお問い合わせください。
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岩田
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Q. MVPとは何ですか?
MVPとは「Minimum Viable Product」の略で、日本語だと「実用最小限のプロダクト(製品・サービス)」のことです。MVPを開発する際は、仮説を検証するために必要な機能・不要な機能の見極めが求められます。
Q. MVPのメリットは?
MVPのメリットは「素早く仮説を検証できる」「コスト・リソースが最適化できる」などです。詳細は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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