- 更新日 2024.10.18
- カテゴリー システム開発
スクラム開発とは?アジャイル開発との違いや工程を解説【2024年最新版】
アジャイル開発の主流として注目されている「スクラム開発」
革新的な製品開発を目指しスクラム開発を検討している企業担当者であれば、以下のような疑問を解消したいのではないでしょうか。
・スクラム開発は従来の開発とどう違う?
・スクラム開発のメリットは?
・スクラム開発を依頼するにはどうすればいいの?
そこで本記事では、スクラム開発の概要・チーム構成やアジャイル開発との違い・メリット・注意点まで、スクラム開発の基本・概要を徹底解説します。
※なおスクラム開発の内製が難しい、優秀な開発会社にスクラム開発を依頼したいという方は、システム幹事にぜひご相談ください。専任のアドバイザーが最適な開発会社を無料でご紹介します。
【無料】スクラム開発に強いおすすめシステム開発会社をご紹介します
スクラム開発とは
スクラム開発とは、システム等の開発を行う手法の一つです。
アジャイル開発の一手法に分類され、開発に携わるチームメンバー各自が役割を分担しつつ、コミュニケーションを取りながら臨機応変に開発を進める特徴があります。
スクラム開発では、開発するプログラムの内容を最長4週間の「スプリント」と呼ばれる期間ごとに分け、スプリント毎に開発・レビュー・調整を行います。
スクラム開発が生まれた背景
スクラム開発は、ジェフ・サザーランド氏とケン・シュエイバー氏によって1990年代半ばに提唱されました。基になったのは、1986年にハーバードビジネスレビューでホンダ・キャノン・富士フイルムビジネスイノベーションなどがスクラム開発を発表した論文「The New New Product Development Game」です。
オリジナルの論文では陸上競技のリレーのような分業体制ではなく、ラグビーでチームが一体となって働くように、チーム全体で製品開発する手法を「スクラム」と名付けています。
スクラムチームは、プロダクトオーナー・スクラムマスター・開発チームの3つから構成されています。それぞれの役割は下記の通りです。
役割 |
責任 |
プロダクトオーナー |
|
スクラムマスター |
|
開発チーム |
|
※開発チームは5~9人のメンバーで構成され、アーキテクト、プログラマー、テスター、データベース管理者、UIデザイナーなどが在籍します。
アジャイル開発との違い
スクラム開発の上位概念であるアジャイル開発は、システムの仕様変更時により早く柔軟に対応できる開発手法です。
開発期間を、「要件定義→設計→開発→テスト→リリース(運用)」といった1〜2週間の小さなサイクル(イテレーション)に分割し繰り返すことで開発を進めます。リリースの度にユーザーからフィードバックを得ていくため、本番環境移行後のリスクを軽減できる仕組みです。
このようにアジャイル開発は素早さを意識したフレームワークで、その一手法であるスクラム開発は特にチームでのコミュニケーションを重要視した手法と言うことができます。
参考:アジャイル開発とは?メリット・デメリット、発注側の注意点を解説
ウォーターフォール型開発との違い
ウォーターフォール型開発は、システム開発を各工程に分割し上流工程から下流工程へ後戻りせずに進めていく開発手法です。前の工程が完了してから次の工程に進みます。
開発コストの見積もりや要員管理が容易なウォーターフォール型開発は、大規模開発で導入される手法です。しかし、システムの仕様変更やミスがあった場合、前の工程に戻すのが難しいといった特徴があります。
スクラム開発のメリット
スクラム開発はチームワークを重視する手法であり、導入すると様々なメリットを享受できる可能性があります。
顧客満足度向上につながる
アジャイル開発の一部であるスクラム開発では「顧客からフィードバックをすばやく得られる」「業務要求に従って方向性を変更できる」などの特徴があります。
ウォーターフォール型開発の短所は、顧客側の担当者が何人もいて、異なる意見を持っていると、開発現場が混乱することです。その結果、完成したサービスや製品は顧客が求めるものと一致しないケースも出てきます。
一方でスクラム開発はチームを組み、プロダクトオーナー・スクラムマスター・開発者の役割分担が決まっています。プロダクトオーナーが決定したことに従い開発を進めるため、方向性がズレません。
チームが自律的に判断できる
スクラム開発は、スプリントゴール(スプリント期間に達成したいゴール)を設定するため、チームの自律性が促される特徴もあります。
スプリントごとに「振り返り」で課題をチェックしていくため、エンジニアが受け身の立場で開発するのではなく、開発に関するさまざまなタスクを各メンバーが決定できるからです。
開発時間を短縮できる
スクラム開発は、開発速度を速めて顧客への要望に柔軟に対処できる特徴から、他のアジャイル開発手法よりも採用率が高い傾向にもあります。
アジャイルプロジェクトマネジメント研究会が、アジャイルを導入している開発現場のプロジェクトメンバー278名を対象にした調査では、開発スピードを重視したスクラムやカンバン方式を採用している比率が多い結果となりました。
参考:アジャイル プロジェクト マネジメント意識調査結果と提言(2019年)
なおスクラム開発に後続する「リーン開発」や「XP開発」は、それぞれ以下のような開発方式です。
リーン開発
顧客指向の開発手法で「トヨタ生産方式」から派生した開発手法です。ムダを省き、品質の作り込みなどに重点を置いています。リーン開発が概念的な手法であるのに対し、スクラム開発は顧客満足度を最優先に、短期間でのリリースを目的としています。
XP開発(エクストリームプログラミング)
アジャイル開発の先駆けとなった手法で、小規模のソフトウェア開発に適しています。設計よりコーディングやテストを重視し、開発者に合わせた手法です。一方、スクラム開発は、顧客が求める機能をスプリント単位で、スピーディーに短期間で開発します。
いずれもスピード重視のアジャイル手法ではありますが、それ以上にスクラム開発が現場で導入されていることを考えると、チームとしての柔軟性やコミュニケーションのしやすさにもメリットがあると伺えます。
スクラム開発メンバーを構築する際の注意点
多くのメリットがあるスクラム開発ですが、チームでスプリントゴールに向かって開発する手法のため、チーム全体の能力にバラツキがあると、失敗する可能性があります。自社でチームを組む際は以下のことを念頭に置いておきましょう。
メンバーのコミュニケーションスキルが必要
スクラム開発では、メンバーが毎日デイリースクラムで課題を共有します。そのためメンバーには高いコミュニケーションスキルが求められます。
そのためチームを構築する際は、技術的なスキルだけではなく、コミュニケーションスキルの高いメンバーを選ぶとよいでしょう。チームのために自分の考えを素直に言葉にできる人がスクラムチームには向いているとされています。
メンバーの技術力に左右される
スクラム開発は、各メンバーの裁量権が多いため、全てのメンバーがスクラムについて精通していなければプロジェクトの成功は遠のいてしまうでしょう。メンバーが経験の浅い社員の場合「社内のスタッフがサポートする」「学習期間を設ける」などの工夫が必要です。
スクラムマスターの力量がチームを成功に導く
スクラム開発は小規模開発向けのフレームワークであり、大規模開発ではスクラムマスターの力量がないと失敗する可能性があります。スクラム開発の特徴は、メンバーの意見交換や顧客の要望を取り入れることです。しかし、スクラムマスターが全ての要求を飲んでしまうと、開発項目が多すぎて失敗するでしょう。
そのため、人数が多い大規模開発ほど、スキルを持ったスクラムマスターと柔軟な対応が必要になります。
スクラム開発の手順
ここからは、スクラム開発の主な手順を具体的に見ていきましょう。
プロダクトバックログの作成
スクラム開発では、まず「プロダクトバックログ」を作成します。プロダクトバックログとは、ロードマップの一部として優先順位を設定したリストのことです。
開発中の製品は、1つのプロダクトバックログが用意され、バッグログごとに1つのチームが割り当てられます。リストにはプロダクトを完成させるためのフィーチャーやタスクが表示されるので、開発チームは最も優先順位の高い作業から始めることができます。
スプリントプランニング
プロダクトオーナー・開発チーム・スクラムマスターは「スプラントプランニング」を実施し、プロダクトバックログのリストから次のスプリントで構築するサブセットを決めます。
それを受け各メンバーは「スプリントゴール」に合意し、次のスプリントで「何を達成するのか」を自ら定義します。
スプリントの実施
スプリントプランニングが終了し、次のスプリントの内容についての合意ができたら、開発チームは必要な作業を実施します。メンバーは、タスクレベルの作業を定義し、スプリントゴール達成のための最適な方法で行います。
補足:デイリースクラム
スプリント期間中は、毎日15分以内の「デイリースクラム」を実施します。デイリースクラムで質問される内容は下記の通りです。
- 前回のデイリースクラムの後何をしたのか?
- 次回のデイリースクラムまでの間どんな作業をするのか?
- 進捗の障壁は何か?
デイリースクラムによってメンバーは全体像を理解でき、スプリントですばやく作業を実施できます。
完成
スクラム開発では、完成品がレビュー可能かどうか事前の「完成の定義」に従って判断します。「完成の定義」とは、品質基準のために決定された最低限のルールです。
「完成の定義」には、以下のような例があります。
- リファクタリングがされている
- コメントがちゃんと書かれている
- ユニットテストがされている
- 環境依存テストされている
- 多言語テストされている
例えばソフトウェア開発の最低限の「完成の定義」の場合、プロダクトの機能について全てを設計・構築・統合・テストし、ドキュメントを書く必要があります。一方、積極的な「完成の定義」の特徴はリリースするかどうかを判断できるようにすることです。
ただし、現実的には「完成の定義」は、時間の経過とともにチームが成熟していくため、より厳しい品質条件を追加するケースもあります。
スプリントレビュー
「スプリントレビュー」とは、構築中のプロダクトについて検査と適応を行うことです。スプリントレビューでは、スクラムチーム・ステークホルダー・スポンサー・顧客が話し合いをします。
スプリントレビューの手順は下記の通りです。
- 参加者の紹介
- スプリントゴールの共有
- 前回のスプリントでできたこと、できなかったことの共有
- デモの実施
- フィードバックやQAの実施
- 状況変化の確認
- 今後のリリース計画
スプリントレトロスペクティブ(振り返り)
「スプリントレトロスペクティブ」とは、プロセスについて検査と適応を行う機会のことで、スプリントレビューと次のスプリントプラニングの間に行われます。
開発チーム・スクラムマスター・プロダクトオーナーは「何が上手くいき、何が上手くいかなかったのか」について議論します。スクラムチームに必要なのは、現実的な数の改善アクションを特定し、次のスプリントで取り組むことです。
スプリントレトロスペクティブが終わるとサイクルが繰り返され、チームは最優先のタスクを判断するためスプリントプラニングを実施します。
ここまでが大まかな一連の流れです。このセットをリリースまで繰り返します。
※一般的なシステム開発の流れや進め方については、こちらもあわせて参考にしてください。
システム開発依頼前にチェック!
中小企業向けシステム開発の進め方をまとめました。
無料でダウンロードする
スクラム開発で失敗しないためのポイント
スクラム開発は間違った方法では生産性や効率性は向上せず、上手くいかない場合があります。最後に、スクラム開発を成功させるために押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
チームの動きが常に見えるようにしておく
スクラム開発では、メンバー間の密なコミュニケーションが欠かせないため、信頼関係を築くことが大切です。
スクラムの特徴である「検査」「適応」「透明性」を守るために、チームで以下が遵守されているようにしましょう。
特徴 |
内容 |
検査 |
・現状を把握できる |
適応 |
・障害が起きた際、迅速に修正・改善できる |
透明性 |
・プロセス・作業がチーム内で「見える化」されている |
事前に作り込みすぎず臨機応変に対応する
スクラム開発では、ある程度は要件を事前に集め計画を立てますが、詳細は開発しながら進めていきます。ウォータフォール型開発のように事前に正しく要件を集め、計画を立てるのは困難です。
そこで、重要で後戻りができない決定については、適切なタイミングが来るまで判断を急ぐことはしません。
なぜならプロダクト開発当初はマーケットや技術については情報不足であり、開発が進むにつれて学習していくことが前提だからです。仕様や要件変更の可能性を考え、早期に決定をして大幅な修正をするよりも、決定を遅らせてコストがかからないようにします。
こまめなフィードバック体制を組んでおく
スクラム開発では、スプリントの繰り返しにより早期の検証が可能です。間違った企画や開発をしたとしても、ミスを素早く発見し、立ち直る機会を得ることができる仕組みとなっているからです。
そのためスクラム開発では、フィードバックがしっかりと機能するように、ワークフローを組んでおくことが重要になります。フィードバックのタイミングや進め方など、プロジェクト開始前にあらかじめ定義しチームで共有しておきましょう。
リアルタイムの情報で再計画する
スクラム開発ではリアルタイムの情報で再計画が可能です。何かの計画に従うことが目的ではなく、再計画を迅速に行い継続的に市場に適応できるようにします。
ウォーターフォール型開発のプロセスは計画によって決まりますが、一方でスクラム開発は「計画を無条件に信じると計画自体が間違っている可能性に気付きにくい」といった考え方です。そのため、リアルタイムの情報で継続的な再計画が重視されています。
そのためドキュメントも必要最低限のみ準備します。下記はスクラム開発で必要なドキュメントの例です。
- 説明書やユーザーガイド
- 重要な議論・意思決定・合意の記録
- 新しいメンバーのためのマニュアル
- 規約上ドキュメントが必要な場合
何を最低限とするかは開発している内容によって異なりますが、スクラム開発で重要なのは、経済的な価値がない作業を避け、顧客に価値を提供するため時間とお金を使うことです。
スクラム開発のメリット、ポイントを紹介しました
スクラム開発を検討しているが、具体的にどうすればいいのかわからないという方に向け、本記事では、スクラム開発の概要・チーム構成やアジャイル開発との違い・メリット・注意点まで、スクラム開発の基本・概要を解説してきました。
スクラム開発は革新的な開発をする場合に効果を発揮します。スクラム開発を実現するには、ウォータフォール型開発との違いを熟知し、顧客への価値提供の視点から専門的な知識が求められます。
自社の案件がスクラム開発に向いているか知りたい、優秀な開発会社にスクラム開発を依頼したいという方は、システム幹事にご相談ください。専任のアドバイザーが最適な開発会社を無料でご紹介します。ぜひお気軽にお問い合わせください。
コンサルタントのご紹介
岩田
専任のコンサルタントが、
お客様の予算と目的を丁寧にヒアリング。
最適な会社をピックアップ・ご紹介させていただきます!
初心者の方でも安心してご相談いただけます。
Q. スクラム開発とは何ですか?
スクラム開発とは、システム開発の手法の一つです。開発に携わるチームメンバー各自が役割を分担しつつ、コミュニケーションを取りながら臨機応変に開発を進めます。
Q. スクラム開発のメリットは?
スクラム開発のメリットは「顧客満足度の向上につながる」「チームメンバーが自律的に判断できるようになる」などです。詳細は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
この記事を書いた人
今崎 人実
専門分野: IT、仮想通貨、建築
大手インターネットプロバイダー、Webデザイン事務所、建築デザイン事務所を経てライターに転身。長年Webデザイナーをやっていた経験を活かし、IT、仮想通貨、建築関連の記事を中心に執筆。取材記事やコンテンツライティング、SEO記事などさまざまなジャンルの執筆を行っています。
このライターの記事一覧