- 更新日 2023.12.22
- カテゴリー システム開発
ソフトウェアのオフショア開発|目的・メリット・課題・成功のポイントを解説【2024年最新版】
日本でもすっかり定着した感のある、オフショア(OffShore)を活用したソフトウェア開発。
しかし、IT担当者になったばかりの方、あるいはオフショア開発の経験のない方であれば、以下のような疑問を解消したいかもしれません。
- ソフトウェア開発にオフショアを活用する目的・メリットは?そもそもオフショア開発とは?
- ソフトウェアのオフショア開発で考慮すべき点は?解決すべき課題はある?
- オフショア開発に適した受託国は?成功のポイントを知りたい
そこで本記事では、目的・メリットなどオフショア開発の基礎知識や、考慮すべき課題、成功させるポイントを解説!オフショア開発に強いおすすめのソフトウェア開発会社も紹介していきます。
※オフショアを活用したソフトウェア開発に興味があるが、どこに委託すればいいかわからない、委託先を探して欲しいという方はシステム幹事にお問い合わせください。予算や目的などをヒアリングした上で、御社に最適なオフショア開発会社を選定します。相談料・紹介料はいっさいかかりません。
ソフトウェア開発に役立つ記事もご覧ください オフショア開発の前におさらい!ソフトウェア開発の基本的な流れや工程、費用相場
オフショア開発とは?基礎知識を解説
オフショア(Offshore)には、岸(Shore)から離れた(Off)沖合、陸風などの意味があります。それが転じて「自国以外の地域・海外」でビジネス展開することを「オフショア」と呼ぶようになりました。つまり、ソフトウェアのオフショア開発(Offshore Development)とは、自国以外の国・地域の人材・施設を活用してソフトウェアの一部、またはすべてを開発することです。
オフショアの対義語として、沿岸などを意味する「オンショア(Onshore)」という言葉もあり、金融業界では国内市場のことを「オンショア市場」と呼ぶ場合もあります。ただし、IT業界でソフトウェアを「オンショア開発する」と呼ぶことはほとんどありません。
ソフトウェア開発にオフショアを活用する目的・メリット
それでは、ソフトウェア開発にオフショアを活用する目的とはなにか?
大きくは、以下の3つに集約できます。
- ソフトウェアの開発コスト削減
- IT人材の確保
- ソフトウェア開発期間の短縮
オフショア開発の3つの目的は、同時にソフトウェア開発にオフショアを活用する、最大のメリットでもあります。以下から簡単に解説していきましょう。
ソフトウェアの開発コスト削減
ソフトウェア開発にオフショアを活用する場合、日本よりもエンジニアの人件費が安い国に業務を委託することが基本。つまり、オフショアの活用は、ソフトウェアの開発コスト削減が最大の目的でありメリットです。
ソフトウェア開発にかかるコストのほとんどは人件費。同等のスキルを持つエンジニアを、日本よりも安価に確保できるオフショアであれば、トータルの開発コストを削減できます。
IT人材の確保
今やIT大国といってもいい中国、インドをはじめ、オフショアの主な受託国はIT人材の育成に国を挙げて取り組んでおり、優秀なエンジニアを確保しやすい環境が整っています。これが、ソフトウェア開発にオフショアを活用する2番目の目的・メリットです。
一方、少子高齢化が進展する日本では、エンジニアの需要に対する供給が絶対的に不足しており、今後、エンジニア不足はさらに深刻化するでしょう。国内に人材がいないのなら、海外で探すという方向にいくのは、ある意味当然の流れです。
ソフトウェア開発期間の短縮
豊富な人材、安価な人件費という特徴を持つオフショアなら、日本と同じ予算でより多くのエンジニアを確保可能。これによって開発効率が高まるため、結果的にソフトウェア開発期間の短縮化が期待できます。これが、ソフトウェア開発にオフショアを活用する3番目の目的・メリットです。
オフショアで開発できるソフトウェア
委託先の企業にもよりますが、2022年現在、オフショアだから開発できないというソフトウェアはないといっても間違いではありません。
特に、需要の高い以下のようなソフトウェアは、オフショア開発で充分に対応できます。
- Webアプリ / ソフト
- 業務アプリ / ソフト
- スマートフォン / タブレット向けアプリ / ソフト
- AI / ディープラーニング
- IoT / VR / ARソフト
ソフトウェア開発だけでなく、ローンチ後のシステム運用 / 保守に対応するオフショア開発企業も少なくありません。また、従来のオフショア開発は、プログラミング / テストなどの実務を担当することがほとんどでしたが、近年では要件定義 / 設計などの上流工程にも対応可能な企業が増えています。
受託開発とラボ開発
オフショア開発企業の多くは、「受託開発」「ラボ開発」という2つの開発体制に対応しており、
ニーズに応じて選択が可能です。受託開発とは、プロジェクトごとにソフトウェア開発を委託する通常の方法。ラボ開発とは、開発エンジニアチームを一定期間確保し、ソフトウェア開発を含むプロジェクト案件を自由にアサインできる方法です。
単発のソフトウェア開発なら、都度、開発チームを結成する受託開発でも問題ありません。しかし近年は市場環境の変化に柔軟に対応できるよう、継続的に開発を続けるパターンも増えています。
こうした場合に有効なのがラボ開発です。ラボ開発なら、優秀なエンジニア陣を一定期間キープできるため、品質管理面でも有利な環境を作れます。
オフショア開発の主な受託国
オフショア開発の大きな目的は、コスト削減とIT人材の確保。つまり、日本にとってのオフショア開発受託国は、アジア各国が中心です。
主な受託国は以下の通り。
- 中国
- インド
- ベトナム
- ミャンマー
- カンボジア
- フィリピン
- インドネシア
これまで、オフショア開発受託国としては「中国」「インド」が中心でしたが、どちらも世界的なIT大国になり、エンジニアの人件費が高騰する傾向にあります。
そのため、近年ではIT技術・環境ともに成長著しい「ベトナム」が大きな注目を集めており、オフショア開発に関する問い合わせの約半数を占めるといわれています。親日で国民性が近いといわれるのも、ベトナム人気が高まっている理由でしょう。
ニアショア開発との違い
オフショア / オンショアのほかに、ソフトウェア開発では「ニアショア(Nearshore)」という言葉が使われることもあります。ニアショア開発とは、その名の通り、比較的近い場所でソフトウェアの一部、またはすべてを開発すること。ここでいうニア(Near)とは、東京 / 大阪などの都心部に対する「地方都市」のことを意味します。
IT企業とはいえませんが、パソナが本社機能を淡路島に移したのは記憶に新しいところ。リモートワークの普及もあり、今後はオフショア開発だけでなく、ニアショア開発に注目する企業も増えてくるでしょう。
オフショアが開発手法として日本でも定着した理由
「オフショア開発の概要は理解したが、そんなに身近なものだとは思えない」そう感じている方も多いかもしれません。しかし、実はソフトウェア開発を手掛ける日本企業のおよそ半数近くが、なんらかの形でオフショアを活用しているのです。
それでは、なぜオフショアがソフトウェア開発の手法として日本に定着したのでしょうか?大きくは「オフショア受託国の技術力向上」「ノウハウの蓄積による手法の成熟化」の2つが要因として考えられます。
オフショア受託国の技術力向上
IT大国として世界的に認められている中国 / インドを含め、オフショア受託国のIT技術力は、欧米に見劣りしないレベルまで向上しました。安心してソフトウェア開発を任せられる技術力があれば、品質にこだわる傾向のある日本企業でも積極的にオフショアを活用するはずです。
このIT技術力の向上は、オフショア受託国が「国策としてIT人材の育成に取り組んでいる」から。外貨を稼ぐための産業としても、国としてITの成長が重要だという認識があるのでしょう。上述したように、近年ではAI / ディープラーニング、IoT / VR / ARなどの最先端IT技術に対応できるオフショア受託国も珍しくありません。
ノウハウの蓄積による手法の成熟化
長い歴史のなかでトライ&エラーを繰り返し、ノウハウが蓄積されるとともにソフトウェア開発の手法が成熟したのも、オフショアが定着した要因です。
具体的には、開発体制やコミュニケーションなど、オフショア開発企業がどのように日本企業に対応していくべきなのかを学んだ一方で、日本企業がオフショアの活用に「慣れた」のだともいえるでしょう。両者がお互いへの理解を深めた結果、マッチングの精度が高まり、プロジェクトの成功率が高まったのだと考えられます。
オフショア開発の課題・留意すべきポイント
ただし、経験のない企業担当者の方にとって、ソフトウェアのオフショア開発が未知のものであることも事実。オフショア開発ならではの解決すべき課題、リスクとして留意しておくべきポイントも理解しておく必要があります。
以下から簡単に解説していきましょう。
コミュニケーション
まず課題としてあげられるのが、言語の違いによるコミュニケーションの難しさ、それに起因する進捗管理です。オフショア受託国の多くは英語が通じますが、それぞれが第二外国語でのコミュニケーションとなるため、細かなニュアンスが伝わらない可能性もあります。
地理 / 政情
受託国の地理的関係 / 政情は、ソフトウェア開発でオフショアを利用する際のリスクとなり得る要因。物理的に距離の離れた地理関係にあるオフショア開発では、時差のため「急ぎの仕様変更や問題」への対応が困難な場合もあるからです。日本時間に合わせるため、現地で時差出勤やシフト制を採用する企業もありますが、国によっては対応しきれない場合もあります。
また、2021年のミャンマーのように、受託国によっては業務の継続が困難になるほどの政情リスクを抱えている場合もあります。オフショア受託国としてベトナムの人気が高まっているのは、経済成長が著しく政情も安定、なおかつ日本との時差が2時間足らずということがあるでしょう。
文化・国民性の違い
ソフトウェア開発に限ったことではありませんが、文化・国民性の違いは、仕事の進め方にも大きな影響を与えます。日本と同じ感覚で接していると、時差も相まって思わぬ結果になってしまうことも少なくありません。これに関しては、お互いの文化・国民性を理解・尊重し、妥協点を見つけながら解決していくしかないでしょう。
進捗管理
ここまでで紹介したオフショア開発の課題・リスク、すべてがソフトウェア開発の進捗管理に影響します。事実、オフショア開発を利用する日本企業が、もっとも不安を感じているのが「進捗管理」です。
ただし、上述したように、近年ではソフトウェア開発の手法としてのオフショア活用が成熟化しているため、大きな問題に発展することは多くありません。想定される課題を一つひとつ解決し、リスクを最小化する対策を検討しておくことが基本です。
コストメリットは急速に薄れつつある
オフショアを利用する最大の目的でもある「コストメリット」は、近年になって急速に薄れつつあることも覚えておきたいポイントです。なぜなら、オフショアの主な受託国となるアジア、特にベトナムが、ソフトウェア開発のアウトソーシング先として世界的に注目されているからです。
当然、需要が高まればエンジニアの人件費も高騰します。高い経済成長率を誇るアジア各国の人件費は、意外に速いスピードで日本に近づいてくるかもしれません。逆に、人件費が伸び悩む日本は、2022年に急速に進んだ円安によって対外的な購買力が大幅に低下しています。こうした状況を踏まえ、オフショアも活用しながら、ソフトウェアの内製化に取り組む企業も増えています。
▼関連記事
システム・ソフトウェア開発の内製化についてより詳しく知りたい方は、「システム開発の内製化は正解なのかメリット・課題・考慮すべきポイントを解説!」をあわせてご覧ください。
ソフトウェア開発にオフショアを活用するポイント
課題・リスクはあるものの、ソフトウェア開発にオフショアを活用する有効性は失われてはいません。それでは、オフショア開発のメリットを最大化し、ソフトウェア開発プロジェクトを成功させるには、どのようなポイントに気を付けるべきか?
まず大前提として、オフショア開発を提供する企業には、大きく以下の3パターンがあることを把握しておきましょう。
- 日本のシステム開発会社が海外子会社を設立してサービスを提供
- 日本のシステム開発会社が現地IT企業と提携してサービスを提供
- 海外のシステム開発会社が日本拠点を設立してサービスを提供
「ブリッジSE(システムエンジニア)」がキー
オフショア開発の課題を解決し、ソフトウェア開発の進捗管理をスムーズに進めるキーとなるのが「ブリッジSE」です。
ブリッジSE(システムエンジニア)とは、文字通り、委託側である日本企業と現地開発会社の橋渡しをするシステムエンジニアのこと。IT技術だけでなく、言語や商習慣を含む日本と受託国の違いに精通し、プロジェクトをスムーズに進める役割を果たします。
オフショア開発企業によって、現地のエンジニアがブリッジSEを兼務する場合、専任の日本人エンジニアがアサインされる場合があります。その際重要なのは経験とコミュニケーションスキル。委託先がどのように人材育成しているのか、事前に面談できるのか、確認するのがおすすめです。
対応領域 / 得意分野を確認する
従来は実務が中心だったオフショアですが、上流工程に対応、ラボ開発に特化、特定の分野 / 業務に特化など、近年はオフショア開発企業の独自性・多様化が進む傾向にあります。これは、少なくともサービスを提供する形態が3パターン以上あることからも明白です。
当然、個々の企業によって対応領域 / 得意分野が異なるため、委託先の特徴をしっかり見極める必要があるでしょう。自社がオフショア開発になにを求めるのか、委託したい業務はなにか、事前に明確にしておくことが重要です。
おすすめのオフショア開発会社
最後に、これからソフトウェア開発にオフショアを活用していきたいと考える企業担当者の参考になるよう、おすすめのオフショア開発会社を紹介していきます。
スマラボ(株式会社アイディーエス)
「スマラボ」は、東京都港区に本社を構えるシステム開発会社、株式会社アイディーエスのオフショアラボサービスブランドです。ベトナム・ホーチミンに100%子会社を所有し、6か月単位で専任チームを確保するラボ型開発に特化したオフショアサービスを提供。プロジェクト管理、品質管理にこだわる日本企業が、違和感なく利用できる環境が整えられています。
設計から運用・保守まで、幅広い業務を依頼できるのはもちろん、ウォーターフォール / アジャイルでの開発に対応。業務システム・Webサービスのほか、研究開発・実証実験などの開発プロジェクトにも対応できます。ニーズにあわせて現地とのコミュニケーションスタイルを選べるのもポイント。日本人SE / ブリッジSEの常駐を含め、最適な人材をアサインすることでオフショアの不安を解消できます。
インディビジュアルシステムズ株式会社
「インディビジュアルシステムズ株式会社」は、ベトナム・ホーチミンに本社、および新宿区に東京オフィスを構える日系オフショア開発企業です。
2003年のベトナム本社設立から約20年間サービスを提供してきた豊富な経験・ノウハウを持ちます。日本企業向けのソフトウェア開発以外にも、ベトナム国内向けのSIサービスも提供。これまでに500以上の開発案件を手がけてきた実績を誇ります。
あらゆる規模・種類の開発案件に対応できますが、業務系ソフトウェアの開発にアドバンテージを持つのが同社の特徴。これまでのノウハウを詰め込んだ生産管理 / 人事給与・勤怠管理 / 在庫管理など、パッケージソフトウェアの提供 / カスタマイズはもちろん、SAPアドオン開発にも対応できます。柔軟に人材をアサインできる、ラボ型開発サービスも提供しています。
株式会社カオピーズ
「株式会社カオピーズ」は、2014年にベトナム・ホーチミンで創業したベトナム系オフショア開発企業です。2016年には千代田区に東京本社を設置し、本格的にオフショアサービスを提供開始。
これまでにWebシステム / 業務システム / ゲーム / モバイルアプリ / AI / ブロックチェーンなど、400以上の開発プロジェクトに携わってきた実績を誇り、受託開発・ラボ型開発・常駐開発・研究開発に柔軟に対応できます。
ベトナム / 日本を合わせ、35名が在籍するブリッジSEの育成に力を入れているのも同社の特徴です。日本語能力試験N2レベル以上を取得し、意思疎通が問題なくできることを日本人スタッフが確認した上で採用。オフショア開発で不安になりがちなコミュニケーションの課題を解決できます。
その他オフショア開発でおすすめのシステム開発会社の詳細は下記記事をご参照ください。
関連記事:オフショア開発に強いシステム開発会社8選!【2023年最新版】
ソフトウェアのオフショア開発について紹介しました
本記事では、目的・メリットなどオフショア開発の基礎知識や課題、成功させるポイントを解説するとともに、オフショア開発におすすめの会社も紹介しました。
オフショアは、コストメリットの大きなソフトウェア開発手法ではありますが、どのような場合でも有効な手段だとは限りません。メリットだけではないオフショア開発の課題・リスクを把握し、自社ソフトウェア開発の目的・ゴールとマッチングするかを見極めることが重要です。
コンサルタントのご紹介
岩田
専任のコンサルタントが、
お客様の予算と目的を丁寧にヒアリング。
最適な会社をピックアップ・ご紹介させていただきます!
初心者の方でも安心してご相談いただけます。
※オフショアを活用したソフトウェア開発に興味があるが、どこに委託すればいいかわからない、委託先を探して欲しいという方はシステム幹事にお問い合わせください。予算や目的などをヒアリングした上で、御社に最適なオフショア開発会社を選定します。相談料・紹介料はいっさいかかりません。
Q. オフショア開発とは何ですか?
オフショア開発とは、自国以外の国・地域の人材・施設を活用してソフトウェアの一部、またはすべてを開発することです。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
このライターの記事一覧