- 更新日 2024.10.17
- カテゴリー システムの費用相場
システム開発費・ソフトウェア導入費の減価償却方法|資産・費用の判断基準や耐用年数も解説【2024年最新版】
DXへの取り組みに向けてIT化を急ぐ中小企業が増えています。しかし、さまざまな導入方法が考えられるシステム・ソフトウェアの開発費を、どのように会計処理すればいいのか?減価償却が必要なのか?わからない企業担当者の方も多いはずです。
- システム開発費の減価償却方法は?ソフトウェアとハードウェアは分けて考える?
- ソフトウェアの耐用年数は?減価償却ではなく経費計上できる場合もある?
- 使用目的でシステム開発の減価償却方法が変わる?ソフトウェアを販売する場合は?
そこで本記事では、ソフトウェア・ハードウェアの取り扱い、資産・費用の判断基準、耐用年数などを含む会計の基本とともに、システム・ソフトウェアの開発・導入方法別の減価償却方法を解説!会計上と税務上のソフトウェアの違いについても紹介していきます。
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システム開発費の会計処理
個人事業主 / 法人が事業を展開するために使った費用は、経費として利益から差し引くことが認められています。基幹システムやERPなど業務を効率化するためのシステム、あるいはECサイトなど事業収益を拡大するためのシステムを開発・導入した場合の費用も、必要経費 / 損金として会計処理し、損益を適性に保つことが可能です。
ただし、事業活動に必要な費用であっても、すべてを必要経費 / 損金として一括費用処理できるわけではありません。システム開発費を含め、ある一定の要件を満たす費用は資産として計上し、一定期間をかけて減価償却していく必要があります。
減価償却(資産計上)とは
個人事業主 / 法人が取得する建物・設備・器具・車両などは、ある一定の期間にわたって継続的に利用する資産とみなされ、時間の経過とともに価値が減価していくことから減価償却資産と呼ばれます。減価償却資産に当てはまるものは、取得時の費用を必要経費として一括費用処理するのではなく、資産として計上し、耐用年数に応じた期間で償却していくのが特徴。
これが「減価償却」です。
有形固定資産と無形固定資産の2種類がある
減価償却が必要な減価償却資産は、建物や車両など形のある「有形固定資産」および、特許権や商標権など形のない「無形固定資産」の大きく2つに分類できます。
たとえば、自社業務向けにシステムを開発・導入した場合、サーバやネットワーク、PCなどのハードウェアは「有形固定資産」に、プログラムやアプリケーションなどのソフトウェアは「無形固定資産」に当てはまる可能性があります。
減価償却が必要なシステム開発費・ソフトウェア導入費
ただし、システム開発・導入にかかった費用は、すべて減価償却しなければならないというわけではありません。一定の要件を満たせば、ハードウェア / ソフトウェアともに該当事業年度内に一括費用処理することも可能です。
では、システム開発・導入費の減価償却が必要かどうかを判断するための要件とはなんでしょうか?以下から減価償却の計算方法とともに簡単に解説していきます。
減価償却資産となるソフトウェアの定義
サーバ / ネットワークなど、有形固定資産の定義は簡単ですが、迷ってしまいがちなのはソフトウェアです。日本公認会計士協会の公開する実務指針によれば、ソフトウェアの定義は以下の通り。
- コンピューターに一定の仕事を行わせるためのプログラム
- システム仕様書、フローチャートなどの関連文書
これらの定義を満たしたうえで、「将来の収益獲得または費用削減に貢献する」ソフトウェアを無形固定資産として計上し、取得価額を減価償却していくことになります。
具体的には、業務システムなどの自社業務の効率化・生産性向上に寄与するもの、Webサービスなど自社の収益増加に寄与するものが当てはまるでしょう。
定額法と耐用年数
減価償却の方法には、毎年一定額を減価償却する「定額法」および、一定割合で減価償却する「定率法」がありますが、システム開発費・ソフトウェア導入費に関しては「定額法」を採用するのが合理的だとされています。
定額法で減価償却する場合は、法定耐用年数に従って毎年の費用を算出・償却することが一般的。自社で利用するソフトウェアであれば耐用年数が5年以内となるため、システム開発費・ソフトウェア導入費200万円を5年で償却するのであれば、年間の減価償却費は40万円になります。
- 2,000,000 ÷ 5 = 400,000
また、コンピューターを含む有形固定資産に当たるハードウェアは、ソフトウェアとは耐用年数が異なるため注意が必要です。
主なハードウェア |
耐用年数 |
サーバ |
6年 |
ハブ、ルーター、リピーター、LANボード |
10年 |
端末機 |
6年 |
プリンター |
5年 |
ツイストペア / 同軸ケーブル |
18年 |
光ケーブル |
10年 |
システム開発・ソフトウェア導入の取得価額とは
それでは、無形固定資産として算入するソフトウェアの取得価額には、なにが含まれるのでしょうか?国税庁の公式見解では、ソフトウェアの取得価額には以下の費用が含まれます。
ソフトウェアを購入した場合 |
購入の代価 + 購入に要した費用の額 + 事業の用に供するため直接要した費用の額 |
自社開発した場合 |
開発に要した原材料費、労務費および経費の額 + 事業の用に供するため直接要した費用の額 |
事業の用に供するため直接要した費用の額とは、導入時のインストール・設定費用などのこと。購入の場合はパッケージカスタマイズなどの初期費用も取得価額に含まれます。
取得価額が少額のソフトウェアの取り扱い
無形固定資産に該当するソフトウェアであっても、システム開発・ソフトウェア導入の取得価額が少額であれば、経費処理または一括償却資産処理が可能です。
10万円未満のソフトウェア
取得価額が10万円未満のソフトウェアの場合、経費として事業年度内の会計処理が可能。この場合のソフトウェアは「少額減価償却資産」として取り扱われ、消耗品費などの勘定科目を使って経費処理できます。
10万円以上20万円未満のソフトウェア
取得価額が10万円以上20万円未満のソフトウェアの場合、耐用年数が3年の「一括償却資産」として取り扱われます。計算方法は定額法となり、取得価額15万円のソフトウェアなら、毎年5万円、3年間で減価償却していきます。
※システム開発にかかる費用をおさらいしたい方は、こちらもご活用ください。
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システム開発・導入方法別の減価償却 / 費用処理方法
ソフトウェア・ハードウェアを含むシステム開発・導入費の会計処理を理解できたところで、システム開発・導入方法別の減価償却 / 費用処理の方法を解説していきましょう。少額減価償却資産 / 一括償却資産に該当するシステムは除外して解説を進めていきます。
パッケージソフトウェア導入(オンプレミス)
パッケージソフトウェアを購入し、自社サーバにインストールして利用する場合、ソフトウェアを無形固定資産、ハードウェアを有形固定資産として計上し、それぞれの耐用年数に応じて減価償却していきます。
また、後日ソフトウェアのアップデート / バージョンアップが必要になった場合は、プログラムの内容に応じた会計処理が必要です。
たとえば、20万円以上かつ新たな機能が追加されたバージョンアップであれば、新規購入と同様に無形固定資産としての計上が必要。一方、バグフィックスを中心とした軽微なアップデートであれば、修繕費として経費処理が可能です。
パッケージソフトウェア導入(IaaS / Paas)
購入したパッケージソフトウェアを、IaaS / PaaSなどのクラウド環境にインストールして利用する場合、ソフトウェアを無形固定資産として計上・減価償却する一方で、クラウドサービスの利用料は経費として処理します。パッケージのアップデート / バージョンアップに関する会計処理は、オンプレミスでの導入と同様です。
自社システムを開発して導入(オンプレミス)
自社システムの開発を外注し、自社サーバにインストールして利用する場合は「オンプレミスでのパッケージソフトウェア導入」と同様、ソフトウェアを無形固定資産、ハードウェアを有形固定資産として計上し、耐用年数に応じて減価償却していきます。
自社内でシステム開発した場合も、取得価額が「原材料費 / 人件費 / 設置費」になるという違いはあるものの、会計処理の基本は同じです。
ただし、社内開発であっても、プロトタイプなど研究開発用のシステム開発費は耐用年数が3年になることに注意が必要。また将来の収益獲得または費用削減に貢献する見込みがないシステムは、ソフトウェアの定義から外れるため経費としての処理が必要です。
自社システムを開発して導入(IaaS / PaaS)
自社システムの開発を外注し、IaaS / PaaSにインストールして利用する場合は「IaaS / PaaSでのパッケージソフトウェア導入」と同様、ソフトウェアを無形固定資産として減価償却、クラウド利用料を経費として処理します。
自社内で開発したソフトウェアの会計処理に関しては「自社開発システムをオンプレミスで稼働」させる場合と同様です。
SaaSを導入
SaaS型のシステム / ソフトウェアを導入する場合は、初期費用 / 月額費用含め、全額を経費として会計処理します。近年では、カスタマイズ可能なSaaSも登場していますが、ベンダーがソフトウェア / ハードウェアを所有し、契約期間終了と同時にいつでも利用を停止できる状態ならば、資産計上する必要はありません。
逆に、ライセンスを購入するタイプなど、サービスを永続的に利用できる状態であれば、SaaSであっても無形固定資産として計上し、減価償却していく必要があります。
システム・ソフトウェアの目的で会計処理は異なる
ここまでは、自社利用を前提としたシステム開発費・ソフトウェア導入費の減価償却 / 会計処理の基本・方法を解説してきました。
しかし、システム・ソフトウェア開発の目的は自社利用だけではなく、販売を目的にする場合もあります。当然、目的が異なればシステム・ソフトウェア開発費の会計処理も異なります。以下から簡単に解説していきましょう。
市場販売目的ソフトウェア
市場販売目的ソフトウェアとは、システムベンダーなどが不特定多数のユーザーを対象に流通・販売することを目的に開発されたパッケージソフトウェアのこと。
この場合は、ソフトウェア開発費(原本としてのマスターソフトウェア)と、ソフトウェアパッケージ製作費(原本を複写して販売するもの)で会計処理が異なります。具体的には以下の通り。
マスターソフトウェア開発費 |
研究開発費で費用処理 |
パッケージ製作費 |
無形固定資産(ソフトウェア)として計上 |
また、同じ無形固定資産でも「市場販売目的ソフトウェアの耐用年数は3年以内」であることに注意が必要。3年間の定額法で減価償却していく必要があります。
SaaSを提供する場合の会計処理
近年では、システム・ソフトウェアをSaaSで提供する企業が増えています。この場合の会計処理はどうなるのでしょう?
物理的なパッケージを製作しないSaaSの場合、サービスを提供するまでのソフトウェア開発費は研究開発費として費用処理します。一方、サービス提供後のソフトウェア開発費は無形固定資産として減価償却が必要。この場合に注意しておきたいのは、SaaSが「自社利用」なのか「市場販売目的」なのかということです。
自社利用 / 市場販売目的の切り分けは曖昧な状態が続いていましたが、2010年に情報サービス産業協会(JISA)が以下のような指針を発表しています。
一般的なASPサービス (利用料金を支払うSaaS) |
自社利用ソフトウェアとして5年以内に減価償却 |
ライセンス料金を支払うなど、 永続利用を前提としたSaaS |
市場販売目的ソフトウェアとして3年以内に減価償却 |
SaaSを提供するために導入したハードウェアは、自社所有であれば有形固定資産として減価償却、クラウド環境を利用するなら経費として会計処理します。
販売目的ソフトウェア(オーダーメイド)
同じ販売目的ソフトウェアでも、システム開発会社が受注し、顧客向けにオーダーメイドしたシステム・ソフトウェア開発費用は「棚卸資産」として扱われます。工事進行基準 / 工事完成基準に従って会計処理されるため、減価償却の対象になることはありません。
会計上と税務上のソフトウェアの違いに注意
将来の収益獲得または費用削減に貢献するソフトウェアを、無形固定資産に計上して減価償却するという意味においては、会計基準も税務基準も変わりありません。この定義に当てはまらないソフトウェアは費用処理するという点も同様です。
しかし「将来の収益獲得または費用削減に貢献する」か不明な場合、会計上と税務上のソフトウェアの取り扱いが異なります。具体的には以下の通り。
将来の収益獲得または費用削減(ソフトウェアの定義) |
会計 |
税務 |
当てはまる |
資産計上 |
資産計上 |
不明 |
費用処理 |
資産計上 |
当てはまらない |
費用処理 |
費用処理 |
将来の収益獲得または費用削減に貢献するか不明なソフトウェアを開発・導入し、会計基準に従って費用処理する場合は、税務申告時に調整する必要があります。
システム開発・導入費の減価償却について説明しました
本記事では、ソフトウェア・ハードウェアの取り扱い、資産・費用の判断基準、耐用年数などを含む会計の基本とともに、システム・ソフトウェアの開発・導入方法別の減価償却方法を解説してきました。
システム・ソフトウェア開発・導入のパターンが多様化するなか、会計処理 / 減価償却の方法も複雑化しつつあります。特に気を付けておきたいのは会計上と税務上のソフトウェアの取り扱い。開発・導入するシステム・ソフトウェアを性格・資産価値をきちんと把握し、適切に判断していくことが重要です。
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Q. 減価償却の対象となるソフトウェアには何がある?
減価償却の対象となるソフトウェアには「コンピューターに一定の仕事を行わせるためのプログラム」「システム仕様書」「フローチャートなどの関連文書」等があります。それぞれの詳しい内容は記事内で解説していますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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