ベンダーロックインとは|放置すると搾取のリスク対策方法も紹介【2024年最新版】

ベンダーロックインとは|そのデメリットや回避方法について徹底解説

ITシステムの開発や運用において、ベンダーロックインと聞くと何となくマイナスなイメージがあるかもしれません。何となく理解しているものの、具体的にどういったものなのかを説明できない方が多いかもしれません。

・どのような場合にベンダーロックインに陥ってしまうのかを理解しておきたい
・ベンダーロックインに陥るとどんな問題が起きるのか知りたい
・ベンダーロックインに陥らないための予防方法を知りたい

この記事では、ベンダーロックインに関する概要とデメリットや回避方法について詳しく解説していきます。この記事を読むことでシステム開発を依頼するときベンダーロックインに陥らない対策が打てます。

※ベンダーロックインに陥る前に適切な形でシステムを導入・開発することが重要です。現在、システム開発や導入を検討している方は、システム幹事にご相談ください。システム開発の予算・目的をヒアリングし、最適な導入方法を提案します。相談料は一切かかりません。

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目次
  1. 1. ベンダーロックインとは
    1. 1-1. 2種類のベンダーロックイン
    2. 1-2. 半数近くがベンダーロックインに陥っている
  2. 2. ベンダーロックインのデメリット
    1. 2-1. ①開発・保守運用の費用が高額になりがち
    2. 2-2. ②相見積もりが出来なくなる
    3. 2-3. ③古い技術を使い続けなくてはいけない
    4. 2-4. ④他社への移行コストが余分にかかる
  3. 3. ベンダーロックインに陥ってしまう要因
    1. 3-1. ①ソリューション固有の技術を採用
    2. 3-2. ②設計書などのドキュメントが整備されていない
  4. 4. ベンダーロックインに陥らないための予防方法
    1. 4-1. 特定のソリューション固有の技術や概念を極力使用しない
    2. 4-2. 著作権が自社に帰属するよう契約書を交わす
    3. 4-3. 仕様書はベンダー側に必ず制作してもらう
  5. 5. ベンダーロックインに陥っている状態からの脱却方法
    1. 5-1. ドキュメントの最新化
    2. 5-2. 切り替え先のシステム開発会社を探す
  6. 6. 【まとめ】ベンダーロックインに陥らないためにドキュメントの整備と一般的な技術を活用しよう

ベンダーロックインとは

ベンダーロックインとは

「ベンダーロックイン」とは、ITシステムの中核部分に特定のサービスや製品などを組み込んだ形でシステムを構成したことにより、技術面、費用や時間などの点で他社製品への切り替えが困難になる事象です。

ベンダーロックインにも下記のとおり2種類に分けることができます。

2種類のベンダーロックイン

コーポレートロックイン

コーポレートロックインとは、すでに提携している会社のほうが事業や会社の組織、業務などを理解しているため、他社に移行しにくい状態を指します。

そのような事態に陥る理由は、システムの入れ替えなどで技術やサービスが新しくなっているものの、自社の業務やルール、やり方だけでなく、システム内部の細かい仕様について最も理解しているのが、これまで取引してきたシステム開発会社であるためです。

他のシステム開発会社に依頼しようとすると、改めて自社の業務やシステムについてイチから理解して頂かなければならず、膨大な移行コストがかかってしまう場合があります。

テクノロジーロックイン

「テクノロジーロックイン」はある製品やサービスの独特な開発手法により他の製品やサービスへの移行が困難となる事象です。コーポレートロックインと違って技術面でがんじがらめになってしまう状態を指します。

例えば、独自の設計思想やデータの持ち方をしているパッケージ製品を導入することで、仮に別の製品に移行しようとしても、データの体系が移行先のシステムと異なる場合はデータの変換や移行が非常に難しくなってしまいます。

テクノロジーロックインに陥ると費用面でのデメリットも生じます。ある企業が特定のクラウドサービスを利用していると、クラウドサービスを提供する事業者が月額利用料の値上げや利用中のサービス停止などといったことが行われる可能性が存在します。

クラウドサービスの特性上、利用料やサービスの停止は全てクラウドサービスを提供している事業者に委ねられてしまいます。そのため、特定のクラウドサービスにテクノロジーロックインされて他社サービスへの乗り換えが困難な場合、ランニングコストの急な増加やシステムの停止に対応できなくなる可能性があります。

半数近くがベンダーロックインに陥っている

2022年2月8日に公正取引委員会が1835機関への国や地方自治体を対象にベンダーロックインに関する調査結果を発表しました。

その調査結果によると、回答した自治体のうち99%が「(一度契約した)業者と再度契約をしたことがある」と回答していることがわかりました。そのうち「既に契約しているシステム開発会社しか現状動いているシステムの機能の詳細を把握することができなかったため」と答えた自治体が48.3%でした。

この調査結果から、多くの国内の自治体が「コーポレートロックイン」に陥っているといえます。

AWSが定義するベンダーロックインの原因

Amazon Web Services(AWS)は、アマゾン社が提供するクラウドサービスの総称であり、クラウドサービスでは世界トップシェアを誇ります。米Synergy Research社の調査結果によると2021年第4四半期のクラウドサービスのシェアはAWSが32%と1位でした。2位のMicrosoft Azureが22%でした。

国内の企業でも、これまでオンプレミスと呼ばれる自前でサーバーを立ててシステムを運用していた企業が、全てのシステムをAWSに移行した事例もあります。

しかし、特定のクラウドサービスに依存し「テクノロジーロックイン」になることに懸念を抱いている方もいらっしゃるかと思います。

そういった懸念をいただく方に向けて、AWSがベンダーロックインに対する不安を軽減させるために「ベンダーロックインを解きほぐしていくために」というホワイトペーパーを発行しています。

ホワイトペーパーでは「ベンダーロックインが存在する」状態というのは、他のシステム開発会社やツール、サービスなどを切り替えようとする際にかかるコストである「スイッチングコスト」が現実的な金額を超えた場合に「ロックインに陥っている」とベンダーロックインを定義しています。

そのため、一概に「特定のクラウドサービスに依存している=ベンダーロックイン」というわけではありません

ただしメリットもある=気軽に相談しやすく融通が利く

ベンダーロックインに対してネガティブイメージが先行することが多いですが、メリットもあります。ITベンダーと良好で長期的な関係を築けるため、自社事業モデルや事業内容、内部事情なども理解してくれます。そのため、ベンダーが会社にとって心強い存在になるのです。

また、自社内にIT人材がいなくても手軽にサポートを受けられたり、自社に必要な新たなシステムの提案を受けられたり、自社内のIT教育・運用のサポートもしてもらえるメリットもあります。

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ベンダーロックインのデメリット

ベンダーロックインのデメリット

ベンダーロックインになると企業にとってデメリットとなる可能性があります。

①開発・保守運用の費用が高額になりがち

ベンダーロックインになると、特定のシステム開発会社に頼らざるを得ない状況に陥ります。そのため、システム開発会社がその状況を理解してしまうと、今後の価格交渉で不利になる可能性があります。結果的に提案されるシステム改修や保守にかかる費用が高額な金額で提案されてしまう恐れがあり、その提案を受け入れざるを得ない状況に陥ります。

たとえ、提案された内容に納得できない内容であり、金額の妥当性について説明を求めたとしても、「どうしてもそれだけの金額がかかるのです」と強引に押し切られてしまう状況に陥りやすいです。

②相見積もりが出来なくなる

ベンダーロックインになると他のシステム開発会社との相見積もりができない問題があります。他のシステム開発会社は既存システムに関する知見がないため、開発規模の算出ができないためです。

③古い技術を使い続けなくてはいけない

ベンダーロックインに陥ると、システムの切り替えが困難であることから、長期間同じシステムを使わないといけなくなる状況になることがあります。

その結果、使っている技術が時代に伴わないものになる可能性があります。古い技術のシステムを使っていると「他の新しいシステムと比べて使いにくい」「作業効率が悪い」などといった使い勝手や、「新たなセキュリティの脅威に対応できない」などセキュリティ性などに問題が生じることが考えられます。

④他社への移行コストが余分にかかる

いくらシステム開発会社の提案内容や対応に不満を抱き、システム開発会社を切り替えようとしても、「他社が構築したシステムを運用できない」と判断されるシステム開発会社が存在します。

対応ができる業者に出会ったとしても、「現行システム理解を行うための調査」などの工程が必要になるため、移行コストが別途かかります。システムの規模や技術者の単価にもよりますが、例えば1名の技術者が現行システム仕様を理解するために約3ヶ月要する場合、300万円〜450万円程度かかります。

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ベンダーロックインに陥ってしまう要因

ベンダーロックインに陥ってしまう要因

では、なぜ多くの企業がベンダーロックインに陥ってしまうのでしょうか。主な2つ理由について紹介します。

①ソリューション固有の技術を採用

構築したシステムが独自の技術を採用していると、別の技術へ移行することが困難になることがあります。独自の技術を採用してしまうと、場合によって切り替え先のシステム開発会社がその独自技術を理解するためのコストが必要になる場合も発生します。

独自の技術の一例としては、まだ市場シェアの低いパッケージ製品で「これまでの概念とは異なるデータの持たせ方をする」などといったキャッチフレーズでまだ技術的に一般的となっていないケースが挙げられます。独自の技術を採用しているために、その技術を理解している技術者を確保することも難しくなります

②設計書などのドキュメントが整備されていない

設計書などのドキュメントが最新化されていないために、実際に動いているプログラムソースと設計書などのドキュメントの内容が一致しないケースが存在します。

技術者は設計書を読むことでシステムの仕様を理解する面があるのですが、その設計書が誤っていると正しく仕様を理解することができません。

そのため、いくらキレイなプログラムを書いていたとしても設計書等のドキュメントが整備されていないと、システムの仕様理解に時間を要し、結果的に移行コストが跳ね上がる懸念もあります。

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ベンダーロックインに陥らないための予防方法

ベンダーロックインに陥らないための予防方法

ベンダーロックインに陥らないためには、いかにスイッチングコストを減らすかが重要です。スイッチングコストを減らすためには、移行のしやすいシステム運用や技術を採用することが重要です。

特定のソリューション固有の技術や概念を極力使用しない

極力、特定のパッケージやソリューション固有の技術やデータモデルなどの概念を採用しないことが重要です。

例えば、APIを構築する際はAuth2.0などISO等で公的に定められている規格に準じて構築したり、データは一般的に利用されることの多いSQL DBやOracleなどのデータベースを採用したりするなどを意識することが重要です。

アプリケーションの領域でも、JavaやPythonなどのシェアの高いプログラミング言語を採用するのがよいでしょう。

著作権が自社に帰属するよう契約書を交わす

著作権は、著作物の創作と同時に著作者に帰属する特殊な権利です。たとえば、特許権を取得するためには、特許庁への申請・認定・登録を経る必要がありますが、著作権では申請や登録をする必要はなく、著作物を創作した著作者に自動的に著作権が付与されます。著作権がベンダー側にあると、自社の都合でシステム内のコードなどを改変できません。

ただし、著作権法の第61条には「著作権は、その全部または一部を譲渡できる」と記載されています。つまり、著作者と合意のうえで契約を締結することによって、プログラムの著作権を第三者、たとえば発注者に譲渡することも可能です。契約書を交わす際は、二次的著作物の創作(翻案)にあたる、著作権法第27条・28条も含む形にしておくことがポイントです。

開発するシステムにもよりますが、将来的な弊害が生じるようであれば、ベンダー側と協議した上で以下の一文を加えておくといいでしょう。

  •  成果物の所有権は、甲が乙に委託料を全額支払った時点で乙から甲に移転する(所有権の移転)
  •  成果物の著作権は、甲が乙に委託料を全額支払った時点で乙から甲に移転する(著作権の移転)
  •  乙は、甲および甲が指定した者に対して、当該著作物の使用を許諾する(著作権移転が困難な場合)

仕様書はベンダー側に必ず制作してもらう

仕様書がないと、今後他のシステム開発会社に開発してもらったシステムについて相談しても、相談された開発会社側もシステムについて正確には把握・理解できません。最初にシステムを開発してもらう際には、納品物として仕様書も含めましょう。

※自社でどんなシステムを導入・開発すべきか迷っている方はシステム幹事にご相談ください。目的や予算をヒアリングした上で最適なシステムを提案させていただきます。相談料や紹介料などは一切かかりません。

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ベンダーロックインに陥っている状態からの脱却方法

ここからは既にシステムを構築したが、システムまたはシステム開発会社へのベンダーロックインに陥ってしまった場合の脱却方法についてご紹介します。ただし、どのようなことを行ったとしてもスイッチングコストがゼロになることは絶対にありませんのでご注意ください。

ドキュメントの最新化

まずは、設計書などのドキュメントを最新化し、第三者が見ても読みやすい状態にするのが重要です。現在取引しているシステム開発会社にドキュメントの最新化を依頼してください。

システム開発会社と保守運用をお任せしているのであれば、その保守運用作業の範囲内でドキュメントの整備を依頼が可能です。特に保守運用を任せていない場合は、システムを開発した事業者に改めてドキュメントの最新化を行うために、追加料金を支払う必要があるでしょう。

切り替え先のシステム開発会社を探す

次に切り替え先のシステム開発会社を探します。他社が構築したシステムの運用が可能な会社かどうかをまず確認したうえで、切り替え先の候補をリストアップしてください。なお、他社が構築したシステムの運用の可否については、なかなか公式サイトのみで探すことは困難です。

旧のシステムを新システムに置き換えることを「マイグレーション」と呼ばれますが、この「マイグレーション」の実績のある企業から問い合わせるのもやり方の一つです。一度、マイグレーションの実績のあるシステム開発会社に問い合わせた後、現行のシステムに関して説明を行うなど数回の打ち合わせを設けたうえで他社が構築したシステムの運用可否が決まります。

ただし、「マイグレーション」「マイグレーション 実績」で検索して会社を探すのが方法のひとつですが、検索では適切な会社は見つけにくいのが現状です。
そのような方は、一度、システム幹事にご相談ください。

システム開発会社の選び方について詳しく知りたい方は「システム開発会社の選び方7ポイント!依頼の準備と注意点も解説」を参考にしてください。

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システムを理解するには半年から1年間ほどかかる

システム移行に実績のある企業では通常、既存で動いているシステムを理解するために半年から1年間、システムオーナー企業の立場でシステムの管理を行うことで、既存システムの処理や業務について理解を深めていくやり方を取ります。

その後は、切り替え先のシステム開発会社主導でシステムの移行を進めていきます。

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【まとめ】ベンダーロックインに陥らないためにドキュメントの整備と一般的な技術を活用しよう

ベンダーロックインはシステム開発を依頼する企業にとっては、マイナス要素が多い状態です。

・システム開発会社を別の企業やサービスに切り替えることが難しい
・高額なお見積りを受け入れざるを得なくなる
・古いシステムを使い続ける必要がある

などといった状況に陥ることがあります。

こういった状態に陥らないためにも、以下のことを行うことが重要です。

・一般的に多く利用されているような技術を採用する。
・公式な規格に準じて開発を行う
・ドキュメントも常に最新化する

上記のことを行うことにより、より技術者の確保が比較的容易に行うことが可能になり、ベンダーロックインに陥りにくい体制を構築することが可能です。

※ベンダーロックインに陥る前に適切な形でシステムを導入・開発することが重要です。現在、システム開発や導入を検討している方は、システム幹事にご相談ください。システム開発の予算・目的をヒアリングし、最適な導入方法を提案します。相談料は一切かかりません。

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Q. ベンダーロックインとは何ですか?

ベンダーロックインとは、ITシステムを他社へ切り替えるのが困難になる事象を指します。システムの中核部分に特定のサービス・製品を組み込んだのが原因で起こる事象で、技術・費用・時間などの面で切り替えが困難になるケースが多いです。

Q. ベンダーロックインとは?

ベンダーロックインとは「ITシステムの中核部分に特定のサービスや製品などを組み込んだ形でシステムを構成したことにより、技術面、費用や時間などの点で他社製品への切り替えが困難になる事象」です。詳細は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。