システム開発の入札とは?公務員IT担当が知っておきたい調達の流れと契約事務【2024年最新版】

システム開発の入札とは?公務員IT担当が知っておきたい調達の流れと契約事務

国や地方自治体など官公庁のシステム開発は、ITベンダーなどに委託することが多いでしょう。発注先の業者の決め方は、公平性や透明性の高い「競争入札」が原則です。

しかし、システム開発は、仕様によって性能や効率が大きく変わるため、単純に金額だけで評価しづらいものです。そのため、入札以外に随意契約(公募型プロポーザル方式を含む)を採用するケースが少なくありません。

システム開発の調達や契約事務は初めてだと戸惑うことも多いもの。そこで今回は、地方自治体などで働くシステム課の担当者向けに、入札や契約の種類、流れ、進め方などをわかりやすく解説。それぞれのメリットとデメリットも説明します。

基本的なシステム開発の工程や流れ、手法についてはこちらにまとめました。あわせて参考にしてください。

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目次
  1. 1. システム開発における入札とは
    1. 1-1. 紙入札
    2. 1-2. 電子入札
  2. 2. システム開発の入札・契約制度は大きく4種類
    1. 2-1. 一般競争入札
    2. 2-2. 指名競争入札
    3. 2-3. 随意契約
    4. 2-4. プロポーザル方式(企画競争)
  3. 3. システム開発の入札の流れ
    1. 3-1. 1.入札資格の取得
    2. 3-2. 2.入札方針の決定
    3. 3-3. 3.入札の公告
    4. 3-4. 4.資格審査・認定
    5. 3-5. 5.入札
    6. 3-6. 6.開札・落札者決定
    7. 3-7. 7.契約交渉
    8. 3-8. 8.着工・検収・支払い
  4. 4. システム開発の入札で勝つためにやるべきこと
    1. 4-1. 1.適切な入札価格にする
    2. 4-2. 2.入札仕様書について質問する
  5. 5. システム開発の入札における注意点
    1. 5-1. 1.計算・転記ミスがないか確認する
    2. 5-2. 2.白紙仕様書を数枚用意しておく
    3. 5-3. 3.【電子入札時】入札方法を確認しておく
  6. 6. 【まとめ】システム開発の入札・発注の前にプロに相談しよう

システム開発における入札とは

システム開発における入札とは

システム開発の入札とは、複数のシステム開発会社を競争させ、最低価格で申し込んだ会社と契約する調達方法です(※価格以外に技術などを評価する総合評価落札方式もあります)。

一般企業であれば、直接開発会社に問い合わせをして発注しますが、官公庁や自治体は、ホームページ等で告知する「公告」によって、入札に参加するシステム開発会社を募集します。システム開発における入札には、「紙入札」と「電子入札」があります

紙入札

紙入札とは、入札の手続きをアナログ、すなわち紙ベースで行うこと。入札参加者は、紙の「入札参加申込書」や「入札書(見積書)」を郵送、もしくは持参して提出します。コロナ禍で地方自治体での電子入札システム導入が進みましたが、まだ紙入札のところも多くあります。

電子入札

電子入札はインターネットを使って入札業務を行うことです。入札書の提出や落札結果の通知などを、インターネット上の電子入札システムを介して行います。なお、電子入札を実施している自治体でも、電子入札が難しい参加者に限り、事前に届ければ紙入札を認めていることもあります。

電子入札のメリットは以下が挙げられます。

・事務処理を効率化できる
・職員や他の応札者と話す機会が減るため不正防止につながる、透明性が増す
・入札参加者は書類提出の手間や交通費、郵送費等が不要になる
・簡便性が高まることで入札参加者が増えれば、競争原理が働きやすくなる

システム開発の入札・契約制度は大きく4種類

システム開発の入札・契約制度は大きく4種類

システム開発の契約は主に、以下4つの種類があります。

  1. 一般競争入札
  2. 指名競争入札
  3. 随意契約
  4. プロポーザル方式

一般競争入札

一般競争入札とは、不特定多数の事業者に対して募集をかける入札方法です。よく知られているのが「最低価格落札方式」で、予定価格以内で最も安価な業者を選ぶ方法です。

ただ、システム開発の請負契約では、安さを追求するあまり、必要な要件が盛り込まれていなかったり、下請け業者にしわ寄せがいったりすることが懸念されます。それを防ぐため、最低制限価格を設定しておき、下回った場合は失格とすることもあります。価格だけで決まるため、おもに製品調達など価格だけで比較しやすいものに適用されます。

単純に価格のみで競う「最低価格落札方式」以外に、価格プラス技術や性能など、企画の創意工夫も合わせて評価する「総合評価方式」もあります。

メリット デメリット

・多くの企業が応募するので競争原理が働く
・最初から入札参加者を限定しないため、

公平性や透明性に優れる

・悪質な業者が応募してくる可能性を排除できない
・価格のみで判断すると品質が確保されない可能性がある

(最低価格落札方式の場合)
・応募事業者が多いと説明や手続きのための時間やコストが増える

指名競争入札

指名競争入札とは、競争入札のなかでも、入札参加者を限定して行う入札方法です。不特定多数からの応募を受け付ける一般競争入札に適さない場合に行われます。

システム開発でいえば、「特定の技術が必要なことから実質的に一部の事業者しか担当できないケース」などが当てはまります。最近では透明性担保のために指定競争入札を廃止し、一般競争入札のみにしている自治体もあります。指名の根拠は明確でなければなりません。

メリット デメリット

・信頼できる業者から選べる
・入札参加者が絞られるため、

選定の手間や経費を削減できる

・公平性や透明性が一般競争入札に比べて劣る恐れがある

随意契約

入札ではない「随意契約」という形がとられることもあります。特定の事業者でなければ実施が難しい案件や、競争入札を行う時間がない緊急案件などに認められます。

システム開発案件としては、「現行システムの改修や既存システムに関する著作権などから、特定の業者以外が担当するのが難しいケース」などが考えられます。

もうひとつの理由として、予定価格が一定金額を超えない小規模なシステム開発の場合に、事務作業を軽減するために随意契約にすることもできます。当然ながら随意契約にしたいからといって、あえて案件を複数に分けて分割発注することは違法です。

少額随意

少額随意にできる予定価格は決まっています。システム開発は「工事又は製造のその他の請負」の“その他の請負”にあたり、都道府県と指定都市は250万円、その他の市町村は130万円を超えない場合です。また単純なパソコンの購入など「財産の買い入れ」なら、都道府県と指定都市は160万円、その他の市町村は80万円を超えないことが条件です。可能なら、公平性を期するために複数の事業者から相見積もりをとる(見積合わせ)が理想です。自治体によっては、見積合わせのガイドラインを定めていることもあります。

メリット デメリット

・信頼のおける事業者に依頼できる
・契約の手間を簡素化できる

・公平性、透明性を確保しにくい
・ベンダーロックインが起こりやすく競争原理が働かないため、

価格が高くなることがある

ベンダーロックインとは特定業者の技術や製品に囲い込まれ、他のシステム開発会社への依頼が難しくなることです。

ベンダーロックインの詳細は下記記事をご参照ください。
関連記事ベンダーロックインとは|放置すると搾取のリスク!対策方法も紹介

プロポーザル方式(企画競争)

プロポーザル方式(企画競争)とは、複数の事業者の企画提案を比較検討して、最も優れた事業者を選ぶものです。地方自治体法においては、「入札」ではなく、「随意契約」に分類されます。

「競争入札」における「総合評価方式」との違いは、入札では必ず価格を判断基準に含みますが、プロポーザル形式では価格を考慮せず、事業者が技術的に優れているかのみで判断できる点です。

それなりに規模の大きい複雑なシステムを開発する場合、発注側である自治体・官公庁のシステム担当者が、あらかじめシステム要件を確定させて詳細な調達仕様書を作り、妥当な予定価格を設定するのは難しいこともあります。

むしろ、プロであるシステム開発会社の提案をべースに検討したほうが、優れたシステムが構築できるでしょう。プロポーザル方式はそうした場合に適しています。

入札では落札価格の変更はできませんが、プロポーザル方式では提案に応じて契約内容を決めるので、柔軟性があります。また契約締結に至らなかった場合、次の順位の参加者との交渉ができます(※入札の場合は、再入札が必要)。

なお、プロポーザル方式にも競争入札同様に、不特定多数から広く募集する「公募型」と、指定した事業者に限定する「指定型」があります。公平性の観点から「公募型」のみにしている自治体もあります。

この他、プロポーザル方式に似た随意契約に「企画コンペ方式」があります。プロポーザル方式は“人(事業者)”を選ぶもの、企画コンペ方式は“提案”そのものを選ぶのが大きな違いです。

メリット デメリット

・事業者の技術や知見を活かしたシステム構築ができる
・契約に至らなかった場合、次点の参加者と交渉できる
・提案をベースに契約内容を決めるため、価格や仕様の柔軟性がある

・提案内容の妥当性を評価するには

発注側の知識や交渉力が必要

このように発注先のシステム開発会社を選び、契約を結ぶにはいろいろな方法があり、それぞれメリット・デメリットも異なります。システム幹事では相談料無料で最適な方法をアドバイス、必要に応じておすすめの会社もご紹介します。

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システム開発の入札の流れ

システム開発の入札の流れ

システム開発の発注先を入札で決める場合の一般的な流れを説明します。

1.入札資格の取得

システム開発の入札に参加するには、原則として資格の取得が求められます。

誰でも自由に入札に参加できると、実力や実績の少ない企業が低価格で落札しかねません。質の悪い仕事が提供され入札者が損するのを防ぐためです。

入札参加に必要な資格は、以下の2種類に分けられます。

資格名 概要
競争入札資格

・発注機関単位(官公庁、外郭団体、自治体)で登録する資格

・各発注機関に申請し登録されることで取得できる

入札案件ごとの参加資格

企業が持つ以下のような資格や実績

  • ・入札案件とよく似た業務の受注実績
  • ・国際規格の認証(国際標準化機構など)
  • ・従業員が持つ国家資格(測量士や一級建築士など)

依頼主に合った資格を入手していないと、入札への参加自体ができません。それぞれの資格取得方法を確認し、申請作業を進めましょう。

2.入札方針の決定

自治体・官公庁の中で、どのような契約内容にするかを話し合います。標準的な人件費や材料費などをベースに設計価格を算出し、発注時の予定価格を決めておきます。予算の上限だけでなく、下限「最低制限価格」を決めるケースもあります。

3.入札の公告

厚生労働省

画像引用:厚生労働省

入札の内容をアナウンスします。ホームページや市庁舎の掲示板、窓口などで広く確認できるようにします。公告文には以下を記します。

・入札の内容(システムの仕様、機器の数量など)
・入札参加資格の要件
・入札の方法
・入札/開札の日時・場所
・入札保証金の金額

4.資格審査・認定

入札に参加できるのは、参加資格の認定を受け、有資格者名簿に登録されている事業者に限ります。公告を見て、新たに資格申請のために「入札参加資格認定書」を提出してきた事業者があれば、審査をします。

5.入札

入札の場所や方法は公告文で指定します。原則としては入札者が立ち合います。電子入札であれば、立ち合いは不要です。

6.開札・落札者決定

入札書を開封(開札)し、あらかじめ決められた方法で落札者を決めます。一般競争入札であれば、予定価格の中で最も安い企業にします。同価格の企業が複数ある場合には、くじ引きなどで決定します。入札結果はホームページなどで随時公表します。

7.契約交渉

落札者と契約書を取り交わします。契約保証金を落札者から徴収する場合はその手続きもします。

8.着工・検収・支払い

システム開発完了後は、検収を行います。その後、納品書や請求書を受領し、代金を支払います。

入札不調、入札不落で落札者がいない場合 落札者が決まらない場合としては、入札参加者がいない「入札不調」や、すべての入札が予定価格を超えている「入札不落」などがあります。入札不落の場合、参加者から再度入札してもらう「再度入札」になります。それでも落札者がない場合、「再度公告入札」を行うか、随時契約を検討することになるでしょう。

※以上のように入札は手間も時間もかかります。随意契約も含めて、調達方法は幅広く検討するのがポイントです。どの方法でシステム開発会社を選ぶのがよいか迷われるようでしたら、ぜひシステム幹事にご相談ください。相談料無料で最適な方法をアドバイスいたします。

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システム開発の入札で勝つためにやるべきこと

システム開発の入札は、参加しても他社に負けてしまえば利益を得られません。システム開発の入札で勝つには、以下を実践するのが有効です。

  1. 適切な入札価格にする
  2. 入札仕様書について質問する

1.適切な入札価格にする

適切な入札価格がどのくらいか、見極めることが重要です。落札してもらうために価格を落とし過ぎると利益につながりませんし、高すぎると落札されず終わるリスクがあります。

入札価格は以下の流れで考えていくと、適した価格を見極められます。

  1. 予算を計画する
  2. 予定価格の見通しを立てる
  3. 最低制限価格を予測する

まずどこまで価格を落として良いかを判断し、その後過去の入札データを参考に予定価格の見通しを立てるのがおすすめです。

最低制限価格を予測するには、他の参加者の予定価格を知る必要があります。情報を得られるように、競争相手とつながりを作っておくことを推奨します。

2.入札仕様書について質問する

入札仕様書の内容で、気になる箇所を積極的に質問するのがおすすめです。質問内容をもとに自社に有利な仕様書に修正できれば、落札する可能性を上げられます。

入札仕様書には、以下のような項目が記載されています。

  • システムの設計
  • システムの仕様
  • 動作方法
  • 利用方法

システムの全体像や制約条件、開発プロセスなどを把握でき、疑問点を質問することでよりシステムへの理解を深められることが可能です。

質問の答えをもとに仕様書を落札されやすいように修正し、入札に望むと良いでしょう。

システム開発の入札における注意点

システム開発の入札に参加する際は、以下の3点に注意しましょう。

  1. 計算・暗記ミスがないか確認する
  2. 白紙入札書を数枚用意しておく
  3. 【電子入札時】入札方法を確認しておく

1.計算・転記ミスがないか確認する

計算・転記ミスが絶対にないよう、入念に確認することを推奨します。ミスがあると、入札されても利益を得られない恐れがあるためです。

入札されるかは、価格の低さが大きなポイントです。そのため、計算ミスで本来の金額よりたも高めで入札に出してしまうと、落札のチャンスを逃し利益を失うことになりかねません。

また、正しく計算できていても、転記ミスがあると異なる価格で入札され意味がなくなってしまいます。

入札で利益を得るためにも、計算・転記ミスには十分注意することが重要です。

2.白紙仕様書を数枚用意しておく

入札には、白紙の仕様書を数枚用意して参加するのがおすすめです。仕様書に記入する際に、書き間違いが発生する恐れがあるためです。

万が一書き間違えても、白紙の仕様書があればすぐに書き直せるため、無駄な時間がなくなります。

入札仕様書は、案件が出された官公庁で受け取れます。書き間違いに備えて、数枚受け取っておくと良いでしょう。

なお、仕様書を受け取るには、説明会への参加が必須の場合もあります。説明会への参加が必須か確認した上で参加を決め、仕様書を受け取ることを推奨します。

3.【電子入札時】入札方法を確認しておく

電子入札を行う場合は、入札方法を確認しておくのが有効です。電子入札は、会場での入札と異なる問題が発生する恐れがあるためです。

会場での入札で発生しやすいのが「仕様書への転記ミス」ですが、電子入札の場合は同じ問題が「入力ミス」という形で発生します。

電子入札には修正機能がなく間違えると直せないため、入力ミスに十分注意しなければいけません。

また、電子入札は会場と違い「操作手順を間違えて正常に処理されない」「疑問点をスタッフに確認できない」といった問題が起きる恐れもあります。

電子入札時は入札方法を確認し、ミスなく滞りなく手続きできるように備えることが重要となります。

【まとめ】システム開発の入札・発注の前にプロに相談しよう

国や地方自治体のシステム開発では、公平性・透明性の高い方法で発注先を選ぶ必要があります。同時に、案件の規模や内容によっては、随意契約も検討にいれるとよいでしょう。

入札に不安がある、随意契約について検討したい場合、システム開発の入札を実施するので開発会社を選定しほしい、入札を行ったけれど1社も手をあげなかったなどお困りの方はシステム幹事にご相談ください

官公庁のシステム開発の豊富なサポート経験を活かし、適切なシステム開発会社選びのポイントをお伝えします。相談は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。

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Q. システム開発の入札とは何ですか?

システム開発の入札とは、複数のシステム開発会社を競争させ、最低価格で申し込んだ会社と契約する調達方法のことです。「紙入札」と「電子入札」があるの特徴があります。

Q. システム開発の入札とは?

システム開発の入札とは「複数のシステム開発会社を競争させ、最低価格で申し込んだ会社と契約する調達方法」です。詳細は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。