- 更新日 2024.10.17
- カテゴリー 業務システム
ERP / ERPシステムとは|概念・種類・導入の形態や効果・注意点を解説!
ERPシステムを導入する企業が増えていると聞くが、そもそもERPとは?どんな効果が期待できる?中小企業にも必要?そんな疑問を持つ企業担当者の方に向け、概念・種類・導入形態から効果・注意点まで、知っておきたいERP / ERPシステムの全体像を解説していきます。
なお、ERP導入サポート会社の探し方・選び方がわからない!という方はシステム幹事にお気軽にご相談ください。貴社の目的・予算にあった最適な会社を厳選してご紹介します。相談料・会社紹介料などは無料です。
ERP / ERPシステムとは
ERPとは、日本語の「企業資産計画」を意味する「Enterprise Resources Planning」の略称です。文字通り、企業の重要な経営資源・資産である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を計画的かつ効率的に活用していく概念を「ERP」といいます。
具体的には、分散していた経営資源をまとめて一元管理し、リソースを適切に配分していくことで経営効率を高めていくことがERPの考え方。これを実現するためのシステムを「ERPシステム」または「ERPパッケージ」と呼びます。
業務データを一元管理するERPシステム
ERPの概念である「経営の効率化」を実現するには、企業の有する資源であるデータを一元管理して経営に活かしていかなければなりません。そのため、ERPシステムは「会計」「財務」「人事」「販売」「生産」などの業務データを「1つのデータベースで一元管理する」という特徴を持ちます。
画像出典:freee
製品によって異なるものの、おおよそ以下のような業務システムを、1つのデータベースで統合したものが「ERPシステム」なのだと考えておけば間違いありません。
- 財務・会計管理システム
- 人事・労務管理システム
- 販売管理システム
- 在庫・倉庫管理システム
- 生産管理システム
- 顧客管理システム
- ビジネスインテリジェンス(BIツール)
このため、ERPシステム / パッケージを「統合基幹業務システム」と呼ぶ場合もあります。また、ERPはもともと概念・考え方を意味する言葉でしたが、現代ではERPシステム / パッケージと「ERP」はイコールの意味で使われる場合が一般的です。
基幹システムとERP(統合基幹業務システム)の違い
それでは、統合基幹業務システムであるERPは、基幹システムとなにが違うのか?そんな疑問を感じている方のために、補足説明しておきましょう。
基幹システムとは、それがなければビジネスの遂行が困難な「企業活動の中核となる基幹業務を効率化するシステム」のこと。たとえば「会計システム」「在庫管理システム」「販売管理システム」などが基幹システムの代表例です。
個別の基幹業務を効率化することを目的とする基幹システムは、業務ごと、部門ごとに導入される場合が一般的。このため、基幹システムごとに異なるデータベースを持ち、それぞれが異なる業務データを管理しています。
画像出典:SAP
つまり、ERPと基幹システムの違いは「目的」「カバーする業務範囲」「データの取り扱い」です。まとめておきましょう。
ERP |
基幹システム |
|
目的 |
企業経営の効率化 |
個別基幹業務の効率化 |
カバーする業務範囲 |
すべての基幹業務 |
個別の基幹業務 |
データの取り扱い |
すべての基幹業務データを一元管理 |
カバーする基幹業務のデータのみ管理 |
ERP導入で得られる効果・メリット
基幹システムは、個別基幹業務の効率化には非常に有用ですが、組織全体で見た場合に「情報のサイロ化(分散)や重複」という課題を抱えがちです。一方、すべての基幹業務データを一元管理するERPなら、こうした課題を解決可能。つまり、ERPを導入することによって、基幹システムの課題を解決し、さらに以下のような効果・メリットが得られます。
経営状態をリアルタイムに可視化
すべての基幹業務データを一元管理するERPなら、ただ1つのデータを変更するだけで、関連するすべての機能・システムに変更が反映されます。これは、刻一刻と変化する経営状態を「リアルタイムに可視化できる」ことにほかなりません。
たとえば、顧客に商品を販売したという情報は、販売管理だけでなく、在庫管理 / 顧客管理 / 生産管理 / 会計システムへリアルタイムに反映可能。BI機能を搭載するERPならば、データを加工して見たい情報をいつでもダッシュボードで確認できます。
適切かつスピーディーな経営判断
経営状態をリアルタイムに可視化できるERPを活用すれば、状況に応じた適切かつスピーディーな経営判断を下せます。
上述した販売の例であれば、商品の販売状況に応じた生産量の調節や、キャッシュフローに応じた資金調達計画を実行可能。月決算ではじめて問題に気がつく、といった失敗もなくせるでしょう。
業務標準化・効率化による生産性向上
業務標準化・効率化による生産性向上が見込めることもERPの導入効果・メリット。
個別の基幹システム運用は、情報がサイロ化してしまうというほかに、業務の属人化を招きやすく、システム / データ連携しにくい側面があります。データのエクスポート / インポートといった手間が生じるだけでなく、転記ミスを誘発しやすいことは否めません。
情報を唯一のデータベースで管理し、一定のルールに従って全体運用するERPなら、こうした課題を解決可能。手間・ミスを削減することによって業務効率化を促進できれば、空いたリソースを生産性向上に振り向けることも可能です。
ERP導入の注意点
効果・メリットの大きいERPですが、導入に際しての注意点もあります。1つは「適切なERPシステムの選定が難しい」こと。もう1つは「業務フローの見直し」「従業員の活用・定着を促す教育」が必要なことです。
こうした注意点はERPに限ったことではありませんが、ビジネス全体の基幹業務に関連するため、影響は広範囲に渡りがちです。導入自体が目的化してしまわないよう、なぜERPを導入するのか?どのような効果を期待するのか?目的を明確にし、準備を整えておくことが重要です。
ERPの導入方法
近年ではERP / ERPシステムの概念が多様化する傾向にあるため、システム選びはさらに難しくなりつつあります。適切なERPを選定 / 導入するためにも、トレンドを知っておくことが重要。ERPにはどのような「導入方法」「導入形態」「種類 / タイプ」があるのか?押さえておきましょう。まずはERPの導入方法です。
概要 |
メリット |
デメリット |
|
ERPシステム / パッケージ |
ソフトウェアの形で ERPシステムを提供 |
・導入が比較的容易 ・スクラッチよりも 導入コストが安価 |
・スクラッチよりも カスタマイズの自由度は劣る ・少なからず業務フローを システムにあわせる必要がある |
スクラッチ開発 |
ゼロからERP システムを開発 |
・事実上の制限なく 機能を盛り込める ・業務フローにあわせて システムを作り込める |
・開発コストが高額、 開発期間が長期になりがち ・システムが陳腐化しやすい |
ただし、ERPをスクラッチ開発するのは現実的ではありません。ビジネスに関連する基幹業務を統合し、システム化することは容易ではないからです。開発コストはもちろん、システムを最新の状態に保つための機能追加、アップデート、メンテナンスなど、運用していくための負荷とコストもかかります。
ERPの導入形態
つまり、多くの企業が採用しているERPの導入方法は、SAP、ORACLEに代表されるERPパッケージです。ERPパッケージの導入形態には、大きく「オンプレミス型」「クラウド型」「ハイブリッド型」の3つがあります。
概要 |
メリット |
デメリット |
|
オンプレミス型 |
自社管理するサーバに ERPパッケージを インストールして利用 |
・データを自社管理できる ・セキュリティを強化しやすい |
・システム運用・ 保守は自社責任 ・オンデマンド性 に欠ける |
クラウド型 |
ERPベンダーの 構築したシステムを インターネット経由で利用 |
・素早くERPを導入できる ・初期費用を抑えられる ・運用 / 保守を ベンダーに任せられる |
・カスタマイズの 自由度は オンプレミスに劣る |
ハイブリッド型 |
オンプレミスERPと クラウドERPを 併用利用。 2層ERPとも呼ばれる |
・本社はオンプレミス、 一部の部門や 海外拠点にクラウドなど、 双方のメリットを活かせる |
・データ統合 / 一元かが難しい 場合がある |
主流になりつつあるクラウドERP
なかでも、主流となりつつあるERPの導入形態は「クラウド型」です。これは、多様化するERPへのニーズに対応する、多様なクラウドERPが登場しているからにほかなりません。
たとえば、在庫管理の不要なプロジェクトビジネス特化型や、PaaSをベースに柔軟なカスタマイズに対応するSaaS型ERPシステムなど。新アーキテクチャ「インメモリデータベース」で高速化を実現したSAPも、最新の「S4 / HANA」ではクラウドバージョンを用意しています。
ERPの種類 / タイプ
クラウド型に限らず、ERPシステム / パッケージが多様化した理由は、DXに備え、中小企業を含む多種多様な業種でERPに対する需要が高まったからです。当然、ERPの種類 / タイプも多様化しました。主なものを紹介しておきましょう。
統合型ERP
統合型ERPとは、経営資源を一元管理してリソースを効率的に分配するERPの考え方に基づき、すべての基幹業務を統合したERPシステムのこと。すべての情報は統合データベースに集約され、ビジネスの状態をリアルタイムに可視化。状況に応じた迅速な経営判断を下すために有効なソリューションです。
ERPの特徴 / メリットを最大化するのに役立つソリューションですが、導入時の影響は全部門におよびます。活用の定着、企業文化の変革など、解決すべき課題は少なくありません。
コンポーネント型ERP(モジュール型)
コンポーネント型ERPとは、会計 / 人事などのコアコンポーネントを核に、必要に応じた業務コンポーネントを追加 / 拡張していけるERPシステムのこと。統合型よりも導入コスト / 運用負荷を抑えられるメリットがあり、モジュール型ERPとも呼ばれます。
既存の業務システムと連携して情報の一元管理を進めたい、コア業務からERP化を進め段階的に管理領域を拡大していきたい、などのニーズに適したソリューション。「統合型を導入しても使わない機能がある」中小企業にも導入しやすいERPシステムです。
業務システム型ERP
業務システム型ERPとは、ある特定業務の一元管理を目的としたERPシステムのこと。ERP本来の目的・考え方とはやや異なりますが、ハイブリッドERP / 2層ERPの浸透とともに定着した、新たなERPの考え方だといえるでしょう。
たとえば、統合型ERPを導入する大企業が、マーケティング / 営業部門の活動を統合管理するため「Salesforce」を導入してデータ連携するイメージ。ある部門・業務に特化しているため、コンポーネント型ERPシステムより、さらに導入しやすいメリットがあります。
ERP選定 / 導入のポイント
導入方法 / 形態はもちろん、さまざまな種類 / タイプの存在するERPシステムは、選定 / 導入が非常に難しいことは上述した通り。それを踏まえた上で、適切なERPシステムを導入するには、どのようなことに気を付けておけばいいのか?以下から、ヒントとなるポイントを紹介していきます。
自社課題の明確化
まずは、ERPシステムの導入が解決策として適しているのかを判断するため、自社課題を明確にしましょう。ERPは情報のサイロ化を解決し、よりよい判断を下すための経営状態可視化に役立つソリューションですが、ビジネスの成長を阻む課題は組織ごとに異なるからです。
ERPはあくまでも業務課題を解決するソリューションであり、導入自体が目的化してしまったのでは本末転倒です。自社課題を明確にし、解決するのに適したソリューションは何か?という視点を持つことが重要です。
ERPの導入目的・ゴールを設定
ERPシステムでどのような課題を解決するのか、どのような状態になればゴール達成といえるのか、導入目的・ゴールを設定しましょう。
目的・ゴールが明確になっていれば、ERPにどのような機能を求めるべきか、どのようなタイプのERPが適切なのかを把握できます。多種多様なERPシステム / パッケージから適切なプロダクトを選定するためにも目的・ゴールの設定は重要です。
業務フローの棚卸し / 業務設計
ERPシステムの導入をスムーズに進めるため、プロジェクトリーダーを中心に業務フローの棚卸し / 業務設計をしましょう。汎用的なソリューションであるERPシステムは、少なからず業務フローの変更を要求するからです。
現状を把握し、最終的な理想の姿を明確にできれば、ERPでどの業務をカバーすべきか、段階的に導入するならどの部門から導入すべきか、などが見えてきます。導入するERPの活用・定着を促す意味でも、業務設計は重要なポイントです。
【まとめ】ERP / ERPシステムの全体像を
解説しました
ERPシステムを導入する企業が増えていると聞くが、そもそもERPとは?どんな効果が期待できる?中小企業にも必要?そんな疑問を持つ企業担当者の方に向け、概念・種類・導入形態から効果・注意点まで、知っておきたいERP / ERPシステムの全体像を解説してきました。
市場の動向が急激に変化する現代では、状況に応じた素早い経営判断が生き残りのポイント。DX時代に対応するためにも、ERPシステム / パッケージは欠かせないソリューションとなりつつあります。
なお、ERPの導入サポート会社の探し方・選び方がわからない!という方はシステム幹事にお気軽にご相談ください。貴社の目的・予算にあった最適な会社を厳選してご紹介します。相談料・会社紹介料などは無料です。
この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
このライターの記事一覧