- 更新日 2024.10.17
- カテゴリー AI開発
AI開発でNVIDIAが注目される理由|製品を活用した取り組み事例も解説【2024年最新版】
AI開発を検討していて、どのようなハードウェアを用意すればよいかと考えるシステム担当者には、
「NVIDIAがAI開発で注目されている理由とは?」
「NVIDIAを活用するとどのようなAI開発ができる?」
「NVIDIAのAI開発ソリューションが知りたい」
などの疑問をお持ちの方もいるでしょう。
NVIDIAはアメリカの半導体メーカーであり、AI開発に向いているGPU(画像処理装置)を製造・販売しています。AI開発には画像処理をするためのGPUが必要になるので、NVIDIAのソリューションが注目されています。
今までにAI開発をした経験がないと、なぜAIにおいてNVIDIAが注目されているのか、どのような活用事例があるのかをイメージできないでしょう。AI開発する前にGPUを製造・販売するNVIDIAの取り組み事例やソリューションを把握することが重要です。
本記事ではAI開発でNVIDIAが注目される理由・取り組み事例を解説します。本記事を読むことで、AI開発においてNVIDIAに注目が集まる理由を理解でき、自社に適したGPUを選べます。
※NVIDIAのAI開発について詳しく知りたい方は、システム幹事にご相談ください。予算や目的をヒアリングし、最適な会社を選定します。相談料も紹介料も一切かかりません。
AI開発に役立つ記事もご覧ください NVIDIAの前におさらい!AI開発の流れや手順、利用されるプログラミング言語まとめ
AI開発でNVIDIAが注目される理由
画像引用:NVIDIA
AI開発をする際は、特有のハードウェアとして「GPU」が必要です。GPUとは「Graphics Processing Unit」の略で、3次元(3D)グラフィックスなどの画像作成・処理をする際の演算を行う半導体プロセッサのこと。GPUと似た言葉でスマホやパソコンに搭載されているCPUは、高性能なものだと瞬時に複雑な計算が終わりますが、一度に1つのデータ処理しかできません。
高いシェア率と用途別GPU製品が10以上用意されている
NVIDIAはGPUの製造・販売において世界最大手のベンダーです。NVIDIAは1993年に創業して、3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)を高速処理するGPUを開発・販売しています。パソコンやゲーム機といった家庭用のGPUから、データセンター向け・車の自動運転向けの機器と幅広い製品を取り扱っています。NVIDIAのGPUは、世界中で高いシェア率を誇ります。2021年第4四半期のPC向けGPU市場に関する調査では、NVIDIAのGPUが81%のシェア率を獲得しました。
参考:PC Watch
NVIDIAではAIはもちろん、3Dアニメーションやゲーミングなどからも最適なGPUを選べることが特徴です。GPU製品も用途別に10以上用意されており、企業のAI開発の規模に応じて必要なものを探しやすいです。また、自動運転や医療など様々な分野での活用実績があることから、NVIDIAのGPUが選ばれる傾向にあります。
NVIDIAを活用したAI開発の取り組み事例
NVIDIAのAI開発の取り組み事例は、様々なものがあります。これからAI開発をするなら、事例を把握することで自社で作りたいものをイメージできるでしょう。
自動運転トラック
画像引用:自動運転LAB
2022年7月28日に中国の自動運転スタートアップPony.aiは、中国最大の重機メーカーSANY Heavy Truck (SANY) と提携して、レベル4(特定条件下における完全自動運転)の自動運転トラックを共同開発することを発表しました。新エネルギー車と内燃機関車(エンジンで発生した動力を効率よく駆動輪に伝える装置)の混合車両を生産する計画を検討しており、代替パワートレインのシェアを増やすことを目標にしています。
年々長距離トラックの需要が増えており、中国の大型トラック販売台数は130万台を超えましたが、労働力不足が業界の課題でした。自動運転トラックを開発することで、労働力不足を緩和させることを検討しています。
開発に使用する車両は、NVIDIAの自動運転車用ハードウェア「NVIDIA DRIVE Orin」で構築されたPony.aiの自動運転コントローラーで動作する仕組みです。NVIDIA DRIVE Orinは大型車両からスポーツカーなどの小型車両まで幅広く利用されるほど高性能で、短期的な展開が実現可能です。2022年内には自動運転トラックによる小規模な配送をスタートし、2024年までに大量生産を計画しています。そして、2032年までに世界中で毎年120万台以上の自動運転トラック・バスが配備され、半数以上が中国で稼働する予測です。
NVIDIAには自動運転向けのソリューションが用意されています。AIによる自動運転の開発をする際は、NVIDIAのソリューションが適しているでしょう。
ビジュアル検索ツール
アメリカの写真共有サービスPinterestは、画像内の特定の物体にズームインして、色・物などから類似画像を検索する「ビジュアル検索ツール」を展開しています。ユーザーは類似する画像を見つけやすくなり、キーワードで画像を検索する手間を短縮可能です。
ビジュアル検索ツールはGPUで高速化されたディープラーニングによるAIを使用。Pinterest ユーザーによってキュレーション(インターネット上の情報を特定のテーマに沿って収集、選別、編集すること)された数十億のデータセットを使用して、画像の特徴を認識する方法をシステムに学習させました。任意の画像を2つ選び、画像間の類似性を繰り返し分析することで、最適な一致を特定してビジュアル検索ツールを実現しています。
腎臓病患者のリアルタイムリスク予測
画像引用:NVIDIA
台湾の台北栄民総医院は、透析処置中に心不全のリスクをリアルタイム予測する AI モデルを使用して、患者の転帰(病気の進行した結果)を改善する取り組みをしています。台湾には約85,000人の腎臓透析患者がいて、人口密度に基づく世界で最も高い有病率です。心血管疾患は透析患者の主な死因で、同医院は90%の精度を達成するAIリスク評価モデルを使用して、透析患者の心血管疾患を緩和することを検討しています。
同医院のAIは、NVIDIA JetsonのエッジAI プラットフォームを含むNVIDIA AIテクノロジーを活用することで、透析装置のデータ・患者の医療記録・検査結果、投薬情報を組み合わせて使用するモデルを採用。その結果、リアルタイムでの患者データ分析が可能になりました。AIは臨床医向けのダッシュボードに分析したリスク予測の要因を表示し、透析装置のデータから異常パターンを検出します。そして、医師や看護スタッフへ直ちに警告しています。
同医院のAIモデルを活用したことで、心不全リスクの予測に加えて臨床医が患者の乾燥重量(体の中に余分な水分が溜まっていない時の体重および透析終了時の体重)を評価する際の偏差率を80%削減しました。それにより合併症のリスクを軽減することに役立ちます。
ビルの利用者数や混雑状況の可視化
画像引用:マクニカ
三井不動産株式会社が手がけるビルディング事業では、2019年9月にリニューアルした大阪中之島三井ビルディングで、経年優化(時間の経過とともに周囲の環境に馴染み、年月を経るたびに愛着・魅力がが深まること)に挑戦するため、AIでの画像認識技術を活用した取り組みを行いました。
同社ではNVIDIA GPUによるディープラーニングプラットフォームと、AI・IoT・ビッグデータなどのソリューションを提供するオプティム社の画像解析ソリューションを採用。3層のフロア全体に全42台のカメラを設置して、NVIDIA GPUディープラーニングプラットフォームにオプティム社のクラウドAI画像解析サービス「OPTiM AI Camera for Office Building」を活用しています。
これにより、ビルの利用者数や混雑状況を可視化したことで、人数カウントができるようになり、利用促進の施策分析を行っています。また利用分析した結果、当初は1人用での使用を想定して設置した席を2人で使っていることがわかり、席の配置換えの検討が可能になりました。
最近の事例!ファミリーマートでAIロボット導入
画像引用:ロボスタ
2022年8月10日にテレイグジスタンス株式会社が国内のファミリーマート300店舗で、NVIDIA AIが実装されたAIロボット「TX SCARA」の導入を発表しました。飲料陳列棚の補充作業をロボットに置き換えることで、バックヤード作業をしている従業員が接客などの付加価値が高い業務に集中できることを目指しています。
「TX SCARA」にはエッジのAI処理と、動画ストリーミングデータの伝送処理に「NVIDIA Jetson」を2種類搭載。実装されているAIモデルのトレーニングには「NVIDIA DGX Station」を活用することで、98%の精度を実現しました。「TX SCARA」のAIシステムはロボットに搭載の複数のカメラでスキャンされた飲料陳列棚データから品薄の各飲料を検知し、陳列の最適なパスプランを生成します。ロボットに陳列を指示することで、自動的に補充する仕組みです。
万が一ロボットの陳列エラーが発生した場合は、作業を中断して再起動する必要がありません。ロボットは遠隔操作モードに切り替わり、VRシステムによる遠隔制御で作業を復旧できます。バックヤード作業を行う必要がなくなったことに加えて、人手不足の解消につなげられるでしょう。
NVIDIAのAI開発ソリューション
NVIDIAはGPUの開発・製造だけではなく、様々なAI開発ソリューションを提供しています。AI開発を行う上で、ソリューションを把握することで「何を実現したいのか」を明確にできます。
データ分析
NVIDIAのAI開発ソリューションを活用してビッグデータの分析が可能です。NVIDIAのソリューションによってデータを高速分析することで、データ分析による待ち時間を減らし、企業課題を解決するAIテスト・実装に時間を費やせます。
NVIDIAにはデータ分析ソフトウェア「NVIDIA AI Enterprise」があり、企業向けのAI開発をサポート。オープンソースのフレームワーク・ツールによって、AIの開発環境を容易に構築して運用できるので、スムーズな開発を実現可能です。
「NVIDIA AI Enterprise」を利用するには、HPEやLenovoなどの主要ベンダーが提供するNVIDIA認証システムのサーバで利用できます。AI開発におけるNVIDIAサポートへの問い合わせやNVIDIA AI Enterpriseを使いこなすためのトレーニングを行っているので、開発中の疑問点を解消しながら進められるでしょう。
機械学習
機械学習とは、データ分析における学習手法の1つで、コンピューターが自動学習してデータのルールやパターンを発見する方法。従来の機械学習は、モデルの反復によるオーバーヘッド(処理に時間がかかる)が増加する課題がありました。NVIDIAのオープンソースプラットフォーム「RAPIDS」とプログラミング言語「NVIDIA CUDA」を使うと、NVIDIA GPUで機械学習を高速化し、データの読み込み・処理・トレーニングなどの機械学習操作を数日から数分に短縮できます。
NVIDIAの機械学習は、普通のカメラで撮影した映像を滑らかなスローモーション化できるAI技術「Super SloMo」に活用されています。Super SloMoは機械学習を利用して、映像の中間フレームを予測・自動生成することで、通常映像のスローモーション化を実現しました。アイスホッケーのゴール前での激しい攻防といったスローモーションでの確認が必要なシーンで使用されています。
画像引用:Gigazine
ディープラーニング
ディープラーニングとは機械学習の方法の1つであり、脳の神経回路の仕組みを模したニューラルネットワークを多層に重ねることで、学習能力を高める手法です。十分な学習データがあれば、自動的にデータから特徴を抽出してくれます。
AI開発において、画像認識や音声認識、ビジュアル検索など、高度なAIサービスへの対応の需要が高まっています。しかし、データセットが増加しネットワークが複雑化することで、ユーザーの期待に応える遅延要件が厳しくなる課題がありました。実稼働環境でディープラーニングモデルの展開を簡素化するオープンソースソフトウェア「NVIDIA Triton Inference Server」を使用すると、開発者が任意のフレームワーク(TensorFlow、PyTorchなど)から、トレーニングされたAIモデルをクラウドやストレージにデプロイが可能。すると、1つのGPUで複数のAIモデルを同時に実行し、使用率を最大化できるため、ディープラーニングによる推論を効率的に行えます。
NVIDIAのディープラーニング事例として、ユーザーの入力した単語や文章から画像を生成するAIがあります。実際に「sunset at a beach(ビーチの夕暮れ)」と入力した場合、パソコンの画面には夕暮れ時のビーチ画像が表示されます。文章が変化すると、それに合わせてリアルタイムで画像が変わって表示されるのが特徴です。
画像引用:PC Watch
ちなみに、AI開発においてGPUは、ディープラーニングとの相性が良いと言われています。ディープラーニング(深層学習)は大量の画像データを用いて学習を行うので、複数のデータ処理を同時に行う並列処理できないCPUで1つずつ処理していると膨大な時間がかかります。並列計算を得意とするGPUを利用することで、データ処理時間の短縮が可能です。ディープラーニングの詳細は下記記事をご参照ください。
関連記事:ディープラーニング(深層学習)とは?AI開発の発展を支える技術・開発手法を解説!
対話型AI
画像引用:NVIDIA Riva
対話型AIは、コンピュータが人間と自動で会話することを目的に開発されたAIです。対話型AIには正確な返答がなかったり、遅延したりする課題がありました。NVIDIAには、対話型AIアプリケーション向けのソリューション「NVIDIA Riva」を提供しています。NVIDIA Rivaは対話型AIに統合できるリアルタイムの音声AIパイプラインを開発するためのGPUです。NVIDIAの対話型AIを使用すると、300ミリ秒を下回る速度で応答するアプリケーションの構築が可能です。
そのため、対話型AIを開発する際は、NVIDIAのソリューションを活用することで、高性能なアプリケーションを実現できます。
※NVIDIAを活用したAIソリューションについて詳しく知りたい方は、システム幹事にご相談ください。予算や目的をヒアリングし、最適な会社を選定します。相談料も紹介料も一切かかりません。
NVIDIA GeForce利用時の注意点
NVIDIA GeForceは、NVIDIAが開発しているGPUのブランド名です。NVIDIAのGPUを利用する際は、大体がGeForceになるでしょう。あらかじめ利用時の注意点を把握することで、トラブルを回避しやすくなります。
行動規範・禁止行為を徹底的に把握する
NVIDIA GeForceの利用に限りませんが、メーカーによって行動規範・禁止行為が定められています。GPUを利用する際は、行動規範・禁止行為を遵守しなければならず、違反した場合は利用停止といった罰則を受ける可能性があるでしょう。AI開発中にGeForceを利用停止になると、開発が止まってしまい業務に影響が出るかもしれません。NVIDIAの公式サイトを必ず確認してから利用しましょう。
AI開発NVIDIAまとめ
AI開発には画像を描写するために必要な計算処理をするGPUが必要です。CPUはデータを1つずつ処理するので、大量データの処理を行うと膨大な時間がかかります。AI開発において大量データの処理を行うには、GPUが欠かせません。
NVIDIAはAI開発に向いているGPUの製造・販売をしています。豊富なラインナップが存在しており、企業の用途に合わせて最適なものを選べて、AI開発を効率的に行えるでしょう。
ただし、過去にAI開発をしたことがないと、GPUのイメージができないかもしれません。その際はシステム幹事にご相談ください。
※NVIDIAのAI開発について詳しく知りたい方は、システム幹事にご相談ください。予算や目的をヒアリングし、最適な会社を選定します。相談料も紹介料も一切かかりません。
Q. NVIDIAを活用したAI開発の事例は?
NVIDIAのAI開発の取り組み事例として「自動運転トラック」「ビジュアル検索ツール」「腎臓病患者のリアルタイムリスク予測」等があります。詳しい内容は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いた人