- 更新日 2024.10.17
- カテゴリー AI開発
ファッション業界のAI活用例は?メリットや成功例を紹介【2024年最新版】
ファッション・アパレル業界では
- 賃金が低くてスタッフが集まらない
- 在庫ロスを減らしたいけど判断が難しい
- トレンド予測が年々難しくなってきている
という課題を長年抱えている関係者も多いのではないでしょうか。
これらの課題を解決するカギとして、AI(人工知能)が注目されています。しかし、
- AIとファッションって関係あるの?
- ファッションの世界でどうやってAIを使うの?
- 実際にAIを導入した事例は?
と考える方もいるでしょう。
そこで本記事では、ファッション業界でAI導入が促進されている理由とAIの事例について解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
AI技術がファッション業界に与える影響
ファッション業界は世界最大の産業の1つで、常に革新的な技術を取り込みながら進化してきました。
近年では、多くのファッションブランドがEC化を進めています。市場規模は日本国内だけでも2019年から2020年の間で16.25%の成長を記録するほどです。そして約20%の事業者がEC化に成功しています。
市場規模 |
EC化率 |
|
2019年 |
1兆9,100億円 |
13.87% |
2020年 |
2兆2,203億円 |
19.44% |
参照:経済産業省「令和2年 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
このように移り変わりの激しいファッション業界では、新たなAIイノベーションの波が押し寄せてきています。
たとえば、フランスの「ヒューリテック(Heuritech)」は、数百万点という画像を読み込み、パターン・色・形・といったデータを抽出してトレンドを予測するAIプラットフォームを開発しました。トレンドを予測できれば無駄な在庫を抱える必要がなくなります。
トレンドを予測するAIプラットフォームは、すでにフランスのハイブランド「ディオール」やアメリカのスニーカーブランド「ニューバランス」で活用されており、「トレンド予測によって自社のリソースをどこに注力すればいいのかを把握できるようになった」と評価されています。
ほかにも、東京のデザインラボ「シンフラックス(Synflux)」のAIプロジェクト「アルゴリズミック・クチュール(Algorithmic Couture)」からは、体型をスキャンして一人ひとりに合う洋服を作成する技術が発表されました。
このように、ブランド各社はAIを独創的な発想を生み出すためのパートナーとして受け入れ始めており、今後はAIを取り入れた事業展開はスタンダードになっていくことも伺えます。
ファッション業界でAI導入が推進される理由
ファッション業界でAI導入が推進されている理由は、次の2つが考えられます。
- 接客品質の向上
- データの蓄積・分析
2つとも人力ではどうしても限界がある領域だからです。
接客品質の向上
1. 接客の均一化
どうしても店員が接客すると、性格・体調・気分・店舗の混み具合によって接客レベルにバラつきが出てしまうものです。
また、店舗に入って自分でゆっくり商品を見たい方にとって、店員から積極的に声をかけられると居心地が悪いと感じる方もいるでしょう。一方で、服のサイズのことなどで相談したい場合、近くに店員がいない、声をかけても気づいてもらえないと購買意欲がなくなってしまうケースもあります。
しかし接客用のAIがあれば、お客様は「自分のタイミングで」「納得行くまで」サービスを受けられるようになります。もし、店員に対応してもらいたければ店員を呼ぶことも可能です。店舗としても、定型的な相談や質問はAIに対応してもらえば手の開いている店員は別の業務に集中できます。
AIを導入することで「いつでも」「誰が相手でも」同じ接客サービスを提供できるのは大きなメリットといえるでしょう。
2. 24時間の問い合わせ体制構築
ECサイトを閲覧しているお客様の利用時間は、日中だけでなく深夜の場合もあります。とくに、仕事終わりから就寝までの時間に利用する方は多いと考えられます。
機会損失を減らすなら、お店の営業時間外でも問い合わせには対応すべきです。しかし、店側も24時間体制で電話対応するのは難しいでしょう。
そういう場合にAIチャットボットを導入すれば、24時間体制で問い合わせに対応可能となります。お客様はAIチャットボットがあれば直接店舗に出向いたり、電話で問い合わせたりする手間が省けるだけでなく、店員のリソースも奪われなくなります。
データの蓄積・分析
1. トレンド予測
ファッション業界にとってトレンドは業績に大きく影響します。今年はなにが売れるのかを把握し、需要に応えられるだけの在庫を用意しなくてはいけません。
しかし、基本的にファッションはプロダクトライフサイクルが短く、次々と移り変わるトレンドを正確に予測するのは困難です。トレンド予測を外せば大量の在庫を抱えることにもなります。そういったロスを回避するためにも、AIによるトレンド予測が注目されています。
2. 接客・レコメンドの仕組み構築
お客様の嗜好やニーズを読み取ったレコメンドはAI技術ならではでしょう。たとえば、お客様が「どの商品をどの順番で見たのか」「先月と今月で見ている商品は違うのか」など、時系列データも含めて機械学習をさせます。その結果、トレンドの移り変わりが早いファッション業界に合わせたレコメンドが可能となります。
3. 生産計画と在庫管理のデータ連携
AIが受注予測を行い、生産計画を行えば、在庫の適正化が期待できます。また、セールなどの値引きを適正化することで利益率が大きく改善されたケースも見られます。
ファッション業界のAI導入事例
ここからはファッション業界の実店舗とECサイトの2パターンにわけて導入事例を見ていきます。自社に応用できないか、ぜひ参考にしてみてください。
実店舗の例
実店舗では、AIを活用していかに新しい購買体験を提供するかがカギになってきます。
たとえば、
- カメラでお客様の行動分析をしてレイアウトや商品の改善
- 3D自動採寸で顧客に合った商品を提案接客
- AI自動採寸アプリでオーダーシャツの納品
など、実店舗で採寸をして商品を提案・納品するといったカスタマイズ性の高い接客が可能になるでしょう。
カメラでお客様の行動分析をしてレイアウトや商品の改善
参考:FieldAnalyst
「株式会社大塚商会」は、カメラで店舗内を撮影し、お客様の属性や行動をデータで取得・分析する「FieldAnalyst」を開発しました。
これまで実店舗でのお客様は
- どの商品を買おうとしてやめたのか
- どの商品と比較したのか
- 購入するまで何分間悩んだのか
といったデータを可視化するのが困難でした。ECサイトでは、当たり前にできるこのデータ収集を実店舗で実現したのが「FieldAnalyst」です。
「FieldAnalyst」は、入店者のデータを収集するために店舗の入り口にカメラを設置します。入店者の顔の画像から性別・年齢などをAIで解析することで、どの時間帯にどういった属性が集まりやすいのかを把握できます。
分析したデータを活用すれば「どの時間帯にセールを打つべきか」「店員は何人配置すればいいか」などを戦略的に決定できるでしょう。また、カメラを複数台設置すれば商品棚ごとにお客様の滞留時間や人数を把握でき、効率的なレイアウトの改善にも役立てられます。
3D自動採寸でお客様に合った商品を提案
「株式会社ワコールホールディングス」では、3Dボディスキャナーを使ってお客様にぴったりの下着を提案する「3D smart & try」を導入しました。3Dスキャナーを使えば、たったの5秒で全身約150万か所のデータを採寸可能となっています。自分に合った下着で悩むお客様は多いため、ニーズに素早く的確に応えるサービスとなっています。
3Dスキャナーは個室に設置されており、お客様は室内でゆっくりと採寸が可能です。自身の生年月日やパスワードを入力すれば、スキャニングが始まります。部屋の四隅に設置されたスキャニング用センサーによって、バスト・ウエスト・体の形状まで細かく採寸が行われます。
AIは、計測されたデータと販売員のノウハウデータを組み合わせて自動的におすすめの商品を提案してくれます。さらに驚きなのは、要望するスタイルにも合わせて提案されるという点でしょう。これによってより個人のニーズにカスタマイズした接客が可能となっています。
AI自動採寸アプリでオーダーシャツの納品
「株式会社コナカ」が展開する「SUIT SELECT(スーツセレクト)」では、AIアプリを使ったオーダーメイドワイシャツの販売サービス「AI SPEED ORDER SHIRT」を2021年3月から開始しました。「AI SPEED ORDER SHIRT」は、スマホAIアプリを使って10分で採寸し、10種類の生地から好みのワイシャツをオーダーでき、最短10日で受け取り可能という注目のサービスです。
これまでオーダーメイドワイシャツは、既製品の3倍の価格になっていました。「AI SPEED ORDER」を導入したことで、サービス受注から製造・発送までを極限まで省いた専用の工場を長野県に設置し、業界でもトップクラスの納期と低価格を実現しました。
忙しいビジネスマンにとって、自宅にいながらオーダーメイドのワイシャツを注文できるのは画期的なサービスといえるでしょう。
ECサイトの例
ここからはECサイトの事例を見ていきます。ECサイトではよりお客様の動向を補足しやすいため、様々な活用方法が見られます。
SNSから売れ筋・トレンドを分析
「株式会社ニューロープ」は、SNSの投稿からトレンドを分析する「#CBK forecast(カブキフォーキャスト)」をリリースしました。ファッション業界にとって、トレンドの読み間違えは大量の在庫を抱えることにつながります。
カブキフォーキャストは、2014年以降、50万点を超えるTwitterやブログメディアの画像データを分析しています。分析結果から「どのようなアイテムが」「どのタイミングで」着られるのかが予測可能です。
画像データの解析では、顔認証技術から年齢・性別の属性と色・柄・シルエットといった情報をデータ化します。データを組み合わせることで、細かい売れ筋・トレンドの定量的な予測を実現しています。
カゴ落ち対策ツールでコンバージョン改善
「株式会社BRANDIT」は、自社が開発・運営を手掛けるアパレル向けECプラットフォーム「BRANDIT system」と連携できるカゴ落ち対策ツールを発表しました。カゴ落ち対策ツールは、ユーザーが商品を買物かごに入れたものの購入には至らなかった、いわゆる「カート離脱者(カゴ落ちユーザー)」に対してリマーケティングして購入まで引き戻すことを目的としています。
ECサイトにとってカゴ落ち率は売上に直結する指標ですので、いかにカゴ落ち率を下げるかは大きな課題です。カゴ落ち対策ツールは「BRANDIT system」を使えば無償で提供されるのでマーケティング支援として大きな武器になるでしょう。
AIチャットボットで売上増大
「株式会社ナノ・ユニバース」では、もともとECサイトにお問い合わせフォームを用意していました。しかし、深夜時間はコールセンターでの電話対応が難しく、機会損失するのが課題だったため「株式会社空色」のAIチャットボット「OK SKY」を導入しました。AIチャットボットを活用した結果、時間を問わずお客様とコミュニケーションを取り、売上を伸ばすことに成功しています。
「OK SKY」は、約2,000万件の接客情報から回答テンプレートを用意しています。そのため、想定される問い合わせとシナリオの作成時間を大幅に短縮し、忙しくても短期間でAIチャットボットの導入ができます。さらに、運用開始後も問い合わせ内容を学習し、データチューニングを繰り返すことで高精度の対応も可能です。
同社では、商品やセール情報などの質問にはチャットボットが一次対応し、その後スタッフに引き継ぐことでスムーズな接客を実現しています。
AIチャットボットでパーソナルスタイリング
「株式会社ストライプインターナショナル」が運営する定額ファッションレンタルサービス「メチャカリ」は、サービス利用率の向上のために「パーソナライズスタイリングAIチャットボット」を導入しました。メチャカリでは「earth music&ecology」などの新作アイテムを定額レンタルできます。アイテムを選ぶ際には、チャット上でお客様のこれまでの閲覧・行動履歴データをAIで分析し、個別にコーディネートを提案してくれるのが特徴です。
AIチャットボットが提案することで「なにを選べばいいのかわからない」「服を選ぶ時間がない」といったお客様のニーズに応えています。
AIでファッションをコーディネートしてくれるアプリ
ここからは、一般ユーザーでも利用できるAIアプリを紹介します。一般向けサービスを把握することで、どのようにAIがファッション業界で活用されているのかをユーザー目線で知ることができます。
画像引用:SENSY CLOSET
「SENSY CLOSET」はスマホで自分の洋服を整理して、コーディネートを管理するアプリです。コーディネートを管理するだけでなく、AIがユーザーの好みを学習して新しいコーディネートを提案してくれます。分析にはユーザーがアップロードした洋服の画像データ、着回しのパターン、色や柄、シルエットの好みなどが学習・分析されます。その上で自分にに合ったコーディネートを提案してくれるのが特徴です。
さらに自分が持っている洋服と、SENSYが提携している国内外ブランド2,500点以上のアイテムと組み合わせてくれるので幅広いコーディネートも可能となっています。
POCKET PARCO
画像引用:POCKET PARCO
パルコが運営するスマートフォンアプリ「POCKET PARCO」は、洋服のレコメンド機能をAI化しています。ユーザーの購買・来店履歴やお気に入り登録履歴、記事閲覧履歴などを分析して学習することで、自分に合ったアイテムを提案してくれます。
PASHALY
画像引用:PASHALY
「PASHALY(パシャリティ)」は、ユーザーが欲しい洋服の画像をアップロードするだけでAIが画像解析をして候補を一覧表示し、アイテムをそのまま購入できるというサービスです。欲しい洋服がどこのブランドの商品かわからなくても、スマホで撮影して画像をアップロードするだけです。
AI画像解析技術で、ユーザーの欲しいアイテムを探し出してECにつなげるまったく新しい購買体験を提供しています。
Riko/Mika
画像引用:株式会社ニューロープ
かわいらしいキャラクターの「Riko(パーソナルスタイリスト)」と「Mika(ショップ店員)」が、LINE上でユーザーが持っている洋服に合わせたスタイルを提案するサービスです。AIは100万枚を超えるファッション画像データを取り込んで学習しており、ユーザーが画像をアップロードすればコーディネートを提案してくれます。
着こなしの見本も具体的に提示しながらアドバイスしてくれるので、わかりやすいのが特徴です。
まとめ
本記事ではファッション業界におけるAIの活用方法を紹介しました。
AIを使えば、「人手不足」「在庫管理の最適化」「接客の向上」といったファッション業界の課題を解決可能です。まずは自社の課題を整理し、AIで代替できる部分はないかを検討してみましょう。
しかし、AIという新しいテクノロジーを導入するには、「どこから検討すればいいかわからない」「十分な時間がない」というケースもあります。
そのような場合は、ぜひ「システム幹事」にご相談ください。専門のコンサルタントがあなたの要望を丁寧にヒアリング・ご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。
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Q. ファッション業界でのAIの導入事例にはどのようなものがある?
ファッション業界でのAIの導入事例として「株式会社大塚商会」「株式会社ワコールホールディングス」等が挙げられます。そのほか豊富な事例と参考になるポイントは記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。
Q. ファッション業界でAI導入が推進される理由は?
ファッション業界でAI導入が推進される理由として「いつでも誰が相手でも同じ接客サービスを提供できる」「トレンドの移り変わりが早いファッション業界に合わせたレコメンドが可能」等が挙げられます。詳しくは記事をご覧ください。
この記事を書いた人
Y.KURODA
専門分野: IT・取材
ITライター兼Web開発者。
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