- 更新日 2024.09.27
- カテゴリー システム開発
システム開発は外注すべき?メリット・デメリットや外注先の選び方・注意点を紹介【2024年最新版】
システム担当者にとって、自社システムの開発を外注するか、社内で内製するかは悩ましい問題。最近は環境変化に素早く対応するため、内製化へ移行する動きもみられますが、社内のIT人材不足などから外注を選ぶ企業が一般的です。
この記事では情報システム部を6年経験した筆者が、どんな企業が外注化を選ぶべきか解説します。
さらに、システム開発を外注するメリット・デメリット、外注先の選び方、外注の相場や流れ、注意点など、外注をする際に必要なノウハウをまとめました。
失敗しないシステム開発、プログラム開発の参考にしてください。
※すでにシステム開発の外注を決めているものの、どの開発会社へ依頼すれば良いかわからない方は、システム幹事にご相談ください。目的・予算にあった最適な制作会社を「人力で」マッチングします。相談料・紹介料は一切かかりません。
システム開発に役立つ記事もご覧ください システム開発とは?工程・流れをプロが解説!発注者が知っておくべきポイント
- 1. システムの外注とは
- 2. システム開発の外注化と内製化の違い
- 3. システム開発を外注するメリット
- 4. システム開発を外注するデメリット
- 5. システム開発を内製するメリット
- 6. システム開発を内製するデメリット
- 7. システム開発を外注したほうがいい企業
- 8. システム開発を外注する流れ
- 9. システム開発を外注する際の注意点【外注前】
- 10. システム開発を外注する際の注意点【外注後】
- 11. システム開発外注費用の相場と内訳
- 12. システム開発の外注はどこに依頼するか
- 13. 失敗しないシステム開発を外注する会社の選び方
- 14. システム開発を外注した際の失敗事例
- 15. 【まとめ】システム開発の外注について紹介しました
システムの外注とは
システム開発の外注化とは、自社以外の企業にシステム開発を委託することを指します。通常は、複数社の見積もりを比較・検討し、自社の要望と合致した企業と契約する流れです。
システム開発を外注すると、開発に必要な人材や機材を揃えるコストが要らないことが大きな特徴です。また、開発会社にシステム開発をすべて任せて納品してもらう形式の他に、自社のオフィスに来てもらい開発してもらう形式も外注に含まれます。
最近ではの傾向は人件費の安い海外へ開発業務の一部や全部を委託するオフショア開発もさかんです。
システム開発の外注化と内製化の違い
システム開発の内製化は、これまでシステム開発を外部に委託していた状況から、自社内で開発する仕組みに変更することです。
内製化を成功させるには、社内でシステムの設計やプログラミングに詳しいメンバーを集め、適した開発環境を整える必要があります。ちなみに内製化は、プロジェクトの難易度が高くなればなるほど、人件費や開発環境の設備費が高騰しやすい傾向にあります。
外注をする場合はシステム開発に必要な人材や機材を用意せずに済む代わりに、内製よりも開発費用がかかりがちです。また、開発が終わったあとにエンジニアが余ってしまうこともありません。ただし、内製した場合は自社にシステム開発のノウハウが蓄積するというメリットもあるので、長期的にみると内製したほうが良いケースもあるでしょう。
システム開発を外注するメリット
システム開発を外注するメリットは、主に以下の6つです。
採用・育成の手間が省ける
システムに関する専門知識のある技術者の育成には手間がかかります。新たに採用するにも昨今のエンジニア不足では、すぐに良い人材が採用できるとは限りません。外注をする場合は開発会社が持っている人材や用意した人材が開発するため、エンジニアを急いで採用する必要がなくなります。
請負契約なら契約不適合責任を負わせられる
労働ではなく、成果物に対して報酬を払う「請負契約」では、システムの引き渡し後に不具合があった場合、修正に応じてもらうことができます。2020年4月に民法が改正され、それまでの「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」が、「契約不適合責任」という用語に変更になりました。
大きな違いは責任の存続期間です。
従来の「瑕疵担保責任」では成果物の引き渡しから1年後までだったのが、「契約不適合責任」では最長10年間に延長されました。システム開発会社によっては、これによる負担増を加味して、見積もり額を上げている可能性もあります。「契約不適合」となる場合とそうでない場合について、あらかじめ範囲を確認し、合意しておくと良いでしょう。
システム開発の契約については下記の記事も参考にしてください。
関連記事:システム開発の契約とは?契約形態・契約書の注意点を解説!
開発に必要な設備の投資が不要
社内で内製するとなると、人員のみならず、開発用マシンや周辺装置など新たな設備投資が必要になります。場合によっては開発用の部屋なども必要になるでしょう。外注であれば、開発時にかかる設備投資が不要です。
ただし、内製化に使用した機材や確保した人員は後の開発や運用でも流用できるため、開発をいくつも行う場合は長期的に見ると内製化のほうが効率が良いこともあります。
システム開発にかけるリソースを調整しやすい
システム開発を外注すると、開発プロジェクトのフェーズによって携わる技術者の数を増減させやすくなるというメリットがあります。
例えば、初期の設計段階では少数で経験豊富なエンジニアに開発してもらい、開発やテストなどの工程では技術者を増員して納期を短縮するような調整ができます。また、急な機能の追加や納期の変更などが発生して増員しなければ間に合わなくなるようなケースにも対応がしやすくなるでしょう。
ただし、外注する開発会社や契約内容によっては途中の変更ができなかったり、リソースの割り振りが固定されてたりするので事前に確認しておきましょう。
システム開発にかかる自社社員の手間を減らせる
システム開発を外注すると自社の社員にかかる負担を減らせるため、空いたリソースを他の業務へ回せます。開発が始まった後は、確認作業以外のほとんどの作業をシステム開発会社に任せられます。
ただし、最初の要求定義(課題や目標などを定める作業)や要件定義(必要な機能を洗い出して定める作業)などは自社の社員もかかわる必要があるので注意しましょう。この作業をおろそかにすると、欲しい機能がなかったり不要な機能が多かったりするシステムになってしまう可能性があります。
戦略設計や構想段階からプロにサポートしてもらえる
システム開発会社の中には、開発工程だけでなくサービスの戦略設計やシステムの構想段階からサポートしてくれる会社もあります。
サービスに必要なシステムの外注を考えている方で、サービス自体のコンサルティングも受けたい場合などは、あわせて支援してもらうことを検討してみても良いでしょう。サービス設計とシステム設計の両方の視点からサポート・アドバイスが受けられるため、よりサービスにマッチしたシステムの設計が期待できます。
システム開発を外注するデメリット
システム開発を外注するデメリットは、主に以下の6つです。
自社事業を自社社員のように完全に把握しているわけではない
システムは完成がゴールではなく、むしろスタート。いかに業務に活用して、事業を成功に導くかが重要です。システム開発会社はシステムには強くても、事業にまでは精通していない可能性があります。
発注者が社内できっちりヒアリングをして現場のニーズを把握し、外注先に伝えることが大事です。ヒアリングでは「このシステムでどんな課題を解決したいのか」「実際にどういう業務の流れの中で使うのか」「どういう機能が必要なのか」を明確にしておきましょう。
システム開発のノウハウが社内にたまらない
ITベンダーなどにシステム開発を外注すると、ノウハウやスキルが自社にたまりません。デジタル・トランスフォーメーション(DX)が加速する今、ITシステムやデータの活用で競争力を高めることはあらゆる業界で急務です。
システム開発ではスクラッチ開発(ゼロからシステムを開発する)やパッケージにカスタマイズを加えるケースがあり、外注によってブラックボックス化する懸念もあります。経済産業省は2018年の「DXレポート」の中で、既存システムの複雑化やブラックボックス化が経済停滞につながることを「2025年の崖」と呼び、問題視しています。
外注管理、各種コミュニケーションコストが生じる
システム開発を外注したからといって、システム開発会社に作業をすべて丸投げできるわけではありません。進捗管理はシステム開発会社がおこないますが、スケジュールに遅れがないかは発注側も確認する必要があります。
また、課題管理表(ToDoリスト、AI管理表など)を作成し、問題が適切に解決されているかどうかも管理しなくてはなりません。工程ごとにレビュー(会議)を開催し、成果物の仕上がりを確認する必要もあります。
繰り返しになりますが、外注先は事業や業務を完全に把握しているわけではありません。要件を外注先に正しく伝え、仕様に反映してもらうには、自社で内製するより当然時間がかかります。システム開発にもよりスピードが求められている今、コミュニケーションコストは外注のデメリットの1つです。
情報漏洩のリスクが生じる
システムでは個人情報など、企業秘密となるデータを扱います。必要に応じて外注先にもそれらを開示しなくてはなりません。そのため、情報漏えいによって、本業に損害を被るリスクもゼロではありません。秘密保持契約(NDA)を締結しておく必要があります。また、システム開発会社には再委託先にも同様のNDAを遵守させることを徹底しましょう。
雲隠れされる恐れがある
外注先と連絡がとれなくなってしまう……ということがないとはいえません。大手のシステム開発会社は元請けから2次委託、3次委託と再委託をする多重下請け構造になっているのが一般的です。そのため再委託先のトラブルが原因でスケジュール通りに進まないこともあります。
契約内容によっては増員や担当者の変更がしづらい
契約内容によっては、プロジェクトの仕様変更や進捗の遅れなどから、エンジニアの増員や担当者を変更したいと思っても、外注先のメンバーを勝手に変更することはできません。とくにフリーランスのエンジニアに依頼する場合は、増員は難しいでしょう。
※以上のようにシステム開発を外注するには多くのデメリットがあります。そのため、開発会社は慎重に選ばなければなりません。ご自身で選びきれない、開発会社を探す時間もない方はシステム幹事にご相談ください。相談料・紹介料も完全無料で最適な会社を選定します。
システム開発を内製するメリット
システム開発を内製化するメリットは、主に下記の5つです。
外注よりコストを抑えられることがある
内製化をすると、外注よりコストを抑えられるケースがあります。
内製化は人材や機材などの初期投資に費用がかかることがネックです。その代わり、一度用意した機材や人材はそのまま次の開発にも利用できることが多いため、継続的に開発行為を行う場合は外注よりもコストを安く抑えられます。
長期的にシステム開発をする展望がある場合や開発・運用をできる人材を確保しておきたい場合は、内製化を検討してみても良いでしょう。
従業員の成長につなげやすい
システム開発を内製化すると、社員自らがシステム開発に携われるようになり、社内全体でITスキルの向上が期待できます。また、開発した従業員が自分で利用する場合はシステムを積極的に活用しようという意識が生まれるというメリットもあります。
開発に必要な情報の伝達・共有が容易
またシステム開発は本来、複数の部門・社員が関わる複雑なプロジェクトです。外注をしないことによって情報のやりとりが社内で完結するため、伝達や共有も容易になります。内製化により社内コミュニケーションが活性化すると、技術的な専門知識や経験も共有されるため、難易度の高いシステムでさえも自社内で開発も可能になるでしょう
システムの仕様変更・機能の追加がスムーズ
システム開発の現場では、急な仕様変更が発生しがちです。内製化で情報のやり取りが社内で完結できれば、外部に業務委託した場合よりもスムーズに仕様変更ができます。そのため、仕様変更が頻繁に発生することが見込まれているようなシステムを開発する場合は、内製化を検討しても良いでしょう。
社内にシステム開発のノウハウが蓄積される
ちなみにシステム開発のノウハウは、経営資源としての価値を有しています。システム開発の内製化で培ったノウハウを活用した新たなシステムの開発や、同業他社へのシステムのパッケージ販売といった具合で、事業拡大にも役立つでしょう。
システム開発を内製するデメリット
一方でシステム開発の内製化には、下記の3つのデメリットも存在します。
計画どおりに開発が進まないと、コストが膨れ上がる
システム開発は「要件定義〜設計〜開発〜テスト〜保守運用」といった工程を踏みながら進める、複雑なプロジェクトです。各工程でミスが生じてしまいシステムの開発が計画どおりに進まなくなると、現場対応のために人的リソースが投入され、人件費が膨れ上がる傾向にあります。
開発に必要なエンジニアを揃えるのが難しい
システムを開発するには、プログラミングに関する高度なスキルが必須です。そのようなスキルを持った経験豊富なエンジニアは希少性が高く、見つけ出すのが困難です。社内で育成する場合は、エンジニアの採用や育成に関するノウハウも必要になります。
大規模開発だと全体を管理できる従業員が必須になる
さらに開発するシステムが大規模になると、規模に見合う多くのエンジニアを揃えなければならず、そのエンジニア達をまとめるリーダー・マネージャーが必須となります。
開発プロジェクトをまとめるには、システム開発の知識とプロジェクト管理の知識、人材管理の知識が必要です。そのため、リーダー・マネージャーの負担を軽減するような体制をつくることも大切です。
システム開発を外注したほうがいい企業
自社にシステム開発の専門知識や技術がない
社内にプログラムやネットワークなどITに詳しい技術者がいなければ、システム開発会社に外注するほうが効率的です。社内で1からエンジニアを育成するには、多大なコストと時間がかかります。自社社員は本業に集中させたいという経営判断もあるかもしれません。
システム開発会社は本業として数多くのシステム開発を手掛けています。そのため開発スキルを持った人材や開発経験が豊富なことに期待ができます。また、最新技術の提供やパッケージ商品を活用する提案、さらにはセキュリティ対策の提案などを受けられることもあるでしょう。
大規模なシステム開発を計画している
大規模なシステムではプロジェクト全体をみる高度なマネージメント能力が求められるため、専門家に任せるのが安心です。中小企業では、情報システムやITの専門部署がなく、担当者が一人しかいない、いわゆる“ひとり情シス”も少なくありません。そうした企業が大規模なシステム開発を導入する場合には、外注せざるを得ないでしょう。
小規模開発なら個人への依頼もおすすめ
予算100万円以内程度の小規模システムの開発なら、フリーランスなど個人のエンジニアへプログラマーに依頼できます。一般的に法人よりも個人は機動力が高く、対応もスピーディで細かなリクエストにも柔軟に応えてくれる傾向にあります。
また直接契約であれば外注費がかからず、費用も安く抑えられます。新規の大規模開発は法人に外注し、機能追加や微調整は個人に依頼するなど法人と個人で状況に適した方に依頼をすると良いでしょう。
期間の限られたシステム開発を計画している
期間が限られた開発プロジェクトを立ち上げる場合は、リソースの管理がしやすい外注がおすすめです。
システム開発で内製をする場合は、開発スキルを持った人材の手配や育成、開発終了後の人員整理の手間がかかります。また、その後に開発業務を行わない場合は用意した開発リソースが無駄になってしまうデメリットもあります。
システム開発を外注した場合は、開発に必要なスキルをもった技術者をすぐに利用でき、プロジェクトの終了にあわせて整理可能です。そのため、開発終了後にリソースを整理する手間を減らせます。
ただし、業務の根幹を担っているシステムやセキュリティの高さが求められる決済システムなど、小規模開発でも個人への依頼が適さないケースがあるので注意しましょう。
既存システムのマイグレーション・リプレースを考えている
既存システムのマイグレーション(別の環境への移行)やリプレース(似た環境への移設)は、予想以上に大掛かりになってしまうことがあります。場合によってはシステム全体を取り替えなければならないケースもあるでしょう。
特に古くなってしまったシステムを現在のシステム開発環境で再構築する際は、今は使われていない開発言語の知識と最新の開発知識の両方が必要になることもあります。そのため、さまざまな開発言語の知識を持った技術者が在籍するシステム開発会社への外注がおすすめです。
システム開発を外注する流れ
システム開発を外注する流れは、主に下記のとおりです。
- 外注先の選定
- 要件定義
- 設計
- プログラミング
- テスト
- 納品
- 保守・運用
外注先を選定する際は、RFPと呼ばれる提案依頼書を作成し、システムの概要や希望納期などを最初で決める必要があります。
候補先の会社へ提案依頼書を提出した後は、相見積もりを出してもらいながら、自社に最適な外注先を選定。要件定義の設定後、本格的にシステム開発が始まります。
システムの設計からテストまでの工程は、下記の4つの開発手法によって異なります。
- ウォーターフォール開発
- アジャイル開発
- プロトタイプ開発
- スパイラル開発
テスト工程で問題なければシステム開発自体は終了ですが、納品後も運用・保守の工程が残っています。システムの安定運用の確保が目的で、開発会社に任されるのが一般的です。
関連記事:システム開発とは?工程・流れ・必要な言語などを発注者向けに徹底解説【2024年最新版】
システム開発を外注する際の注意点【外注前】
「何を作りたいか」を明確に言語化する
一般的に発注する企業は、システム開発に必要な要件をまとめた「RFP」(Request for proposal/提案依頼書)を作成します。解決したい課題や誰がシステムを利用するのか、現行システムがあればその概要、希望納期などを記します。
RFPの作成にあたっては、社内にヒアリングをし、現状の業務の整理やシステム化すべき業務の見極めが必要です。大変な作業ですが、会社にとっては業務を見直し、再設計するBPR(Business Process Re-engineering/業務改革)の機会にもなります。
関連記事:システム開発の依頼準備8点!プロジェクトを成功に導く外注ガイド
関連記事:RFPとは?システム開発の質を高める提案依頼書の作り方を解説!【サンプルあり】
見積額だけで外注先を選ばない
安かろう悪かろう、とは言い切れませんが、見積もり額が安いのには理由があるはずです。要件がきっちり定まっていない状況では、盛り込まれているべき機能が漏れていることもあります。安さばかりを重視して構築すると、その後の保守・運用に費用がかかったり、汎用性に乏しかったりすることもあります。
関連記事:システム開発の見積書の見方をプロが解説!注意点も紹介【サンプル付き】
保守・運用費用も予算に含める
システムは、リリースしたら終わりではありません。定期メンテナンスやトラブル対応など保守・運用が継続します。社内に担当者がいなければ、保守・運用も外注する必要があります。予算には開発費だけでなく、リリース以降の保守・運用費用も含めましょう。開発から運用保守までワンストップで対応してくれる会社であれば、やりとりの手間は最小限で済みます。
関連記事:システム運用とは?開発との関係・保守との違い・重要性・作業内容を解説!
契約内容を確認する
トラブルを防ぎ、気持ちよく外注プロジェクトを進めるには、契約書をきちんと確認する必要があります。おもな契約には、成果物に報酬を支払う「請負契約」と労働自体に報酬を支払う「準委任契約」があります。システム開発は「請負契約」が多く、システム運用保守は「準委任契約」です。このほか機密保持契約(NDA)の締結も必須です。知的財産権の所在や再委託の可否も明記しておきましょう。
システム開発の契約については下記の記事も参考にしてください。
関連記事:システム開発の契約とは?契約形態・契約書の注意点を解説!
システム開発を外注する際の注意点【外注後】
要件定義書を徹底的に読み込む
発注側が用意した「RFP」(Request for proposal/提案依頼書)をもとに、システム開発会社でどのようにシステムを構築するかを記した「要件定義書」を作る流れが一般的です。要件定義書はその後の設計のベースになる非常に重要なものですから、発注側もしっかり読み込み、必要な機能が網羅されているか、ドキュメントに不整合がないかなどをチェックする必要があります。
関連記事:システム開発の要件定義とは?受託開発における重要性や進め方を解説!
発注者もプロジェクトにコミットする(丸投げしない)
システム開発会社に外注して、丸投げしてしまうと、プロジェクトは失敗します。とくに外注のシステム開発で一般的なるウォーターフォール型(工程ごとに作業を完了させていく開発手法)の開発では後戻りが難しいことがあります。各工程で作業をもれなく完了させていくことが大事です。ちなみに最近は、1つの機能ごとに設計・プログラミング・テストを繰り返すアジャイル型の開発事例も増えてきました。
システム開発では担当者だけでなく、システムを使う現場の社員をいかに巻き込めるかもポイントです。新しいシステムの導入には、現場の社員は後ろ向きになりがち。忙しい現場の社員に、いかに“自分ごと”として関わってもらえるかは、システム担当者の手腕にかかってきます。
関連記事:システム開発会社の選び方7ポイント!依頼の準備と注意点も解説
システム開発外注費用の相場と内訳
システム開発の費用は、大きく人件費(開発費)と設備費・ライセンス料などの諸経費にわけられます。
人件費(開発費)
人件費は、工数(人月)×単価で計算します。工数を人月で表した場合、1人が1カ月(1日8時間、20日)働いたときの作業量を1人月とします。各工程にかかる人月にエンジニアの単価をかけて算出します。開発の上流工程に携わるエンジニアほど、単価は高くなります。
<工数を挙げる項目の例>
※工程にかかる工数はプロジェクトの規模で大きく変わります。
- 要件定義
- 基本設計
- 詳細設計
- プログラム作成
- テスト
- プロジェクト管理費用
<エンジニアの単価の例>
基本設計や詳細設計に携わる上級システムエンジニア 100万円/月前後~
プログラミングを行うプログラマー 70万円/月前後~
諸経費
サーバーやクライアントなどハードウェア購入、ネットワーク設定、セキュリティやソフトウェアのライセンス費用などが発生する場合、別途上乗せされます。
システム開発にどれくらい費用がかかるのか、相場情報は下記の記事を参考にしてください。
関連記事:システム開発の費用・相場を徹底解説!料金を抑えるコツも紹介!
システム開発の外注はどこに依頼するか
システム開発の外注先は主に以下の2つです。
メリット |
デメリット |
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システム開発会社 |
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フリーランスのエンジニア |
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システム開発会社
デベロッパーやSIerをはじめとするシステム開発会社に外注することが一般的です。
システム開発が専門の会社やシステム開発専門の部門を持つ会社は、多くのエンジニアを抱えていたり、下請け会社を抱えていたりするため人材が豊富です。会社の規模が大きければ分業がされているので、それぞれの作業に特化した技術者も多くいます。
また、アフターサポートやトラブルのサポート体制が充実している企業も多くあります。外注先に信頼性を重視する場合は、実績の豊富なシステム開発会社を選ぶと良いでしょう。
フリーランス
もう1つの依頼先は、フリーランスのエンジニアです。
フリーランスに依頼するメリットは、企業に依頼するよりも安く依頼できる点です。営業や事務処理のための部署を持たない分、かかる費用を抑えられます。
また、個人で活動していることを生かし、要望に対して企業よりも柔軟に対応してくれるフリーランスエンジニアもいます。
一方で、依頼する相手によってスキルや知識にばらつきがあったり、トラブルが発生した際に責任を負ってくれる会社がなかったりするといった点がデメリットです。
失敗しないシステム開発を外注する会社の選び方
システム開発会社によっては、他のITベンダーに再委託をしています。それ自体はよくあることですが、委託の比率が高いと、コストが割高になりがちです。また、委託先の管理がうまくいかず、スケジュールにズレがでることも。トラブル時には責任の所在があいまいになる可能性も高まります。
開発担当者のコミュニケーション力
システム開発の成否を握るのは、コミュニケーションといっても過言ではありません。大規模なプロジェクトであれば、外注先でチームが組まれ、コミュニケーションの窓口はプロジェクトを統括するプロジェクトマネージャー(PM)が担います。
発注までの短期間で担当者のコミュニケーション力を評価するのは難しいかもしれませんが、「この人とは話が早い」と感じることはあるはず。ある程度担当者の主観で判断しても良い部分です。
開発実績
システム開発会社によって、得意とする分野や強みが違います。これまでの開発実績をみて、類似のシステムや同じ業界の開発実績が豊富なところを選ぶと比較的スムーズに進むでしょう。ホームページや会社のパンフレットでも確認できますが、RFI(Request for Information/情報依頼書)を送ることもできます。会社の基本情報や提案システムの導入実績などの情報を提出してもらい、内容を確認しておくと良いでしょう。
業績の安定具合
新規に開発したシステムは、使い始めてから不具合がでることもありますし、10年近く使うことも珍しくありません。サポートやバージョンアップの対応を依頼することも考えると、外注先の企業としての安定性は重要です。決算書など財務状況や社歴の長さは1つの判断材料になります。
サポートしてもらえる範囲
システム開発会社によってサポートしてもらえる範囲が違うため、事前に確認が必要です。
例えば、保守管理や運用を任せられると思って依頼したのに納品までがサポート範囲だった場合は、管理してくれる会社を探す必要が出てしまいます。また、プログラミングや動作テストなどの下流工程を得意とし、要求定義や要件定義などの上流工程のサポートはあまり得意ではない開発会社も中にはあります。
自社がシステム開発のどこからどこまで任せたいかを決めておき、それにあうサポート範囲のシステム開発会社を選ぶことが大切です。
3社ほど相見積もりをする
複数の会社から見積もりを取り、価格の妥当性を確認しましょう。「システム一式」などまとめて記載があるものは、きちんと内訳を書いてもらい、比較しやすいようにしましょう。見積もり額を大きく左右するのがエンジニアの単価です。
会社によってバラつきがありますが、大手のシステム開発会社ほど高額になる傾向です。開発するシステムの規模や難易度によって大手の安心感と価格のバランスを見極めることも重要です。
システム開発を外注した際の失敗事例
システム開発を外注した際の失敗例を5つほど紹介しますので、参考にしてください。
追加費用が多く発生した
追加費用がいくつも発生して費用が高額になってしまうケースもよくある失敗事例の1つです。
開発を始めてから機能を追加したり変更をしたりすると追加料金が発生することもあります。また、要求定義や要件定義の時点で正しく要望が伝わっていなかったなどの理由で修正が発生しても追加費用がかかるケースもあるでしょう。
システムが納品されなかった
システム開発の外注先選びに失敗すると、システムが納品されないということもあり得ます。特に見積もりの金額が安すぎる開発会社を選んだ際に発生しがちです。
原因はシステム会社の開発スタッフの技術力不足や人員不足などが挙げられます。また、開発に詳しくない営業スタッフが独断で商談を進めていた場合にも発生するリスクがあるでしょう。
見積もりが安いという理由だけで会社を選ぶことは避け、過去の実績を調べておくと良いでしょう。
スケジュール通りに開発が進まなかった
スケジュール通りに開発が進まず、システム開発が納期に間に合わないこともよくある事例の1つです。
主な原因は、修正や機能の追加が発生して工数が増えたり、確認作業に時間がかかったりすること。また、多重下請け構造になっていた場合、会社間でもやりとりに時間がかかってしまうことにより遅延することもあります。
発注前の見積もりやヒアリングの際の対応速度を確認し、対応が遅いと感じた会社は注意をすると良いでしょう。
必要な機能が足りなかった
最初に行う要求定義や要件定義で要望が正しく伝わっていないと、必要な機能が足りないシステムを納品されてしまう恐れがあります。
見積書をもらった段階や要件定義書を見せてもらった段階できちんと内容を精査し、必要な機能に漏れがないかを確認することを心掛けましょう。
営業スタッフだけでなく開発者とも直接相談する機会がある会社を選ぶと、認識のズレによって必要な機能が漏れてしまうケースを減らせるでしょう。
システムが現場で利用されなかった
「完成したシステムの運用を始めたものの現場のスタッフに利用されなかった」という事例も、よくある失敗事例の1つです。
機能自体はあるものの業務の実態にあっていなかったり、動作が遅い・複雑などの理由で利便性が悪かったりすると、現場のスタッフに使われない恐れがあります。
システム開発を本格的に始める前に、現場のスタッフにヒアリングをして機能や操作に問題はないかを確認すると良いでしょう。
可能なら、プロトタイプを開発してもらい実際に現場のスタッフに使用してもらってフィードバックをすると、現場で利用されないシステムになるリスクを減らせるでしょう。
システム開発の失敗例や原因・対策については、下記の記事でも解説していますのでぜひ参考にしてください。
関連記事:システム開発の失敗例・原因・防止策まで解説失敗時の対処法も
【まとめ】システム開発の外注について紹介しました
システム開発の外注にはメリットもデメリットもあります。社内にITに詳しい人がいるかどうか、開発したいシステムの規模はどれくらいなのかなども考慮し、総合的に判断する必要があります。
ただ実際には、どちらがいいのか悩ましいケースも多いでしょう。また、自社にあう外注先がわからなかったり、最終的に費用をみて判断したかったりすることもあると思います。そのような場合には、システム幹事にご相談ください。
専門のコンサルタントが、御社の状況を丁寧にヒアリングして、最適な開発会社をご提案いたします。なお、紹介した開発会社に必ず発注する必要はありません。
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システム開発に役立つ記事もご覧ください システム開発とは?工程・流れをプロが解説!発注者が知っておくべきポイント
Q. システム開発を外注するデメリットは?
システム開発を外注するデメリットとして「システム開発のノウハウが社内に貯まらない」「情報漏洩のリスクが生じる」等が挙げられます。詳しい内容は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いた人
古屋 江美子
専門分野: ライティング、IT、旅行、グルメ、インタビュー
大手通信会社の情報システム部に約6年勤務し、システムの運用・開発に従事したのち、旅好きが高じてライターへ。旅行・グルメ・ITを中心にさまざまな媒体で執筆しています。企業インタビューやコンテンツライティングも手がけています。
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