- 更新日 2024.10.17
- カテゴリー インフラ構築
パブリッククラウド・AWS/Azure/Google Cloudの選び方【2024年最新版】
「パブリッククラウドを活用していきたいが、どう選んで良いかわからない」
「パブリッククラウドという言葉を最近よく聞くが、具体的なイメージがつきづらい」
「パブリッククラウドとプライベートクラウドはどう違うの?」
クラウド選定には高度な専門性が求められ、情報を整理して理解するのは非常に大変です。各クラウドに特徴やデメリットがあり、それらをきちんと考慮してクラウドを選ぶ必要があります。
クラウド選びのポイントについて、クラウドエンジニアとして働いているプロへの取材情報をまとめました。最後まで読めば、クラウドの選び方のポイントを押さえられますので、ぜひ参考にしてください。
※クラウド選びに不安がある方は、システム幹事にお問い合わせください。予算や目的などをヒアリングした上で、最適な開発会社を提案します。相談料・紹介料は一切かかりません。
パブリッククラウドとは何か
パブリッククラウドは誰でも使用可能なクラウドサービス
パブリッククラウドについて説明する前に、まずはクラウドについて、簡単に説明します。
クラウドとは自社にサーバーを置かず、インターネットを介してクラウド事業者のサーバーやストレージを必要な時に必要な分だけ利用するシステムのこと。有名なクラウドとしては、業界No1のAWSや2位のMicrosoft Azure、Googleが提供するGCP(Google Cloud)があります。また国内のクラウドとしては、富士通のニフクラなどが挙げられます。
その中でもパブリッククラウドとは、個人/企業や業界/業種を問わず、誰でも使用可能なクラウドサービスのこと。パブリッククラウドは、原則登録さえすれば誰でも使用することができます。単に「クラウド」といえば、パブリッククラウドを指す場合がほとんどです。
パブリッククラウドとプライベートクラウドの違い
パブリッククラウドは、業種や業界などを問わず使用でき、裏側で動くハードウェアなどのITインフラリソースを、ユーザー同士で共同利用します。
一方で、プライベートクラウドとは、企業が自社専用のクラウド環境を構築し、グループ会社や社内の各部門にのみ提供するクラウドサービスのことです。パブリック(=誰でも使用できる)でなく、プライベート(=限られた組織のみ使用可能)なので、プライベートクラウドと呼ばれています。
プライベートクラウドは2種類
自社でハードウェアなどのITインフラの構築・運用を行うオンプレミス型と、ハードウェアなどの資産を所有せず、クラウド事業者から提供されるITインフラを利用するホステッド型があります。
プライベートクラウドのメリットとしては、他者が使用するわけではないため、自社の要件に応じた柔軟な環境を作ることができます。
一方でデメリットとして、自身でクラウドの仕組みを構築する必要があるため、大きな初期費用や運用費などが必要となります。
パブリッククラウドとオンプレミスの違い
続いて、もう1つのITインフラの使用形態であるオンプレミスについても紹介します。
オンプレミスは、自社のデータセンターにネットワーク機器やサーバを用意する方式。プレミス(premises)とは英語で建物や施設を意味する単語。そのためオンプレミス(on premises)で建物内や施設内という意味になります。
クラウドが台頭する以前は、各社オンプレミスでシステムを動かしていました。昨今、多くの企業が自社でサーバーを持つオンプレミス方式主体から、パブリッククラウドに移りつつあります。
従来のオンプレミス方式では、自社のデータセンターにサーバを用意する必要があり、多くの初期費用がかかるというデメリットがありました。また、使用開始までの所要時間も必要です。
環境が著しく変わる現代では、初期費用がかからず所要時間も短いパブリッククラウドが選ばれるようになってきました。
パブリッククラウドを活用することで、初期費用を抑えて素早く開発を始めることができます。その他のメリットとしては、拡張性の高さ、従量課金性なので運用費用を抑えられる点などが挙げられます。
パブリッククラウド |
オンプレミス |
|
費用 |
ハードウェアの購入の必要なく 初期費用を抑えられる。 従量課金で、使った分だけ費用が発生する。 |
ハードウェアやデータセンターなどの 初期費用が大きい。 メンテナンスの人件費が必要。 |
所要時間 |
最短即日で開始できる |
調達などに数ヶ月が必要 |
拡張性 |
簡単な設定で柔軟に拡張可能 |
多くの費用と所要時間が必要 |
柔軟性 |
クラウド事業者に依存するため 制約が多い |
自社管理のためカスタマイズは自由 |
費用の違い
オンプレミスの場合、サーバの調達に何十万〜何百万単位の初期コストがかかります。これは、ハードウェアやデータセンターなどを自前で用意する必要があるためです。
また、データセンター内でハードウェアのメンテナンスを行う必要があるため、原則管理する技術者を自社で抱えておく必要があります。また、電源費用や空調費用なども必要です。
パブリッククラウドの場合、自社でのサーバ購入が不要のため、初期コストはほぼ0、月々のランニングコストも数百円〜数万円で開発を始めることができます。料金は従量課金なので、使った分だけの支払い。そのため、スモールスタートで事業を始めるハードルが低いというメリットもあります。
所要時間の違い
オンプレミスの場合、サーバの選定・調達や実際に使用可能になるまでに数ヶ月を要する場合がほとんどです。パブリッククラウドの場合は、最短その日から使用することができるため、スピーディーな開発が可能となります。
拡張性の違い
オンプレミスの場合は、物理サーバーのスペックを上げるスケールアップや、物理サーバーの数を増やすスケールアウトには、大きなコストとリードタイムを要します。
一方パブリッククラウドの場合は、数クリックでスケールアップが可能であり、マネージドなサービスを使うことで簡単にスケールアウトが実現できます。また、利用が少ない時はサーバの数を減らしコストを抑えるスケールインができることもクラウドのメリットです。
柔軟性
オンプレミスの場合は環境を0から整備・構築するため、柔軟なカスタマイズが可能です。インターネットの接続や、ファイアウォール・WAFなども自由に設定できます。
一方パブリッククラウドは既存の事業者が提供するサービスを利用する形態なので、設定項目によっては変更できない場合もあります。例えば、他のシステムと連携する場合などに、連携できなかったり、連携できるがセキュリティ的に脆弱になってしまう設定を入れざる得なかったりする場合があります。これらを防ぐために、きちんとサービス選定や設計を行う必要があります。
パブリッククラウドのデメリットとメリット
続いて、パブリッククラウドのデメリットとメリットを紹介します。
デメリット
パフォーマンス(性能)
性能に関して、クラウド特有の課題も存在します。例えば、クラウド事業者が提供しているサーバーのディスクは、I/O(入出力)の上限がオンプレミスより低い場合があります。高いディスクI/O(入出力)が求められるシステムの場合は、注意する必要があります。
また、クラウドの実態は、クラウド事業者が持つデータセンターのサーバー群です。例えば日本の東京リージョンを選択した場合、物理サーバが動いているのは東京のデータセンターになります。そのため、九州の企業の社内システムを東京リージョンで構築した場合は、物理的な距離が理由でパフォーマンスが出ないなどの事例も存在します。
このような、ディスクI/Oやリージョン選択による物理的な距離の遠さによる応答速度の遅さなどのパフォーマンス課題は、システム構築後からのチューニングには限界があります。そのため、開発の要件定義段階で非機能要件をきちんと考慮してサービスを選定することが大切です。
また、サービス特有の性能に関する制約もいくつか存在します。例えばAWSのサーバレスサービスであるLambdaは、同時実行数に1000件の上限が存在し、それ以上の呼び出しができない場合があります。また、実行時間の上限15分というのもネックになったりします。
柔軟性
クラウドサービスは、クラウド事業者が定義する設定項目のみ変更が可能なため、カスタマイズ性がオンプレミスほど高くないという欠点があります。
例えばOSは、クラウド事業者が提供しているもののみ使用でき、一部のバージョンなどは使用できないなどのデメリットもあります。ソフトウェアやミドルウェアは、動作するOSが決まっているため、自身の使いたいソフトウェアやミドルウェアがクラウド事業者が提供しているOS上で使用可能かは、きちんと確認すべきでしょう. す。また、動作してもサポート対象外になってしまうこともあります。
セキュリティ
クラウドのセキュリティは、上記のカスタマイズ性と同じく、サービスによって設定できるセキュリティ項目が異なってきます。そのため採用するサービスによっては、追加のセキュリティ対策を実施すべき場合があります。
例えばクラウドのコンピューティングサービスでは、デフォルトでインターネットに接続可能なサービスも多いため、仕様をきちんと確認し、ファイアウォールやWAFなど適切なセキュリティ対策を行う必要があります。暗号化やロギングのオプションなどが限られているものなども存在するため、セキュリティ要件を満たせない可能性もあります。
また、クラウドはIDとパスワードがわかれば基本的にはどこからでもアクセスできてしまうので、例えばクラウド上のユーザの権限付与を最小限にしたり、ログインを特定のIPアドレスに制限したり、2段階認証を必須にするといったクラウド特有の対策も必要となります。
メリット
拡張性
クラウドを使用すると、サーバーのスペックを上げるスケールアップや、サーバーの数を増やすスケールアウトを、数クリックで設定することができます。監視サービスを連携し自動でスケールアウトする機構もマネージドサービスで簡単に構築することができます。
また、利用が少ない時はサーバの数を減らしコストを抑えるスケールインができることもクラウドのメリットです。これによって、アクセス数や繁閑に応じて柔軟に対応することができます。
費用
クラウドの使用を開始する場合、自社でのサーバ購入が不要のため、初期コストはほぼ0で開発を始めることができます。たクラウドでは月々のランニングコストが従量課金であり、数百円〜数万円と比較的安いこともメリットです。
加えて、ハードウェアのメンテナンスが不要など、管理費用がオンプレミスより安いというメリットがあります。また、Webコンソールなどからメンテナンスが出来るため、データセンターに人を配置しておく必要がありません。
クラウドは従量課金なので、バッチ処理などの定期的な実行のみにサーバを使っていた場合は、より大きなコスト削減になります。また、柔軟にスペックの変更などもできるため、繁忙期のみに使用しており普段は使っていないといったリソースも削減することができます。
所要時間
クラウドの場合は、アカウントとクレジットカードさえあれば最短その日から使用を開始することができます。アカウント作成は、Web画面上から簡単な個人情報とクレジットカード情報を入れるだけなので、5分程度で出来てしまいます。
その日からサーバやデータベースを使って開発を始めることができるため、スピーディーな事業推進が可能となります。
主要なパブリッククラウド
ここからは、主要なパブリッククラウドサービスであるAWS、Azure、GCPについてご紹介していきます。
AWSの概要と特徴、使用の際の注意点
AWS(Amazon Web Service)は、業界トップのクラウドベンダーです。2006年からサービスを開始しており、2022年Q1期のクラウドインフラ業界におけるシェアは33%で、継続してNo1を維持しています。
インフラストラクチャーのシェア
AWSの特徴としては、業界のリーダーとして様々な領域・ユースケースのサービスをバランスよく提供していることや、設定や実装方法に関するドキュメントがインターネットに多く存在することなどが挙げられます。
特に実際に開発する際には、ドキュメントが整備されているかどうかで開発スピードはかなり異なってくるため、情報の多さという観点も非常に重要です。インターネットへの接続は明示的にゲートウェイを作成しないと有効化されないなど、エンタープライズの厳しい要件を満たせるよう、セキュリティレベルが高い設計思想で作られていると感じます。
AWSの有名なサービスとしては、IaaSのサーバとして使用されるEC2や、リレーショナルデータベースであるRDS、堅牢なストレージであるS3などが挙げられます。
業界のリーダーとしてバランスよくサービス・ドキュメントを整備しているため、大きな欠点はありません。強いていうのであれば、先行投資が多い分、価格は他クラウドと比較しやや高価な場合もあります。
関連記事:Amazon Web Service(AWS)とは?主な機能と活用事例・メリット・注意点
Azureの概要と特徴、使用の際の注意点
Azureは、業界No2のクラウドベンダーです。2010年からサービスを開始しており、2022年Q1期のクラウドインフラ業界におけるシェアは22%と、首位のAWSとの差をじわじわ縮めています。
Azureの最大の強みとして、Microsoft OfficeやAcitive DirectoryなどのMicrosoftサービスとの親和性が高いことが挙げられます。これらのサービスと簡単に連携できるため、システム導入やシステム移行がスムーズに実施でき、コストを削減できます。
料金面でも、WindowsサーバやSQL Serverデータベースを使用する場合は、ライセンス込みで他クラウドよりも数十%安く利用できるため、Microsoftサービスを最大限活用する場合には多くの恩恵を受けられます。
また、AzureはUIが統一されていてわかりやすいというのは使っていて感じるため、特にWebコンソールを主体にして開発や保守運用を行う場合は、ストレスフリーで実施できるかと思います。
画像引用:マイクロソフトサポート
Azureの有名なサービスとしては、PaaSとして使用されるAzure AppServiceやリレーショナルデータベースであるSQL Database、堅牢なストレージであるAzure BlobStorageなどが挙げられます。
Azureを使用する際の注意点としては、APIやそのドキュメントの整備状況が挙げられます。特にドキュメントはやや難解で、必要な情報を見つけるのが困難な場合があります。また、C++、CのSDKについてはドキュメントがなかったりします。
また、連携できる外部サービスの種類も異なります。これは、API整備状況の違いから生まれる差だと推測できます。例えばCI/CDサービスであるCircleCIでは、AWSについてはCLI実行やS3、ECS(コンテナサービス)など9サービスをサポートしているのに対して、AzureはCLIやContainer Registryなどの3サービスに留まります。
関連記事:Microsoft Azureとは?主な機能と活用事例・メリット・注意点について解説
GCPの概要と特徴、使用の際の注意点
GCP(Google Cloud)は、Googleが提供するクラウドサービスです。2008年からサービスを開始しており、2022年Q1期のクラウドインフラ業界におけるシェアは10%でした。
GCPの特徴としては、Googleとして培っているデータ分析などの特定の領域に非常に強いことです。例えばBigQueryは、他クラウドと比較して低コストと高パフォーマンスでビッグデータを分析できます。また、Kubernetesも元々はGoogleが開発したという経緯もあり、GKEもGCPが推しているサービスの1つです。
有名なサービスとして、ビッグデータの分析基盤であるBigQueryや、IaaSのサーバとして使用されるGCE(Google Compute Engine)、Kubernetes(k8s)によるコンテナのオーケストレーション(構築や運用の管理)を提供するGKE(Google Kubernetes Engine)、データベースサービスであるCloud SQLなどが挙げられます。
また、GCPのPaaSサービスとしては、Google App Engineが有名です。
GCPを使う際の注意点としては、英語のドキュメントが多く、日本語ドキュメントはまだ整備されていないことや、AWSやAzureに比べてインターネットに公開されている「〜をやってみた」系の知見が少ないことなどが挙げられます。
サービス数に関しても、AWSやAzureが200以上のところ160程度なので、ややカバー範囲が狭い印象を受けます。また、AWSやAzureには存在する米国政府専用のリージョンがない点もデメリットです。
パブリッククラウド選定するときのポイント
ここからは、パブリッククラウドを選定するときのポイントをご紹介します。
必要な要件を満たすためのサービスがそのクラウドに存在するか
パブリッククラウドを使用する際に必ず覚えておいて欲しいのが、パブリッククラウド事業者が提供するサービスには必ず制約があるということ。多くのユーザーに対して画一的なサービスを提供しているため、ユーザーが設定できる項目は最低限に絞るという設計思想のサービスも少なくないです。
自社の要件を実現するためには、どのような機能がありどのような設定ができるべきかを洗い出し、クラウドサービスがそれに合致するかをきちんと確かめる必要があります。
例えば、OSの種類やバージョンなどは、必ずチェックする必要があります。クラウド事業者によって、使用できるOSバージョンは決まっています。オンプレミスの他のシステムとバージョンを合わせてメンテナンスを楽に、画一的にしたい場合。
特定のOSバージョンでないと動作しないソフトウェアがある場合、動作するがサポート対象外のソフトウェアがある場合。開発が始まってからこのような事実が発覚すると、要件が満たせなくなってしまう場合があります。
また、クラウドでは、ネットワークの要件もネックになる場合があります。例えば会社のルールで原則インターネットにアクセスしないシステムを構築する場合など。
AWSにはVPC Endpointという、インターネットにアクセスせずにネットワーク内からAWSサービスを利用できるサービスがありますが、VPC Endpointに対応しているAWSサービスには限りがあります。
設計・構築〜保守・運用の際に参考となる情報は十分か
使用するクラウドサービスに関して、インターネット経由などでアクセスできる情報の整備具合についても、非常に重要です。
例えば開発を外注する場合でも、インターネット上の情報や知見が多ければ多いほど、開発会社さんの開発スピードも早くなる傾向があります。クラウドには、特定のサービス同士を組み合わせる際に必ず設定しなければいけない項目があるなど、落とし穴が多いです。
また、APIを使用する際の記載のお作法なども、独特のものがある場合があります。それらのTipsにアクセスでき、同じ轍を踏まずにスムーズに進められると、メインのアプリケーション開発に時間を割けるため、品質の高いアプリケーションが出来やすいです。
AWSのAPIドキュメント
画像引用:AWS
Qiita(エンジニア向けナレッジコミュニティサービスの、AWSに関する記事の一部)
画像引用:Qiita
今まで外部に委託していた保守運用を自社で内製化するといった動きも近年盛んです。例えば保守運用の一環である、サーバーのバックアップをとってセキュリティパッチを当てるなどの作業についても、1から手順を策定するのと、インターネット上の複数のサンプルを参考に手順を策定するのでは、必要となる工数が大きく変わってきます。
将来的な保守運用の内製化なども考えている企業さまについては、情報の充実度という観点も1つ重要になってきます。
コストは納得いくものか
コストについても、クラウドを活用する前にきちんと予算設計をしておかなければいけません。例えば、WindowsサーバやSQL ServerなどWindows製品を利用する場合、AWSやGCPよりもAzureの方が最大2〜4割程度安くなります。
また、クラウド事業者によって1年や3年単位で契約できるサービスもあります。これは、年単位で一定の使用量を担保する代わりに、従量課金より安価でクラウドを利用できるという料金形態。
代表的なサービスとしては、IaaSの仮想サーバーなどが挙げられます。このプランを有効活用することで、長期的に使用する前提のアプリケーションについては、価格を抑えて運用することができます。
クラウド事業者によっては、ボリュームディスカウントを設定しており、使えば使うだけ単価あたりの料金が安くなるプランを用意している場合もあります。例えばAWSのストレージサービスであるS3は、50TBまで、500TBまで、それ以降と、3ステップでGBあたりの料金が安くなります。
このようにクラウドには、サービスごとに料金体系が存在します。また同じ従量課金でも、例えばデータの保存量に課金される場合や、データに対してクエリを発行した場合に課金される場合など、課金パターンはサービスによって異なります。
パブリッククラウドの各サービスについて、どのような原理で課金が発生するのか、選択できる料金形態にどんなものがあるのかは、きちんと把握する必要があります。
パブリッククラウド選定の失敗パターン
ここからは、クラウド選びの失敗パターンを紹介していきます。この事例を反面教師にし、入念なクラウド選定をしてください。
クラウドサービスの制約に阻まれ、要件が満たせなかった
一例としては、OSなどの互換性の問題でミドルウェアやソフトウェアが動かず、システムをクラウド上で動かすことができなかったという事例が挙げられます。仮に動作しても、OSバージョンがソフトウェアのサポート対象外であったために、サポートを受けられないというトラブルもあります。
サポートを受けられないと、例えばそのソフトウェアでエラーが起きた際は全て自己責任となり、ベンダーは助けてくれません。エンタープライズのシステムでは、このような事故は致命的であるため、原則サポート対象のソフトウェアを使用することがほとんどです。
クラウドでは、使用できるデータベースのエンジンのバージョンが更新される場合もあります。例えばPostgreSQLのバージョン13.2は、2022年にAWSで使用できなくなりました。筆者はそれに伴い、自社のAWS上のデータベースをアップグレードする必要がありました。
その際は特に大きな問題はありませんでしたが、バージョンの変更によって出来ていたことが出来なくなるといったパターンも0ではありません。あくまで、クラウド事業者が提供しているサービスであるため、事業者の都合で変更されてしまう可能性があることは覚えておきましょう。
保守・運用のプロセスが煩雑化し、属人化してしまった
パブリッククラウドは簡単かつ迅速にサービスの利用を開始できるため、様々な種類のクラウドサービスが乱立し、それぞれのサービス上でアプリケーションが動作するという混沌とした状態になるリスクがあります。これは、クラウド事業者が次々とより便利で安価なサービスを出していることもあり、ユーザーとしても安くて良いものを使いたいためにある程度仕方のないことです。その際に気をつけるべきことは、各サービスの運用手順・フローをドキュメントにきちんと明文化しておくこと。
この明文化の際に最も役に立つのは、インターネット上に存在する公式ドキュメントや「やってみた」系の個人/法人の記事などです。0からクラウドサービスの保守運用手順を策定するのは多大な時間がかかるため、ある程度ポイントを押さえた上でドキュメント作成をするとスムーズです。
例えばクラウド各社は、Kubernetes(k8s)というコンテナオーケストレーションのソリューションを使用できるクラウドサービスを提供しています。k8sは、非常にイケている技術である一方、ITインフラやk8sに関する多くの専門知識が必要であるため、保守運用は比較的困難です。
そのため、k8s関連のサービスの保守運用は詳しい技術者に属人化しやすい傾向があります。私の知っている事例でも、数名の技術者に保守運用が属人化してしまい、その方が辞めた際に保守運用が回らなくなってしまったということがありました。
クラウドサービスのメンテナンス方法を把握し誰でもできる状態にしておくためにも、アクセスできる情報の多さというものは1つ重要な観点です。
当初想定していた予算を大幅にオーバーしてしまった
予算をオーバーしてしまい、費用面のメリットを享受できなかった事例も存在します。
当初の見積もりではサーバやデータベース費用などだけを計算していましたが、ネットワーク通信費などが予想外にかかる場合も存在します。例えば仮想サーバが安全に外部環境にアクセスするために作成するNATサービスであったり、ネットワーク内のエンドポイントサービスなどは、見落としやすいです。私の知っている案件では、請求金額の3割以上がこのようなネットワークサービスで、予算を超えてしまったということもありました。
また、クラウド特有の仕様で気づかぬうちにコストが逼迫しているということもあります。
例えば、データベースや仮想サーバのディスクについて、定期的に取得しているスナップショットが蓄積し、毎月数万円になっているなどの場合です。こまめに料金を確認し、不要なリソースは削除することが求められます。
また、課金形態を把握せず失敗したというパターンもあります。例えばGCPのBigQueryはデータ保存とデータ検索に課金されます。データ検索のクエリをあまり考えず、都度ビッグデータに全件検索をかけていたら、月100万円以上の請求が来たという怖い話もあります。
このようなトラブルを防ぐためにも、料金体系などはきちんと把握し、要件定義や設計段階で精緻な見積もりを出しておく必要があります。
【まとめ】パブリッククラウドの選び方
パブリッククラウドとプライベートの違いや主要なパブリッククラウド、パブリッククラウド選定のポイントについて紹介しました。
- 必要な要件を満たすためのサービスがそのクラウドに存在するか
- 設計・構築〜保守・運用の際に参考となる情報は十分か
- コストは納得いくものか
このような観点で使用するパブリッククラウドを検討していきますが、やりたいことに対してそのクラウドが本当に適しているかどうかは、ある程度のIT知識が必要となるケースも少なくありません。
クラウド選びついて困った場合は、システム幹事にご相談ください。予算や目的から最適な会社をご紹介します。相談料などは一切かかりません。
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Q. パブリッククラウドのおすすめは?
おすすめのパブリッククラウドとして「AWS」「Azure」等が挙げられます。それぞれの詳しい特徴は記事内で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
Q. パブリッククラウドを選ぶ際のポイントは?
パブリッククラウドを選ぶ際のポイントとして「拡張性が高い」「スピーディーな事業推進が可能になる」等が挙げられます。詳しい選び方については記事をご覧ください。
Q. パブリッククラウドを選ぶ際のポイントは?
パブリッククラウドを選ぶ際のポイントとして「必要な要件を満たせられるサービスがあるか」「発生するコストが納得いくものか」等が挙げられます。詳しい選び方については記事をご覧ください。
この記事を書いた人
Definer Inc. | ライターチーム
専門分野: クラウド開発・クラウド移行(フルスクラッチ開発・自社SaaS提供・AI Ops構築)
外資IT企業出身のトップエンジニアが、企画・要件定義の上流から開発まで、総合的なITソリューションをワンストップ提供しております。また、AWS、Azure、GCPでのクラウド開発・移行、フルスクラッチなアプリ・システム開発を得意としています。「2025年の崖」を打破すべく、クラウドに関するお役立ち情報をお届けします。
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