介護分野×AIの現状は?AI活用の現状や事例を紹介【2024年最新版】

介護分野×AIの現状は?AI活用の現状や事例を紹介

手不足が慢性化する介護業界において、介護スタッフの負担軽減や業務効率化の手段としてAIや介護ロボットの導入が期待されています。

  • AI、ICT、ロボットの違いは?
  • AI活用の現状の課題とは?
  • 介護の分野で導入されているAIの事例を知りたい

本記事では、介護業界におけるAIの現状や課題、実際に導入されているAI事例について紹介します。

※社内の負担軽減や業務効率化に悩みをお持ちの方はシステム幹事にご相談ください。専任のアドバイザーが最適な開発会社をご紹介します。相談料などは一切かかりませんので、お気軽にお問い合わせください。

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目次
  1. 1. 介護業界でのAIとは?
    1. 1-1. AIとICTの違い
    2. 1-2. AIと介護ロボットの違い
  2. 2. 介護業界でAIが注目される背景
    1. 2-1. 少子化による深刻な人手不足
    2. 2-2. 介護が必要な高齢者の増加
    3. 2-3. 国や自治体による導入の後押し
  3. 3. なぜ普及しない?AI活用の課題
    1. 3-1. 導入コストが高い
    2. 3-2. 導入後の運用に不安がある
    3. 3-3. 誤作動・事故の可能性がある
  4. 4. 介護業界で活用されているAIシステム
    1. 4-1. 見守りシステム
    2. 4-2. ケアプラン作成システム
    3. 4-3. 送迎業務の支援システム
    4. 4-4. 除菌清掃ロボット
    5. 4-5. コミュニケーション・ロボット
  5. 5. 介護業界のAI活用 まとめ

介護業界でのAIとは?

AI(Artificial Intelligence、人工知能)とは、人間の知能のように外部の情報を処理し、自ら判断・推測できる機能を持ったコンピュータシステムのことを指します。

一般的なシステムと違い、AIには機械学習という技術が備わっています。業務に関する膨大なデータをAIが自ら学習するため、人間の指示なしでも業務遂行が可能です。

介護業界では、入居者の動きを検知して異常の可否を判断したり、入力データをもとにケアプランを作成したりといったAIがすでに活用されています

なお、AIと並んでよく使用される用語に「ICT」と「介護ロボット」の2つがあります。

AI
(人工知能)

  • ・データをもとに学習できる
  • ・状況を判断・推測できる

ICT
(情報通信技術)

  • ・データ共有、管理、連携ができる
  • ・人による操作が必要

介護ロボット

  • ・プログラミングされた動作を行う
  • ・人による操作が必要
  • ・AI搭載型もある

AIとICT、介護ロボットの違いについて、より詳しく紹介します。

AIとICTの違い

ICTは「Information and Communication Technology」の頭文字を取った略称。日本語では「情報通信技術」と訳されます。

介護分野におけるICTとしては、たとえば記録作成ソフトや情報共有システム、スタッフ同士のコミュニケーションツールなどがあげられます。

ICTにはAIのような判断・推測する機能はないため、厳密にはAIとは呼べません。しかし、介護業務の効率化施策の一環として、AIと一緒に語られることが多いでしょう。

本記事でも、事例紹介でICTシステムを一部紹介します。

AIと介護ロボットの違い

介護ロボットは、介護作業を補助するロボットを指します。

厚生労働省のサイトでは、以下の3つの機能を有している機械システムのうち、介護スタッフの負担軽減や利用者の自立支援に役立つロボットを「介護ロボット」と定義しています。

  • 情報を感知(センサー系)
  • 判断し(知能・制御系)
  • 動作する(駆動系)

一般的なロボットは、あらかじめプログラムされた動作のみを行い、AIのように学習はしません。正常に稼働させるには、事前の環境設定や操作が必要です。

ただ、介護のようにルーティン化が難しい業界では、状況判断ができるAI搭載型ロボットの開発が進んでいます。

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介護業界でAIが注目される背景

介護業界でAIが注目される背景には、日本の抱える少子高齢化問題が密接に関わっています。

ここで、介護業界でAIが注目されている背景を整理しましょう。

少子化による深刻な人手不足

厚生省の試算によると、介護スタッフ数は2025年に約32万人、2040年には約69万人が不足するとされています。

介護職は低賃金・高負荷の仕事としてネガティブなイメージが強く、介護の担い手不足はすでに深刻な状況です。

スタッフ不足を補うとともに、仕事の負荷を軽減して担い手の裾野を広げるためにも、AIを含めたIT技術の導入が必要とされています。

介護が必要な高齢者の増加

内閣府の発表した「令和4年版高齢社会白書」によると、令和3年10月1日時点の日本の総人口は1億2,550万人でした。なかでも65歳以上人口は3,621万人であり、高齢化率は28.9%となっています。

試算によると、高齢者の人口がピークを迎えるのは2042年。20年先まで続くであろう介護ニーズの増大や社会保障費の負担増を支えるため、介護現場の効率化は喫緊の課題です。

マンパワーによる効率化では追いつかず、AIによる抜本的な業務改善が求められています

国や自治体による導入の後押し

介護の担い手不足を改善すべく、国や自治体も介護ロボットやICT導入を促進しています。

たとえば経済産業省と厚生労働省は「ロボット技術の介護利用における重点分野」を定め、介護ロボットを開発する側と、ロボット・ICT技術を導入する側の双方に対して補助金・助成金制度を設けています。

また、厚生労働省は2021年よりニーズ・シーズマッチング支援事業をスタート。介護現場の課題(ニーズ)と、開発企業が保有する製品や要素技術(シーズ)とのマッチングにも取り組んでいます。

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なぜ普及しない?AI活用の課題

深刻な人手不足に陥っている介護業界において、AIやロボット、ICTの導入は大きなメリットがあります。

しかし、令和3年に長崎県福祉保健部が行った調査によると、介護現場でロボットやICTを導入している事業所は41.3%。「導入を検討中」や「今後導入を検討」との回答は多いものの、未導入のところが半数以上といった結果でした。

導入に踏み切れない理由から、介護業界におけるAI活用の課題を見てみましょう。

導入コストが高い

長崎県の調査結果では、ロボットやICT技術を導入しない理由について7割の事業所が「導入コストが高い」と回答。導入コストについては令和2年度介護労働実態調査においても同様の声があがっています。

とくに量産化が難しい介護ロボットは、導入に数十万から200万円前後のコストがかかるものもあります。

導入後の運用に不安がある

AIに限らず、新しいシステムを導入する際には使用するスタッフへの教育が必要になります。そのため、教育コストに加え、システム変更にともなう作業効率の一時的な低下は避けられません。

さらに、介護現場では高齢のスタッフも多く、新しい技術に抵抗があるとの意見も見受けられます。

とはいえ、介護現場ではAIやロボットが代替できない作業も多くあります。清掃ロボットや見守りシステムのように、人の手で行う必要性や教育負担が小さいものから検討するのがよいでしょう。

誤作動・事故の可能性がある

介護現場では、利用者の安全と健康が最優先です。誤作動や故障で事故が起こらないかという不安も、AI活用が進まない理由の1つと見られます。また、介護は人の手で行うものだという価値観も根強く残っています。

しかし、ヒューマンエラーが大きな事故につながるケースもあるため、一概に人の手で行うのが安全とも言い切れません。

もしAIやロボットの安全性に不安がある場合は、除菌清掃ロボットやコミュニケーションロボットのように、誤作動があっても利用者の安全に影響しないものから導入するのがおすすめです。

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介護業界で活用されているAIシステム

実際に介護現場で活用が進んでいるAIシステムを、次の5種類にわけて紹介します。

  • 見守りシステム
  • ケアプラン作成システム
  • 送迎業務の支援システム
  • 除菌清掃ロボット
  • コミュニケーション・ロボット

見守りシステム

見守りシステムとは、利用者の状況をセンサーで監視し、異常を検知するシステムです。スタッフの見回り業務の負担軽減と、利用者のプライバシー保護の両方を実現できます。

居室人感センサー「LASHIC-room」

LASHIC-room

  • 24時間危険や異変を見守る機能
  • 簡易センサーを設置するだけで導入可能
  • 使いやすく安く使用できる

LASHIC-roomはインフィック株式会社が提供する居室センサーサービスです。

部屋にセンサーを設置することで24時間危険や異変を察知。何かあれば、自分のスマートフォンにいれたアプリに通知がきます。温度や湿度、明るさ動きから検知し、現在の様子やこれまでの動きを確認することも。また、他社製品と比べて安い点も特徴の1つです。

実家にインターネット環境がなくても機械に挿すだけで使える通信端末もレンタルしています。

AI搭載介護支援ロボット「アイオロス・ロボット」

AI搭載介護支援ロボット「アイオロス・ロボット」

  • 服装やマスクの影響を受けずに人物特定ができる
  • 自立走行タイプでドアやエレベーターの開閉が可能
  • 人の姿勢から「座っている」「倒れている」などの状態を認知できる

Aeolus Robot(アイオロス・ロボット)は、丸文株式会社が代理店を務めるAI搭載型の自立走行ロボットです。

AIにより施設利用者の顔や姿勢を検知。「倒れている」などの異常状態を認知できるため、施設内の巡回業務に活用できます。

また2本のアームでドアの開閉やエレベーターの利用もできるため、グリッパーの装着で施設内の除菌作業も任せられます。

ケアプラン作成システム

ヒアリングした利用者情報をもとに、ケアプランの作成をAIが支援するシステムです。人の手で全て作成するよりも、作成業務を効率化できます。

ケアマネジメント支援サービス「SOIN」

ケアマネジメント支援サービス「SOIN」

  • データにもとづいた客観的な提案で業務効率化を支援
  • プランは「改善志向」と「状態の最も近い方」の2パターンを提案
  • プラン利用による状態予測が可能

SOIN(ソワン)は株式会社シーディーアイが提供するケアプラン作成支援システムです。

利用者の情報を入力すると、AIが過去のデータをもとに「改善志向プラン」と「状態が最も近い方のプラン」の2つを提案。ケアマネジャーはSOINの提案内容を参考に、利用者にあったケアプランを作成できます。

また、プラン利用による利用者の今後の状態予測も見れるため、利用者にとっても納得感のあるプラン作成が叶います。

ケアプラン作成支援AI「ミルモぷらん」

ケアプラン作成支援AI「ミルモぷらん」

  • 利用者に関連のある疾患情報を提示できる
  • 地域ケア情報データベース「ミルモネット」と連携可能

ミルモぷらんは株式会社welmoが提供するケアプラン作成サービスです。

利用者情報を入力すると、ケアプランが文言付きで提案されます。文章を考える負担が軽減でき、短時間で質の高いプランを作成できます。

また、入力した情報から関連する疾患情報を検索し画面に提示するため、ケアマネジャーの学習の効率化にも活用できるでしょう。

さらに、welmoの地域ケア情報データベース「ミルモネット」との連携で、利用者にあった事業所探しも可能です。

送迎業務の支援システム

介護施設利用者の送迎業務を支援するAIシステムも開発されています。

各利用者の制約条件から効率的な送迎ルートが提案されるため、日々の送迎計画に割いていた時間を短縮できます。

送迎表作成システム「DRIVEBOSS」

送迎表作成システム「DRIVEBOSS」

  • 各利用者の制約条件に対応した送迎計画と送迎ルートを自動作成
  • スマホに送迎計画を転送してルート案内ができる
  • ドライバー毎の運転状況や様子の記録と評価が可能

DRIVEBOSS(ドライブボス)はPanasonicが提供する送迎支援サービスです。

利用者ごとの制約条件を入力すると、ボタン1つで送迎計画が自動作成されます。制約条件は「直前連絡の要否」や「同乗不可の利用者」など細かい部分まで入力可能です。

さらに、道に不慣れなドライバーでも安全に送迎できるよう、スマホでのルート案内にも対応しています。

こちらのサービスでは、送迎計画の作成機能のみのプランと、スマホ連携機能付きのプランのいずれか選択できます。

除菌清掃ロボット

除菌清掃ロボットとは、すでに家庭で活躍しているAIロボット掃除機の業務版です。介護施設内を自動走行し、スタッフの代わりに清掃や除菌作業を行います

除菌清掃ロボット「Whiz」

除菌清掃ロボット「Whiz」

  • 簡単な操作で遠隔管理できる
  • あらかじめ指定したエリアを自動で除菌・清掃
  • AIが障害物を検知し、回避や一時停止などの対応が可能

Whiz(ウィズ)はソフトバンクが提供する、業務用の屋内除菌掃除ロボットです。世界出荷台数は20,000台(2022年4月時点)を突破し、介護施設への導入実績もあります。

清掃エリアを指定すると、自動で清掃ルートが生成されます。AIがリアルタイムで障害物を検知するため、施設内の環境が変化しても対応できます。

また、人が掃除機を使って清掃したときよりもダストの舞い上がりを軽減できるとのことです。

除菌清掃ロボット「CL02」

除菌清掃ロボット「CL02」

  • 清掃ルートの指定が可能
  • 作業エリアのゴミ分布マップを生成できる
  • フロアをまたいだ作業も可能

CL02はサイバーダイン株式会社の開発した除菌清掃ロボットです。あらかじめルートを設定するモードと、ロボットが自動でルート生成するモードの2つが選べます。

搭載された3DカメラでAIが障害物を自動検知します。オプションでエレベーターの自動昇降機能が付けられるため、フロアをまたいでの清掃作業も可能です。

コミュニケーション・ロボット

利用者とコミュニケーションができるAIロボットです。介護スタッフに代わって利用者に楽しみや安らぎを提供し、心のケアを行います。

人型の会話ロボット「Pepper」

人型の会話ロボット「Pepper」

  • 受付や見守りサポートなどで活用できる
  • 豊富なレクリエーションは可能
  • 利用者ごとのレク効果や活動状況も可視化できる

Pepper(ペッパー)はソフトバンク株式会社の人型コミュニケーションロボットです。人間の子どもくらいのサイズで、飲食店や病院などでも受付に導入されています。

介護施設向けのレクリエーションアプリや顔認証アプリが用意されており、大勢向けのレクリエーションから個人レクリエーションまで任せられます。

また各利用者のデータを自動蓄積するため、レクの効果や活動状況をスタッフがチェックすることも可能です。

セラピーロボット「PARO」

セラピーロボット「PARO」

  • 本物の動物のような反応をする
  • アニマル・セラピー効果が確認されている
  • 国内外の様々な施設で導入実績あり

PARO(パロ)は株式会社知能システムが販売しているセラピーロボットです。アザラシの赤ちゃんを模したぬいぐるみ形状のAI搭載ロボットで、本物の動物のように動き、接し方で反応が変化します。

PAROはアニマル・セラピーと同じ効果を得られると確認されており、2002年には“最もセラピー効果があるロボット”として世界ギネス記録にも認定されました。

本物の動物と触れ合うのが難しい介護施設においても、利用者のメンタルケアやコミュニケーション促進を目的に導入されています。

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介護業界のAI活用 まとめ

介護業界でのAI活用について紹介しました。

少子高齢化が深刻化するなかで、介護スタッフの負担軽減や業務効率化を目的にAIの活躍が期待されています。

費用面や安全面で本格的な普及にはまだ課題が残るものの、すでに介護施設で導入実績のあるAI搭載ロボットやシステムも増えつつあります。

とはいえ、いきなりAIシステムを導入するとなると、ハードルが高く感じる方も多いでしょう。「システム導入はなにから始めればいいの?」「システム開発の費用はどれくらいかかるの?」とお悩みの方は、ぜひシステム幹事にご相談ください。

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Q. 介護業界でAIが普及しない理由は?

介護業界でAIが普及しない理由として「導入コストが高い」「導入後の運用に不安がある」「誤作動・事故の可能性がある」等が挙げられます。詳しい内容は記事内で紹介していますので、ぜひご覧ください。