ソフトウェア開発の瑕疵担保責任|契約不適合責任との違い・リスク

ソフトウェア開発の瑕疵担保責任|契約不適合責任との違い・リスク

ソフトウェア開発の依頼を検討しており、トラブル発生時の責任がどうなるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ソフトウェア開発の瑕疵担保責任や、契約不適合責任との違いなどを紹介します。

トラブルを回避しながらソフトウェア開発を進めるために、本記事をお役立てください。

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目次
  1. 1. ソフトウェア開発における瑕疵担保責任とは
  2. 2. 民法改正により瑕疵担保責任は「契約不適合責任」に
  3. 3. 瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い
    1. 3-1. 責任内容
    2. 3-2. 責任追及期間
    3. 3-3. 一部報酬請求の範囲
  4. 4. ソフトウェア開発を含む契約不適合責任で問える事項
    1. 4-1. 追完請求
    2. 4-2. 代金減額請求
    3. 4-3. 損害賠償請求
    4. 4-4. 契約解除
  5. 5. ソフトウェア開発の契約不適合責任に該当する・しないケース
    1. 5-1. 該当しないケース
  6. 6. ソフトウェア開発のトラブルを回避するために契約前に確認しておきたい事項
    1. 6-1. 業務範囲
    2. 6-2. 仕様変更時の取り扱い
    3. 6-3. 報酬の支払い
  7. 7. 準委任契約では責任が問われる?
  8. 8. 【まとめ】ソフトウェア開発の瑕疵担保責任を説明しました

ソフトウェア開発における瑕疵担保責任とは

瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは旧民法634条・635条に明記されている、売り手が買い手に対して商品に瑕疵(かし)があった場合に負う、法的な責任のことを指します。

ー仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、

その瑕疵の修補を請求することができる。

ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。 

注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。

この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。


ー仕事の目的物に瑕疵があり、

そのために契約をした目的を達することができないとき

注文は者は、契約の解除をすることができる。


引用:民法の一部を改正する法律案新旧対照条文

瑕疵とは欠陥のことであり、商品が取引の上で約束された状態や性質が欠けている状態を指します。ソフトウェア開発の文脈では、成果物に不具合が生じて契約内容を達成しない場合、瑕疵担保責任として発注者がベンダーに修正や契約解除など要求します。

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民法改正により瑕疵担保責任は「契約不適合責任」に

瑕疵担保責任は旧民法に記載されていましたが、2020年4月1日に民法改正が施行され、「契約不適合責任」に名称が改められました。

旧民法の瑕疵担保責任では、条文解釈に「法定責任説」と「契約責任説」の2つに見解が分かれるケースが多いのが現状でした。そこで民法改正に伴い、より分かりやすい名称に改められ、責任内容や責任追及期間などが拡張されました。

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瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

システム幹事

ここからは、瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いをみていきましょう。

責任内容

旧民法の瑕疵担保責任では、責任内容は修補請求・契約解除・損害賠償責任の3つでした。一方で、改正民法の契約不適合責任の責任内容は、修補請求・契約解除・損害賠償責任に加えて、代金減額請求が追加されています。そのため、ソフトウェア開発の依頼者は、契約不適合が発覚した場合に問える責任の項目が増えました。

出典:民法【(請負人の担保責任の制限)第六百三十六条】
出典:瑕疵担保責任について|国土交通省

責任追及期間

旧民法の瑕疵担保責任は「納品物を引き渡した時」もしくは「仕事完了時」から、1年以内であれば責任を問えました。一方の契約不適合責任では、依頼者側が不適合を知ってから1年以内であれば、買い手は売り手に責任を問えるように変更されています。

ソフトウェア開発においては、ソフトウェアの納品後に不具合を発見したら、そのタイミングから1年以内であればベンダー側に責任を問えます。契約不適合責任は、依頼者側の責任追及期間が延びているので有利になります。

出典:民法【(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)第六百三十七】
出典:瑕疵担保責任について|国土交通省

一部報酬請求の範囲

旧民法の瑕疵担保責任は、ベンダーに帰責事由がない場合に限り、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できました。一方で、改正民法の契約不適合責任は、売り手に帰責事由がある場合でも、一定の場合に履行した部分の割合に応じて報酬を請求できます。

ソフトウェア開発においては、ベンダー側に何かしらの責められるべき理由があった場合でも、一定の場合でベンダーは実施したプロジェクト分の報酬を請求できます。そのため契約不適合責任では、一部報酬請求の範囲が広がっています。

出典:民法【(受任者の報酬)第六百四十八条 第三項】
出典:民法の一部を改正する法律案新旧対照条文

ソフトウェア開発を含む契約不適合責任で問える事項

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続いて、ソフトウェア開発を含む契約不適合責任で、依頼者がベンダーにどのような責任を問えるのかをみていきます。

追完請求

納品物の種類、品質、数量などに関して契約不適合が発覚した場合、依頼者はベンダーに対して、契約に適合した履行を求めることができます。例えば、目的物の修補や代替物の引渡し、不足分の引渡しなどが該当します。依頼者は、契約内容に適合する状態まで、プロジェクトを行ってもらえます。

出典:民法【(買主の追完請求権)第五百六十二条】

代金減額請求

契約不適合責任は、依頼者がベンダーに履行の追完を催告しても、期間内に実行がされないまたは履行不能の場合などに、不適合の程度に応じて代金減額を請求可能です。

例えば「ソフトウェアのバグ修正に時間がかかって予定よりも大幅に遅延する」「修正不可能なバグが発見される」といったケースの場合、契約時の料金から何割か減額を求められます。

出典:民法【(買主の代金減額請求権)第五百六十三条】

損害賠償請求

契約不適合責任では、開発したソフトウェアのトラブルで「通常業務が行えない」「バグの修復が不可能」な場合に、損害賠償を請求できる可能性があります。

出典:民法【(債務不履行による損害賠償)第四百十五条】

契約解除

契約不適合責任において、一般的な法定解除の要件を満たした場合、契約解除が可能となります。法定解除には「催告解除」と「無催告解除」の2種類があります。

催告解除は、依頼者側が相当期間を定めて、追完の催告をしたにもかかわらず、追完がされない場合に認められます。契約不適合が軽微なものである場合は、認められないので注意しましょう。

無催告解除は契約書に明記された内容に違反した場合、相手方に対してただちに契約解消を通告する措置のことです。「履行が不能」「ベンダーが履行を拒絶する意思を明確に表示」といったケースで認められます。

出典:民法【(催告による解除)第五百四十一条、(催告によらない解除)第五百四十二条】

ソフトウェア開発の契約不適合責任に該当する・しないケース

続いて、ソフトウェア開発の契約不適合に該当する・しないケースを紹介します。
該当するケース

  • ソフトウェア不具合の修補が遅延している
  • ソフトウェアの不具合が順次発見される

ベンダー側に過失があったり、発注者に損害が発生したりするケースは、契約不適合責任に該当します。

該当しないケース

  • ベンダーが遅延なく不具合の修補を行った
  • 契約範囲外の原因で不具合が発生した
  • 発注者側が原因のトラブルが発生した

ソフトウェア開発の不具合に対してベンダーが迅速に対応したり、ベンダー側に過失がなかったりする場合は、契約不適合責任に該当しないケースがほとんどです。

ソフトウェア開発のトラブルを回避するために契約前に確認しておきたい事項

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大前提として、契約不適合があった場合の対応は、法律よりも契約書に明記されている内容が優先されます。ソフトウェア開発のトラブルを回避するためには、契約前に契約書の内容を確認しておくことが大切です。

業務範囲

契約書で業務範囲を明確にしましょう。業務内容を具体化することで、発注者側と受注者側で共通認識を持ち、役割分担しながらプロジェクトを進められます。さらに、万が一トラブルが発生しても、業務内容が明確になっているので、責任の所在を瞬時に把握しやすくなります。

仕様変更時の取り扱い

ソフトウェア開発は、プロジェクト進行中に仕様が変更になることは珍しくありません。仕様変更が原因でトラブルになるケースがあるので、事前にどういった対応をするのかという取り扱いを明確にしましょう。

報酬の支払い

ソフトウェア開発では、報酬の支払いでもトラブルが発生する可能性があります。そのため、いつまでに報酬を支払うのかを契約書で明確にしてください。

準委任契約では責任が問われる?

ソフトウェア開発では、準委任契約で業務を請け負うケースがあります。準委任契約とは、請負契約とは異なり、成果物の納品が約束されない契約のことです。作業に対して報酬が支払われるため、基本的に契約不適合の責任は問われません。

しかし、準委任契約でも成果完成型の契約の場合は、成果物の完成が必要です。完成できない場合はベンダーが債務不履行責任を負います。

また、準委任契約はベンダー側が依頼者に対して善管注意義務を負うことになります。善管注意義務とは、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負うことです。ソフトウェア開発の契約が準委任でも、ベンダー側に責任がないというわけではありません。

出典:民法【(受任者の注意義務)第六百四十四条、(受任者の報酬)第六百四十八条、(成果等に対する報酬)第六百四十八条の二】

【まとめ】ソフトウェア開発の瑕疵担保責任を説明しました

ここまで、ソフトウェア開発の瑕疵担保責任を紹介しました。2020年4月より、瑕疵担保責任は契約不適合責任に変更されています。瑕疵担保責任と契約不適合責任では、責任内容や追及期間などが異なります。本記事を参考に、トラブルを回避してソフトウェア開発を進めてみてください。

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