- 更新日 2024.10.17
- カテゴリー アプリ開発
LinuxでGUIアプリを開発するには?X Window SystemやGUIアプリ開発環境を紹介【2024年最新版】
「社内で利用するGUIアプリをLinuxで開発したい」「LinuxでマルチプラットフォームのGUIアプリを開発したい」「でもLinuxのことはよくわからない」そんな企業担当者の方であれば、以下のようなことを知りたいはずです。
・LinuxのデスクトップGUIには種類がある?X Window Systemってなに?
・LinuxのGUIアプリを簡単に開発できるツールはある?
・マルチプラットフォームのIDEならLinuxのGUIアプリを開発できる?
そこで本記事では、GUIデスクトップ環境を実現するX Window Systemを含むLinuxの基本を解説するとともに、LinuxでGUIアプリを開発するための環境・ツールを紹介!初心者の方にもわかりやすいよう、できる限り簡単に解説していきます。
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Linux(リナックス)の基礎知識
画像引用:Linux
Linux(リナックス)は、1991年に初版がリリースされたオープンソースのUNIX系オペレーティングシステム(OS)です。当初はデスクトップPC向けOSとして開発されましたが、現在ではWebサービス・アプリのサーバOSとして活用されています。また、スーパーコンピューター、メインフレーム(汎用機)、組み込みシステムなど、大小さまざまなコンピューターを制御する標準的なOSとして幅広く利用されています。
ただし、Linuxには「オペレーティングシステムのカーネル(Linuxカーネル)」という狭義の意味と「Linuxカーネルをコアにした各種オペレーティングシステム」という広義の意味があります。簡単に解説していきましょう。
LinuxカーネルとLinuxディストリビューション
画像引用:カーネル
Linuxカーネルとは、1991年にリーナス・トーバルズ氏が開発した最初のLinuxのこと。カーネルとは、オペレーティングシステムの核となり「ハードウェアコンピューター」の制御を担うコアOSのこと。原則として、コマンドラインで操作するCUI(キャラクターユーザーインターフェース)であることが特徴です。
コアOSの役割を担うLinuxカーネルは、システム・アプリ開発を前提としたサーバOSのベースに最適ではあります。しかし、利用できる機能は最小限。そこで、無償で公開されているLinuxカーネルをベースに、OSとしての各種機能を追加した「広義のLinux」が各社からリリースされるようになったのです。これを総称したものを「Linuxディストリビューション」と呼びます。
画像引用:ubuntu
たとえば、「Server」「for IoT」「Cloud」のほか、無償でMacやWindowsにインストール可能な「Desktop」をラインナップする「Ubuntu」などが、Linuxディストリビューションの代表例。GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)のデスクトップ環境を提供するほか、メーラーやブラウザなども付属しています。
画像引用:Red Hat
商用サーバOSとして多くの企業から採用される「Red Hat Enterprise Linux」も、Linuxディトリビューションのひとつ。Linuxカーネル自体は無償で利用できるオープンソースOSですが、Red Hat Enterprise Linuxのように有償かつサポートが付属するLinuxも存在するのです。
X Window Systemはアプリ開発に便利
サーバOSとして利用されることの多いLinuxは、必ずしもGUIを必要としません。しかし、macOS・WindowsのようにデスクトップPCでアプリを利用したりアプリを開発するには、やはりGUIがあった方が便利。これを実現する技術が「X Window System(X / X11とも呼ぶ)」です。
フリーソフトウェアとして提供されているX Window SystemはX.Org Foundationによってプロジェクト管理されており、LinuxのほかにUNIXなどでも利用可能です。
アプリ開発に必要なLinuxのGUIデスクトップ環境
もちろん、仕組み・機能であるX Window Systemだけでは、LinuxのGUIデスクトップ環境を実現できません。macOSでいう「Finder(ファインダー)」のようなデスクトップを構築するには、GUIツールキットで開発されたGUIデスクトップ・アプリケーションが必要です。
GUIを提供する多くのLinuxディストリビューションでは、主に「GNOME」「KDE」のGUIデスクトップ・アプリケーションが採用されています。
GNOME(グノーム)
画像引用:GNOME
GNOME(グノーム)は、GNOME Foundationによって開発された、X Window Systemで動作するGUIデスクトップアプリケーションです。開発当初はWindows風の見た目でしたが、2.8からmacOSのアクア風の見た目へと変更。最新のGNOME 3ではユーザーインターフェースを「GNOME Shell」に置き換える刷新が行われています。
画像引用:Wikipedia
さまざまなLinuxディストリビューションがデスクトップ環境の標準対応として活用しています。
GTK(GUIツールキット)
画像引用:GTK
GNOMEインターフェースのルック&フィールを開発するために使われているGUIツールキットが、同じGNOME Foundationが開発する「GTK」です。GTKはGNOME専用に開発されたわけではなく、macOS・Windows・Linuxで利用できるGUIツールキットでもあることが特徴。LinuxでGUIアプリを開発する際に利用されることの多い、重要なGUIツールキットです。
GNOMEのライブラリで、GNOMEのデスクトップ環境の機能を使ってアプリ開発はできます。ただし、GTKだけでアプリ開発もできるのです。
KDE(ケーディーイー)
画像引用:KDE
KDE(ケーディーイー)は、The KDE Teamによって開発された、X Window Systemで動作するLinux向けGUIデスクトップアプリケーションです。ウィンドウマネージャー・ファイルマネージャーなどのデスクトップ環境以外にも、テキストエディタ・イメージビューアー・Webブラウザ・スプレッドシートなどのアプリケーションも提供しているのが特徴です。
画像引用:Wikipedia
KDEのアプリケーション自体は「KDE Frameworks」で開発されていますが、インターフェースを構築するGUIツールキットとしては「Qt Design Studio(キュート・デザインスタジオ)」が採用されています。
LinuxでGUIアプリを開発するには
GUIデスクトップ環境を開発するためには「GUIツールキット」が重要な役割を果たしていることがお分かりでしょう。同じように、LinuxでGUIアプリを開発する際も上述したGUIツールキットがポイント。以下から、LinuxでGUIアプリを開発するのに必要な環境を、いくつかのパターンに分けて紹介していきましょう。
Qt for Application Development
画像引用:Qt for Application Development
「Qt for Application Development」は、The Qt CompanyとQtプロジェクトによって開発される、デスクトップ向けクロスプラットフォーム・アプリケーション開発スイート。統合開発環境である「Qt Creator」、GUIツールである「Qt Design Studio Professional」、フレームワーク「Qt Framework」がバンドルされ、Linux向けのリッチなGUIアプリ開発が可能。共通のソースコードで macOS・Windows・Androidアプリも開発・テスト・デバッグ・ビルド・デプロイできます。
C++に標準で対応するほか、サードパーティ製のAPIを活用することで、Python・Ruby・C#など、多数のプログラミング言語を利用可能。Qtのマークアップ言語であるQMLを利用し、直感的にGUIをデザインできます。原則として有償の商用ライセンスとなりますが、GPLのオープンソースライセンス版も利用可能。GUIツールキットにQtを採用するデスクトップ環境での開発に最適です。
MonoDevelop + GTK
画像引用:MonoDevelop + GTK
「MonoDevelop」は、Monoコミュニティで開発・管理されるオープンソースの統合開発環境(IDE)です。.NET Framework互換のMono環境での動作を前提としていますが、Ubuntu / Red Hat Linuxなど、LinuxディストリビューションのGUIアプリ開発に利用されることが一般的。開発言語がC# / F#をメインにしているため、Windowsアプリ開発に慣れている方なら使いやすいIDEだといえるでしょう。
MonoDevelop自体にもGUIを作成する機能はありますが、ウィジェットでGUIをデザインできる「GTK」と連携することにより、より直感的にアプリ開発を進めることも可能。同じく、GTKをGUIツールキットとして活用する、GNOMEデスクトップアプリケーション上でのLinux GUIアプリ開発に適しています。
JDK + Eclipse + JavaFX
マルチプラットフォームのデスクトップGUIアプリ開発という意味では、JDK + Eclipse + JavaFXというJava環境でLinux GUIアプリを開発する方法もあります。Java仮想マシン(JVM)で動作するJavaアプリであれば、macOS・WindowsなどLinux以外のアプリ開発にもソースコードを流用できるのです。
画像引用:ORACLE
上記のORACLEの公式サイトからJDKをインストールして、手動でコンパイルします。つづいて、Eclipseもインストールします。
Javaのアプリ開発に必要な環境の基本となるのは「JDK(Java Development Kit)」+「Eclipse(IDE)」です。JDKとは、文字通りJava開発に必須のツールをまとめた開発キットのこと。具体的には、以下のようなツールがJDKに含まれます。
JRE(Java Runtime Enviroment) |
Javaの実行環境 |
---|---|
コンパイラ |
JavaソースコードをJVM用の Javaバイトコードに変換するツール |
デバッカ |
バグを見つけて修正するためのツール |
Java SE |
よく使うクラスを集めたライブラリ |
Eclipseは、アプリ開発に必要なツールをまとめた統合開発環境(IDE)のこと。Eclipse以外にもさまざまなIDEを利用できますが、Javaの開発環境が標準で搭載されているEclipseは、javaアプリ開発のデファクトスタンダードともいえる存在です。
Javaアプリ開発の詳細は下記記事をご参照ください。
関連記事:Javaアプリ開発で作れるアプリ・必要な開発環境・フレームワークを紹介!
参考:Visual Studio for Mac
参考までに、MacでLinux GUIアプリを開発する方法にも触れておきましょう。Microsoftが開発・提供しているmacOS向け統合開発環境「Visual Studio for Mac」は、MonoDevelopの別ブランドという位置付けの製品です。つまり、GTKとも連携できるVS for Macであれば、Linux GUIアプリをGTKプロジェクトから開発可能です。
LinuxでLinux GUIアプリを開発するというこだわりがない方なら、Mac・Windows + Java・VS for Macなどの組み合わせを活用する方法もあるでしょう。
Linuxアプリ開発GUIまとめ
本記事では、GUIデスクトップ環境を実現するX Window Systemを含むLinuxの基本を解説するとともに、LinuxでGUIアプリを開発するための環境・ツールを、初心者の方にもわかりやすいよう、できる限り簡単に紹介・解説してきました。アプリ開発に必要なLinuxのGUIデスクトップ環境は、GNOMEやGTK、KDEです。LinuxでGUIアプリを開発するにはいくつか方法がありますが、なかでもQt for Application Developmentをはじめとする開発方法が主たる方法です。
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Q. LinuxでGUIアプリを開発する際に必要な環境は?
LinuxでGUIアプリを開発する際に必要な環境は「Qt for Application Development」「MonoDevelop + GTK」等です。それぞれの詳しい内容は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
Q. アプリ開発に必要なLinuxのGUIデスクトップ環境は?
アプリ開発に必要なLinuxのGUIデスクトップ環境は「GNOME(グノーム)」「GTK(GUIツールキット)「KDE(ケーディーイー)」等が挙げられます。詳しくは記事をご覧ください。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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