- 更新日 2024.02.27
- カテゴリー インフラ構築
Amazon Web Service(AWS)とは?主な機能と活用事例・メリット・注意点【2024年最新版】
「AWSやクラウドって最近よく聞くが、何ができるかわからない」
「自社に導入する際のリスクやデメリットはあるの?」
「最近Azureもよく聞くけど、機能やコストに大きな違いはある?」
AWSの導入を検討しているが、自社で使うメリットや導入後のイメージがつかずに導入をためらっている企業は多いですよね。
また、リスクやデメリットもあまりまとまっておらず、下手に既存のシステムと入れ替えて業務に支障がでたりコストが増大しないか心配な方もいるでしょう。
そこで、AWSを使って開発をしているクラウドエンジニアへの取材情報をまとめ、AWS導入におすすめの企業を解説します。
- 高速に事業を推進したい企業
- コストを削減したい企業
- オンプレミスからクラウドにシステムを移行したい企業
この記事を読めば、AWSを導入するべきか判断できるので、ぜひ参考にしてください。
※AWSを使った開発に不安がある方は、システム幹事にお問い合わせください。予算や目的などをヒアリングした上で、最適な開発会社を提案します。相談料・紹介料は一切かかりません。
Amazon Web Service(AWS)とは
まずは、AWSについてのイメージを掴んでもらうためクラウドやAWSの概要から説明します。AWSは2006年にAmazonがリリースしたクラウドサービス。Microsoft AzureやGoogle Cloud(GCP)などの主要なクラウドと比較してもリリースは数年早く、現在でも業界のリーダーです。
簡単に、AWSが生まれた経緯をご紹介します。2000年代初頭のAmazonは債務超過であり、コスト削減施策の一環として、データセンターのサーバをLinuxサーバへ移行を進めました。小売業のAmazonでは、季節ごとのアクセスの増減があり、使っていないサーバリソースが存在する時期も多くありました。これを他社に貸すことで、EC事業の赤字の打開策としたというのが元々のAWSが生まれた経緯です。
2006年のサービス開始以降、利用者は右肩上がりで増えています。
例えばNetflixは、AWSを2009年に大規模導入しています。これは当時としてはかなり先進的で、Netflixの本気度が伺えます。Netflixでは現在、15万台以上の仮想サーバーを利用してマイクロサービスを構築しています。
画像引用:AWS
AWSは業界のリーダーとして、他のクラウド事業者と同様に開発に活用できるさまざまなサービスを提供しています。2006年のリリース以降、日々サービスを拡張し、現在では200以上のサービスを提供しています。また、業界内でのシェアは32%と、毎年1位を維持しています。
AWSの特徴としては、業界のリーダーとして様々な領域・ユースケースのサービスをバランスよく提供していることや、設定や実装方法に関するドキュメントがインターネットに多く存在することなどが挙げられます。特に実際に開発する際には、ドキュメントが整備されているかどうかで開発スピードはかなり異なってくるため、情報の多さという観点も非常に重要です。
クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングとは自社にサーバーを置かず、インターネットを介してプロバイダーのサーバーやストレージを必要な時に必要な分だけ利用するシステムのこと。
近い例を出すのであれば、カーシェアやシェアサイクルが挙げられるかもしれません。
従来は、車や自転車は自分で購入・保有するのが当たり前でした。(≒オンプレミス)
しかし近年は、自らで車や自転車を保有せず、使いたい時に使いたいだけ使うシェアサービスが台頭してきています。(≒クラウド)
従来のオンプレミス方式では、自社のデータセンターにサーバを用意する必要があり多くの初期コストがかかっていましたが、クラウドを活用することで、初期費用を抑えて開発を始めることができます。
また、その他のメリットとして、リードタイムの短さや拡張性の高さ、従量課金性なのでランニングコストを抑えられる点などが挙げられます。
有名なクラウドとしては、業界No1のAWSや2位のMicrosoft Azure、Googleが提供するGCP(Google Cloud)があります。
また国内のクラウドとしては、富士通のニフクラなどが挙げられます。
IaaS、PaaS、SaaSの違い
AWSなどのクラウド事業者のサービスは、IaaSやPaaSなどに分類できます。
IaaSもPaaSも、開発者向けのサービスです。また、近年SaaSというワードも台頭していますが、それらはどう違うのでしょうか。
IaaS
開発に必要なサーバやネットワークなどのITインフラリソースを、インターネット上で使用できるサービスです。従来、自社で購入する必要があったサーバなどを、インターネット上で従量課金で手軽に利用することができます。従量課金というのは、使った分だけ払う、コインパーキングのような課金方式です。
ユースケースとしては、フルスクラッチ開発や、カスタム開発が必要なアプリケーション・サービスの開発に使用されます。OSやミドルウェアまでがユーザーの責任領域なので、管理が必要な一方でカスタム性が高い特徴があります。有名なサービスとしては、AWS EC2などが挙げられます。
PaaS
アプリケーションを用意するだけで、データベースやサーバー、OSの準備が不要な開発プラットフォームです。OSなどのメンテナンスが不要なため、コストを抑えてアプリケーション開発に集中できることがメリット。一方で、カスタム性はそこまで高くない場合が多いため、トレードオフの一面もあります。
PaaSサービスとしては、HerokuやVercelがよく開発で使用されています。AWSが提供しているサービスとしては、AWS Elastic Beanstalkなどが挙げられます。
SaaS
開発が不要で、インターネット上で利用できるソフトウェアです。ユースケースとしては、企業や個人の特定課題の解決のために使われます。
例えば、会議やチャットなどのコミュニケーションや、採用や労務の管理など、さまざまな領域でSaaSが台頭しています。日本で有名なSaaSの例としては、SanSanやSmartHRなど挙げ始めたらキリがありません。
このように、SaaSは開発者のみならず一般の個人や企業も多く利用するソリューションである場合が多いです。AWSなどのクラウド事業者は、開発に用いるIaaSやPaaSを中心に、さまざまなサービスを提供しています。
AWSの主要なサービス
AWSは、小さなものからNetflixなどのグローバルな大規模アプリケーションまで、多くの場面で採用されています。現在200以上のサービスが存在し、全ては説明できないので、AWSが多機能であることを理解しやすい10の代表的なサービスに絞って紹介します。
主なサービス |
概要 |
メリット |
Amazon EC2 |
インターネット経由で 使用できる仮想サーバー |
サーバーを自社で用意する 必要がない |
Amazon VPC |
AWS上に構築可能な 仮想ネットワーク |
ルーターなどの物理機器を用意なしで ネットワークを構築できる |
AWS Lambda |
サーバレスなプログラム 実行環境 |
OSやミドルウェアの管理 不要でコード実行が可能 |
Amazon S3 |
堅牢なオンラインストレージ |
ストレージを自社で用意する必要ない |
Amazon RDS |
マネージド型の リレーショナルデータベース |
リレーショナルデータベースを 自前で用意する必要がない |
Amazon DynamoDB |
サーバレスなNoSQL データベース |
拡張性やパフォーマンスが 高いDBをサーバレスで 使用できる |
Amazon CloudWatch |
AWSリソースや アプリの監視サービス |
死活監視やパフォーマンス監視など 簡単に設定できる |
Amazon SageMaker |
機械学習のプラットフォーム |
簡単に機械学習のモデル作成、 トレーニングなどが実行できる |
Amazon Cognito |
ウェブ/モバイルアプリの ユーザー管理サービス |
ユーザー管理機能を0から 開発する必要がない |
AWS CLI |
AWSサービスを管理できる コマンドラインツール |
AWSサービスとアプリケーションの 統合が容易となる |
Amazon EC2
Amazon EC2(以下EC2)は、AWS上で仮想サーバーを作成できるIaaSサービスです。開発したシステムを作成した仮想サーバー上で稼働させたり、ディスクにデータを保存したりできます。従来のオンプレミスでは、自社のデータセンターにサーバーを用意する必要があり、多くの初期コストがかかっていましたが、EC2を活用することで、初期費用を抑えて開発を始めることができます。
またオンプレミスの場合は、サーバーのCPUやメモリがスペック不足になった場合には増築や買い替えが必要でしたが、EC2を使用することでインスタンスタイプ(スペック)のアップグレードなどがWeb上から簡単にでき、増築・買い替えのコストも削減できます。また、AutoScalingと組み合わせることで、アクセス量に応じて柔軟にサーバの数を増減させるスケールアウト/スケールインも簡単に実装できます。
参考:EC2のWebコンソール画面
また、インスタンスタイプ(スペック)は、汎用モデルや高速コンピューティング向け、メモリ最適化インスタンスタイプなど多くのタイプが存在し、現在400以上のバリエーションがあります。
参考:インスタンスタイプの選択画面
Amazon VPC
VPCは、AWSクラウド上に仮想ネットワークを構築できるサービスです。
参考:仮想ネットワーク構成の一例
VPCには、サブネットやインターネットゲートウェイ、ルートテーブルなどのリソースが紐づきます。サブネットとは、VPCをIPアドレスの範囲で分割したもので、サブネット内にAWSリソースを起動することができます。
インターネットゲートウェイとは、VPCネットワークと我々が普段使っているインターネットとの窓口です。インターネットゲートウェイがないネットワークには、外部からアクセスすることができません。
ルートテーブルとは、どの通信がどこへ行くかを決めている、通信ルールの定義のことです。例えばインターネットゲートウェイを作成しても、インターネットゲートウェイまでの通信ルールを定義しなければ、インターネットへアクセスすることはできません。
このような複数のサービスを組み合わせ、仮想ネットワークを構築します。
参考:VPCのWebコンソール画面
ルーターなどの機器を用意することなく、簡単にネットワークを構築することができるのがメリットです。
AWS Lambda
Lambdaは、サーバレスの関数実行環境です。サーバーレスなので、サーバーやOS、ミドルウェアの管理を気にしなくていい点もメリット。そのため、開発者はコーディングに集中でき、高速なシステム開発が可能になります。負荷に応じて自動的に拡張するため、「ユーザーから大量のリクエストが来たときにサーバーの負荷を気にしたくない」といった要望にも応えられるほか、「なるべくシンプルにコーディングしたい」「サーバーの常時起動はせずにコストを抑えたい」という企業におすすめです。
デメリットとしては、メモリ上限が決まっていることや、実行最大時間が15分の制限が挙げられます。また使用言語としては、Node.js12~16、Python3.7~3.9、Java8,1、Go1.x、Ruby2.7などをサポートしています。
参考:LambdaのWebコンソール画面
Amazon S3
S3は、インターネットから使用可能なオブジェクトストレージサービスです。小さなテキストファイルからビッグデータまで、多くのユースケースであらゆるデータを保存することができます。
データ耐久性は99.999999999%であり、裏側では3つ以上のコピーが保存されます。
また、コストパフォーマンスも非常に優れており、100GBのデータ保存が月2.5ドル程度で使用できます。またS3 Glacierなどのデータアーカイブ用のS3を使用すれば、100GBのデータが月0.5ドル程度で保存できます。注意点として、S3 Glacierなどのアーカイブ用のストレージは、データアクセスの際の料金が割高だったり、所要時間を要したりする場合があります。
よくある使用例としては、直近使用するデータをS3に保存し、1年経過後のデータなど使用頻度が高くなくなったらS3 Glacierに移動する(オブジェクトのライフサイクル)といった使い方をよく見かけます。
また、ストレージのログを取得でき、アクセス制御や暗号化、バージョニング(履歴)の設定も可能なため、非常に使い勝手が良いサービスです。
参考:S3のWebコンソール画面
Amazon RDS
RDSは、AWSが提供するリレーショナルデータベース(RDB)です。リレーショナルデータベース(RDB)というのは、すごく簡単に噛み砕くと行と列からなる表形式のデータベースです。エクセルのようなものをイメージするとわかりやすいかもしれません。RDBのメリットとしては、データ整合性の高さや、処理の実行(トランザクション)管理の正確性などが挙げられます。このため、銀行の入出金の管理など、特にデータの整合性・正確性の高さが求められるサービスで重宝されます。
RDSではPostgreSQLやMySQL、有償のMicrosoftのSQL ServerやOracleデータベースなどが使用可能です。SQL ServerやOracleデータベースなどは、料金にライセンス料金も含まれています。
機能としては、複数のデータセンター群にまたがってデータベースを配置し、可用性を高めるマルチAZ機能や、読み取り専用のデータベースを準備し、負荷を分散させ性能向上に寄与するリードレプリカ機能などが便利です。
参考:RDSのWebコンソール画面
Amazon DynamoDB
Amazon DynamoDBは、サーバレスで高速なNoSQLデータベースです。NoSQLというのは、リレーショナルデータベース(RDB)でないデータベースの呼称です。NoSQLの例としては、「田中太郎:男性・29歳」「山田花子:女性・24歳」といったキー・バリュー型などが挙げられます。
NoSQLのメリットとしては、処理速度が早く、扱えるデータの種類が多いことがありますが、RDBと比べてデータの一貫性が必ずしも担保されないというデメリットもあります。
DynamoDBは、アクセス数などに応じて自動的にスケールアップ/スケールダウンを行うため、ミリ秒単位の安定したパフォーマンスを出せるほか、コスト的にも最適化することができます。例えばオンライン会議で有名なZoomなども、バックエンドのDBとしてDynamoDBを使用しています。
参考:DynamoDBのWebコンソール画面
Amazon CloudWatch
CloudWarchとは、AWSサービスや仮想サーバーを監視できるモニタリングソリューションです。
仮想サーバのCPU使用率やディスク使用率、またAWSサービスの死活状態など、主要な監視項目についてはデフォルトのメトリクスとして、CloudWatchからすぐに監視を始めることができます。メモリの使用率やサーバのプロセスの監視など、任意の監視項目をカスタムメトリクスとして追加することも可能です。
また、CloudWatch Logsを使用することで、AWSサービスのログや仮想サーバのOSログ、アプリケーションログも監視できます。特定のキーワードやエラーコードによる検出も可能です。
これらのメトリクスの変化やログに応じて、Eメールなどへアラーム通知を行ったり、サーバの台数を増やすと言ったイベント実行をトリガーすることも可能。CloudWatchを使用することで、AWSサービスを簡単に組み合わせて低コストな監視が実現できます。
参考:CloudWatchのWebコンソール画面
Amazon SageMaker
SageMakerは、機械学習モデルを高速に開発、トレーニング、デプロイするためのモジュールを備えているフルマネージドMLサービスです。機械学習をビジネスで利用する場合、データ収集、モデル作成、トレーニング、デプロイのサイクルを何度も回す必要があります。SageMakerは、それらの各サイクルに対して様々なモジュールを提供しています。
例えば、Jupyter NotebookをAWS上で使用できるSageMaker Studio Notebooksであったり、自動的にモデル構築・トレーニングを実施可能なSageMaker Autopilot、またMarketplaceからサードパーティのアルゴリズムやモデルを使用することもできます。
画像引用:AWS
SageMakerは、TensorFlowなどの主要な機械学習フレームワークなどに対応しており、AWSによってプリインストール・最適化された機械学習のアルゴリズムを用いることができます。
例えば韓国の自動車大手Hyundaiは、自動運転のモデルトレーニングにSageMakerを用いています。SageMakerを活用することによって、もともと57分かかっていたトレーニング時間が6分まで減少しました。これによりデータ準備により多くのリソースを割くことが可能となり、さらなる精度向上に繋がります。
Amazon Cognito
Cognitoは、ログインや権限制御の機能をウェブやモバイルのアプリケーションに簡単に追加できるSDKサービスです。SDKとは、Software Development Kitの略で、開発に必要なAPIなどをパッケージ化したものです。また、Cognitoはコグニートと発音します。
Cognitoは認証・認可・ユーザ管理を実現でき、ID/Passwordログインの他、FacebookやGoogle、AppleなどのIDを用いたサインインをサポートしています。Firebase Authenticationに近いサービスだと考えるとわかりやすいです。
画像引用:AWS
イリギスの政府機関であるNHS Digitalや、グローバルのセキュリティ企業であるトレンドマイクロなど、名だたる組織・企業がCognitoを採用しています。
AWS CLI
AWS CLIとは、AWSのサービスを管理するための統合ツールであり、AWS Command Line Interfaceの略称です。Linuxなどのサーバからコマンドを実行し、AWSサービスの操作が可能です。
AWSはWebブラウザからも操作できますが、コマンド化することで得られるメリットも存在します。例えば、手作業による人為的ミスの減少や、繰り返し作業をプログラム化することでの効率化があげられます。また、最大のメリットとしては、CLIを使用することで多くのAWSサービスをシステムに組み込むことができます。
CLIの実行イメージ
AWS上のEC2やCloud Shell上からの実行はもちろんのこと、個人/法人のWindowsやMac、Linuxサーバからも実行することができます。また、リソース一覧の取得などもCLIを使うことで、CSVファイルなどで入手することができます。
AWSを導入するメリット
AWSにはどのようなサービスがあるのか、AWSを導入することで何ができるのかのイメージを掴んでもらいました。次に、AWSを導入するメリットを詳しく解説します。
APIの充実性・精度
APIについても、AWSが秀でている部分が多いです。例えばSDK(Software Development Kit)の対応言語を見ると、AWSはJavascript、Python、PHP、.NET、Ruby、Java、Go、Node.js、C++などに対応しています。
一方、AzureではPython、Goなどには対応していますが、RubyとPHPには対応していません。またGoogle Cloud(GCP)も、Python、Ruby、GOなどに対応していますが、.NETやC++には対応していません。対応言語に関しては、AWSに一日の長があるのではないでしょうか。AWSのSDKとしては、例えばPythonのBoto3などが特に有名です。ドキュメントも非常に整備されています。
Python SDK(Boto3)のドキュメント体系
画像引用:AWS
AWSは基本的にすべての操作をAPIで実現可能です。一部、コンソールからは変更不可な設定なども、APIでは設定可能な場合がほとんどです。このように、APIを基軸としてサービスが作られている印象があります。
そのような特徴から、Infrastructure as Code(IaC)ツールであるTerraformに対応しているリソースが多かったり、CI/CDサービスであるCircleCIでAWS CLI実行やS3、ECS(コンテナサービス)などの豊富なプラグインがあったりと、連携できるサービスが多いことが特徴です。
CircleCIがサポートしているAWSサービス
画像引用:CircleCI
対応している国・地域や実績の多さ
対応している国や地域についても、各クラウドで差があります。例えば、AWSは190カ国以上、Azureは140カ国以上、GCP200以上の国と地域で使用可能との記載があります。
データセンターの存在するリージョン/ロケーションの数にも差があります。AWSのリージョン数は2022年11月時点で29に対し、Azureは60以上、GCPは35のリージョン/ロケーションが存在します。また、AWSとAzureには米国政府専用のリージョンも設けられています。
リージョン/ロケーション数の多さは、アプリケーションの応答時間に直結します。例えば関西圏のユーザーは、東京よりも大阪ロケーション/リージョン上のアプリケーションにアクセスした方が早く応答(レスポンス)を得られます。このように、物理的距離による通信速度というネックがあるため、リージョン/ロケーション数の多さは応答時間に直結します。
実績の数についても考察します。AWSやAzure、GCPがHPに掲載している事例数については、AWSが259、Azureが218、GCPが199で、業種や企業規模ともに各社バランスよく事例を掲載していました。
一方で、シェアを見るとAWSは2017年代から30%以上のシェアを継続して維持している一方、Azureは2017年時点では12-13%程度で、そこからじわじわとシェアを伸ばし現在21%、GCPは1桁台のシェアを少しずつ増やしています。このシェアの割合から、過去から現在までに積み上がっている事例に関しては、やはりAWSが頭ひとつ抜けているのではないでしょうか。
多くの国でサービスを提供する予定であり、最も実績が豊富なクラウドサービスを使いたい企業には、AWSが適しています。
情報量
インターネット経由でアクセスできる情報についても、AWS、Azure、GCPで比較してみます。まずは、各社公式ドキュメントで、サービスの仕様やサンプルコード、APIの利用方法を公開しています。特にAPIのドキュメントに関しては、GCPやAWSは比較的わかりやすい一方、Azureは必要な情報を見つけるのが他クラウドと比較しやや難易度が高いと感じます。
また、各社の公式ドキュメントに加えて「やってみた」系の個人や企業の技術記事などの多さも重要です。開発会社は、これらの記事を参考に技術検証を行う場合も多くあるためです。例えば一番基本的な仮想サーバーについて、国内の技術プラットフォームであるQiitaで検索してみました。「Amazon EC2」の検索結果が約11500件、「Azure VM」の検索結果が約2000件、「google compute engine」や「GCE」が約1600-1800件と、AWSの仮想サーバーであるEC2に関する技術記事が非常に多く存在していることがわかります。
Qiitaでの検索結果
AWSは2006年と最も歴史が長く、常にトップシェアを取ってきたこともあり知見が多く転がっています。一方でAzureは2010年でシェアを上げてきたのは最近であること、GCPは2008年で数%のシェアに止まっていることなどもあり、トラブルシューティングや細かい設定などの情報量には大きな差が出ています。
上記のスキルがなくても、簡単に高速にAWSを活用したい、という方には、Definer社のPrismscalerというソリューションもおすすめ。頻出のAWSのアーキテクチャ(サービスの組み合わせ)を数クリックで構築できる他、自動監視や問題検知なども自動で実施でき、クラウドエンジニアの肩代わりとなるようなソリューションです。
画像引用:Definer Inc.
もし自社で使いこなすのが難しいと感じたらプロに依頼しましょう。「どの開発会社に任せたらいいか分からない」「どの会社も同じように見える」とお悩みの方はシステム幹事にご相談ください。導入目的に合わせて最適な開発会社をご提案します。
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AWSの成功事例
ここでは実際にAWSを導入して自社の課題を解決した事例を3つ紹介します。よりリアルに自社への導入をイメージできるはずなので、ぜひ参考にしてください。
AWSを使ってデータ活用を推進|東京海上日動火災保険株式会社
画像引用:AWS
東京海上日動火災保険株式会社は、日本初の保険会社として創業され、現在はグローバルに展開する子会社および関連会社 274 社で構成され、国内損保、国内生保、海外保険事業という3つの事業を展開しています。
同社はテクノロジーとデータを活用したデジタル戦略を推進しており、AWSを用いたデータの分析基盤を整えるとともに、基幹系のデータ保存にもAWSを使っています。
東京海上日動火災保険株式会社の動き出しは早く、2013年にはクラウド活用を開始し、分析基盤などのクラウド化を進めました。また、クラウド開発の高速化、効率化が社内で定着したことを確認し、2017年からは基幹系のデータ保存のAWS化にも着手しました。
画像引用:AWS
内製化も推し進めており、基礎的な知識・スキルを学ぶためのハンズオンの実施や、AWSのAssociateやProfessionalレベルの中上級者層の育成も推進しています。
AWSをうまく利用し、データドリブン基盤の整備と内製化を行った良い事例と言えます。
雨雲レーダーの精度向上を実現|株式会社ウェザーニューズ
画像引用:ウェザーニュース
株式会社ウェザーニューズ(以下ウェザーニュース)は、世界最大規模の民間気象会社として気象予測をリードしています。
ウェザーニューズでは、政府機関から提供される気象予測の基本データに加え、独自の観測や画像処理などのインフラを自前で構築してきました。2005 年には独自の気象モデルを開発し、1 時間間隔で 3 日先までの独自予測が可能になりました。またそれに満足せず、15 時間先まで10分間隔で予報するサービス実現に向けた取り組みを開始しました。
ゲリラ豪雨のようなイレギュラーな天候も近年増える中で、この実現のためには大量の計算リソースが必要となります。その中でウェザーニュースは、AWS ParallelClusterとDynamoDBを活用してこれらを実現しました。
ランニングコストも、オンプレミスと比較し全体のコストが1/3となると試算されています。
画像引用:AWS
AWSを活用し、コストを大幅に抑えつつ機械学習の精度を上げた非常に良い例の1つです。
新型コロナ追跡システムで大阪府民880万人に貢献|大阪府
画像引用:AWS
関西地方の経済・交通の中心である大阪府は、880万人以上の人口を抱える自治体です。
2020年に設置された大阪府のスマートシティ戦略部では、新型コロナウイルスの感染拡大抑制対策として、コロナ追跡システムの構築に乗り出しました。イベントなど不特定の人が集まる場所にQRコードを設置し、イベント参加者がスマートフォンからQR コードを読み込み、メールアドレスで登録するというものです。
大阪府はコロナ追跡システムのリリース時期について、緊急事態宣言の解除が予想される5月末を想定しており、残された時間は数週間程度と限られたものでした。
大阪府はフットワークの軽いスタートアップ企業と協業し、Amazon EC2やS3など基本的なサービスやSESなどのEメールサービスを最大限を活用し、計画からわずか2週間でサービスをリリース。
運用開始後に生じたさまざまなニーズに応える機能拡充も迅速に行いました。例えば大阪府は、メール受信者が PCR 検査や抗原検査を無償で受けられるような制度を整備しました。
システム幹事ではAWSでのシステム開発におすすめの会社も紹介しています。詳細は下記記事をご参照ください。
関連記事:AWSでのシステム開発・構築に強い会社13選!会社比較チェック項目付【2022年最新版】
AWSのまとめ
AWSの概要と主な機能、導入のメリット、成功事例について紹介しました。
- AWSは業界のリーダーであり、幅広い領域のサービスを提供している
- 190カ国以上で使用可能であり、多くの実績がある
- インターネット上に知見が多く存在するため、トラブルシューティングや細かい設定についての情報にアクセスしやすい
AWSは通常のIaaSからコンテナ・サーバレス、またAIやデータ分析などの便利な機能を搭載していますが、プログラミングやデータベース設計など専門知識がないと使いこなせないケースも少なくありません。
自社の力だけではAWSを使いこなすのが難しいと感じたら、プロに外注することをおすすめします。開発会社選びに困った場合は、システム幹事にご相談ください。予算や目的から最適な会社をご紹介します。相談料などは一切かかりません。
コンサルタントのご紹介
岩田
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初心者の方でも安心してご相談いただけます。
必ず開発会社に発注する必要はありません。システム開発の相場の情報から最適な会社選びまで無料でサポートします。お気軽にご相談ください。
Q. Amazon Web Service(AWS)とは何ですか?
Amazon Web Service(AWS)とは、2006年にAmazonがリリースしたクラウドサービスのことです。業界のリーダーとして様々な領域・ユースケースのサービスをバランスよく提供しています。
Q. Amazon Web Service(AWS)のメリットは?
Amazon Web Service(AWS)のメリットは「連携できる外部サービスが多い」「190以上の国で対応している」などです。詳細は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いた人
Definer Inc. | ライターチーム
専門分野: クラウド開発・クラウド移行(フルスクラッチ開発・自社SaaS提供・AI Ops構築)
外資IT企業出身のトップエンジニアが、企画・要件定義の上流から開発まで、総合的なITソリューションをワンストップ提供しております。また、AWS、Azure、GCPでのクラウド開発・移行、フルスクラッチなアプリ・システム開発を得意としています。「2025年の崖」を打破すべく、クラウドに関するお役立ち情報をお届けします。
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